テラーノベル
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柔らかな目覚めを告げる、今はほんのちょっと厄介な光が水平線から顔を覗かせる
暗がりにいたもの達は輝きを取り戻して自分たちがまた今日も生きていることを感じられる
まだ少し眠気でぼやけた視界がそれによって輪郭を取り戻していく
ちらりと隣を見た視線に気づいたわちが数秒こちらを見つめて軽く笑った
「海の日」
一般人にとっては祝日であり、猛暑である日
『折角だし海に行こう』と家族に声を掛けたか、それとも友人を誘ったかは僕らには不明だが昨日まで静かだった景色は喜びと楽しみで満ちた空間へと早変わりしていた
汗の滲む体でその景色を見ながら手元のプラスチック容器を感覚で回していく
今ではもう手慣れた形成を終わらせ、白に要望の色をのせていく
染められるくらいをのせて待ってくれていた最後の一人に手渡す
ふぅとため息を1つついたところで頬にひんやりとした感覚がした
「お疲れ、松丸」
「お疲れ様〜!はい、水分取って」
声のする方に目線を向けるとニコニコで飲み物を手渡すうみすけとその隣で青とオレンジのエコバッグを下げたわちがいた
「そっちこそお疲れ〜!ちょうど水分無くなってたとこだから助かったw」
「だと思ったwほら、ちゃんと取ったら休んできな。交代だし」
そう言われて木製の壁には不釣り合いなくらいな形の時計を見やる
16:30という表示が見えて、自分自身の集中力に少し驚いた
「あ、ほんとだ。じゃあちょっと休ませて貰おうかな」
「うん、いってらっしゃい」
うみちゃんに軽く手を振りかえしつつ「少し遊ぼう」と思って専用出入口に向かった
日差しを浴びて伸びをする
この仕事は楽しいが、外の空気が吸えないのが少し勿体なく感じる
来てくれた方の憩いの場になるということは理解しているが、もう少し工夫できたらもっと来てくれるかなと思ってその思考が汗と共に砂に溶けて飲み込まれた
少しだけ空虚になった思考に聞き馴染んだ声がすんなりと入り込んでジャックしてくる
視線を向ければいつもの場所にわちの顔があった
「休憩だろ?ちょっと遊ぼ」
「、!、、、うん!行こ!ついでにいすみたちも見に行こw」
「、、、そうだな、行くか」
7月なのに熱を帯びすぎた世界
暑いなんてのはとっくにわかっててそれでも差し出された手を優しく握り返す
帯びた熱とはまた違う柔らかい温もりが僕らの隙間を綺麗に埋めてくれた
賑わった浜辺の少し外側をゆっくり歩いていく
波打ち際で遊ぶ大人
浮き輪に入って海の上にふわふわと浮かぶ小さな子達
砂浜の上でシートを広げて話をしたり荷物を見守る人たち
景色に「久しぶり」と目線を向けて返ってくるはずのない返答に期待しつつ目的の場所へ足を進める
5分ほど歩けば遠くからでもわかる蛍光色の黄緑と黄色、ピンクのバンダナを付けたライフセーバーが仕事をしていた
彼らに向かって腕を振れば、いの一番に気づいたピンクのバンダナが風に逆らって揺れる
それに続いて気づいた黄緑と黄色のバンダナも柔らかく揺れ動く
「お疲れ様〜!!そっちはどう?今日、天気良いから暑いよね」
「マジで暑いwまぁでもこれが俺らの仕事だからね、水分とって頑張ってるよ」
「嘘つけさっきまで飲むの忘れてたくせに」
「やめて〜w」
「そう言えば、松丸さんはどうしてここに?」
「ん?休憩!わちと一緒にね」
「相変わらず甘々だねぇw」
にやにやとこちらに笑いかける視線が揶揄ってるわけじゃないことを知ってるので海風と共に会話を流した
「ごめんね仕事中に」
「いいよ、今日はそんなに荒れてないから暇だったし」
「ほら、遊んできな!」
「うん!ほら行こわち!!」
「うぉっ、急に引っ張んなってw」
熱い砂浜を蹴って冷たさを求めに行く
脱ぐのがめんどくさくて服のまま飛び込んだ
ひんやりとした海水が体の熱を取り除いてくれる
僕とは対照的に膝下まで浸かって僕のことを見守ってくれているわちにばしゃっと水をかける
「おまっ、濡れるだろ!」
「いいじゃんw戻る頃には乾くってww」
呆れたような表情をされて気を緩めた
その顔面に海水がいきなりかかる
反撃された、と思ってわちの顔を見ればさっきとは打って変わって悪戯心に溢れた表情をしていた
跳ねた水がキラキラと日光に反射する
その一粒一粒が思い出のカケラになって褪せることなく世界に馴染んでいった
昨日海の日だったので
このリドラは海の家経営してるよ〜
コメント
1件
ああ、夏の匂いがするエピソードでしたね。海の家の仕事、休憩時間のちょっとした水かけ合い——わちと松丸の距離感がすごく自然で、でも確かに「甘々」だなって思わされました(笑)。特に最後の「跳ねた水がキラキラと日光に反射する」ところ、一瞬の夏の思い出が切り取られたみたいで胸がじんわりしました。海の日設定、リアルタイム感があって良いですね。次も楽しみにしてます!