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かなり巨大なちゃぶ台の周りに十七人が座っている。一対十六であるが……。(正確にはナオトの周囲に十五人いる)
ブラストはその中の十人がモンスターチルドレンであることを、まだ知らない。
「それで? お前の用件は何なんだ?」
ナオトがそう言うと、ブラストは。
「お前が誕生石使いであるのなら、その力を取り出して破棄する方法を俺は知りたい」
「そっか。お前はそれが知りたいのか。けど、残念ながら、俺も取り出し方は知らないんだよ」
「何? お前から、かなり強い波動を感じるのに取り出し方を知らないのか?」
「ああ、そうだ。というか、簡単に取り出せるものじゃないだろ?」
「まあ、そうだな。しかし、困ったな」
「話は変わるが、お前の力は、この斧《おの》で間違いないよな?」
ナオトは彼から没収した巨大な斧《おの》の持ち手を鎖で縛った状態でグルグルと自分の頭上で数回、回した。(ミノリの血液製の日本刀はミノリの体の中に戻っている)
「あ、ああ、そうだが。それがどうかしたのか?」
「いや、誕生石一つ一つに、こういう武器があるのか気になってな」
「……俺が知っている限りでは、一月と二月の誕生石にしかないはずだ……って、お、お前のその力はまさか!」
「ん? ああ、この鎖は『|力の中心《センター》』……いや、二月の誕生石である『アメシスト・ドレッドノート』の力だ。まあ、俺が今、こんな姿になっているのは、その力の一つである『第二形態』になったせいなんだけどな」
「バ、バカな! 先代の誕生石使いでさえ、二月の誕生石は使わなかったのだぞ! なぜお前に使える!」
「そんなの俺だって知りたいさ。まあ、相性が良かったってことかな」
「そ、そんな。お前はいったい何者なんだ?」
「ん? あー、そういえば、まだ自己紹介してなかったな。コホン、俺はモンスターチルドレンになったやつらを人間に戻すための薬の材料を探すために旅をしている『本田《ほんだ》 直人《なおと》』だ。ちなみに異世界人だ。んじゃ、次はそっちの番な」
「あ、ああ、分かった……。俺は『ブラスト・アークランド』。自分の体の中にある誕生石をどうにかして取り除きたいがために旅をしている者だ」
「そうか……。けど、どうして取り出そうとするんだ?」
「え、いや、誰だって体の中に得体の知れないものが入っていたら不安になるだろう?」
「そうか? 俺はそうは思わないけど」
「なぜだ? お前の中にあるそれは誕生石の中で一番厄介なものなんだぞ?」
「らしいな……。でも、この鎖の力のおかげで、俺は今まで旅を続けてこられた。だから、俺にとっては相棒みたいなものなんだよ」
「……なるほど。では、こうしよう」
「ん? どうするんだ?」
「俺と戦って俺が勝ったら俺の旅に同行してもらう」
「ほう。それで? 俺が勝った場合は、どうするんだ?」
「無論、俺がお前の旅に同行する」
「うーん、それはちょっと無理だなー」
「なぜだ?」
「ん? いや、だって……俺の背後から、お前に対して向けられている殺意を十五人分感じるからだよ」
「…………分かった。今のは、なしだ。今、別の方法を考え……」
「いいかげんにしなさいよ!」
ブラストが何かを言いかけた時、ミノリ(吸血鬼)が話に割り込んできた。
ミノリは、さっと立ち上がるとスタスタと歩いて、俺の目の前に来ると、あぐらをかいて座るとできる逆三角形の空間にチョコンと座った。(どうして俺のところに来たのかは不明)
「さっきから聞いてたけど、あんたは自分の立場を理解していないようね!」
ブラストを指差しながら怒鳴るミノリ(吸血鬼)は本気で怒っていた。
「な、何を言っているんだ? 俺はただ……」
「言い訳しないで! 今から、あんたの立場を教えてあげるから、そこに直りなさい!」
「ま、待て。い、いったい、何をするつもりなんだ?」
少し怯《おび》え気味のブラストがそう言うと、ミノリは。
「総員! 戦闘準備!!」
十四人に対して、そう言った。
『ラジャー!』
十四人はそう言いながら、すっと立ち上がると、それぞれがブラスト目掛けて、一斉に殺意を向けた。すると、ブラストは。
「ひ、ひぃー! 助けてくれー! まだ死にたくなーい!」
体格に似合わない声を出しながら、蜘蛛《くも》歩きで数歩、後ろに下がった。
俺は、すっと立ち上がると全員の頭をチョップしていった。(自分より背の高い子にはジャンピングチョップをした)
「おい、お前ら、客人に対して殺意を向けるなよ」
するとミノリ(吸血鬼)が代表して、なぜそんなことをしたのかを説明した。
「だ、だって、こいつはさっき、いきなり、あたしに襲いかかってきたのよ! 信用できるわけないじゃない!」
その言葉を聞いて、俺はこう言った。
「そうか。なら、俺がお前らを信用できないという理由で今すぐ、ここから追い出してもいいってことだな?」
「……え……いや、別にそういうつもりじゃ……」
「お前が今、言ったことはそういうことだ。お前の発言は、みんなの発言。だから全員、罰《ばつ》として俺に頭をもふもふされる刑を受けてもらう」
「え? それだけでいいの? 叩いたりしないの?」
「それが嫌《いや》なら、今すぐここから全員追い出す」
「わ、分かったわよ! だから、見捨てないでー!」
ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、十五人が一斉にナオトの元へ行き、頭をもふもふしてもらっていた。
その光景を目《ま》の当たりにしたブラストは、ここにいる誰か一人でも敵に回せば、命はないと思った。
しばらくして、全員の頭をもふもふし終えたナオトは話を再開した。
「見苦しいところを見せてしまって、すまなかったな。えーっと、要するに俺とあんたが……」
「ブラストでいい」
「え? 呼び捨てでいいのか? ……それじゃあ、遠慮なく……コホン。つまり、俺とブラストが戦わずに協力し合えたらいいってことだな?」
「あ、ああ、その通りだ」
「……そういうことか。うーん……なら、こうしよう」
「ん? 何か思いついたのか?」
「まあな。えーっと、とりあえず、この斧《おの》は返しておくよ……ほら、受け取れ」
ナオトはブラストの目の前まで巨大な斧《おの》を鎖で器用に運んだ。
「あ、ああ、そういえば、そうだったな。感謝する」
ブラストがそれを受け取ると、ナオトは鎖を体の中に戻した。
「別に感謝されるようなことは何もやってないよ。それじゃあ、とりあえず外に行くぞ」
「なに? 外に行くのか? というか、そんな体で大丈夫なのか?」
「体が小さくなっても、俺は俺だ。それに俺の鎖は十本出さないと変身できないから九本までなら、この体でも戦えるんだぞ?」
「そ、そうか。それなら、よかった」
あの鎖……あと九本もあるのか……というか、変身できるのか。
ブラストは『変身』に興味を持ったが、いずれ知ることになる気がしたため、それ以上は何も言わなかった。