まえがき
みなさんこんにちは。むぎ改め、ボニーです。ときどき名前変えます。今回は、ポーランドに着き、想いを乗せて吠えた。そこで物語は終盤を迎え、終わりました。しかしですね、りりのその後を知りたい人も中にはいるんじゃないかと公開直後に思い、あとがきと共にアンケートを取りました。結果、一人の方が答えてくださり、こうしてりりのその後を番外編で書くことになりました!自分自身正直暇だったし、見てくれて、しかも楽しみにしてくれているっていうのがとても嬉しくて喜んで張り切って書いています。 さあ、ポーランドへ着いたりりの話へどうぞ!
プロローグ
わたしの目には青い晴れ渡る空が映っていた。耳にはかすかに聞こえる戦争の音があった。わたしはりり。日本からやってきたアメリカン・コッカー・スパニエルのメスで元の名はクラウン。日本人とウクライナ人のハーフ、里緒奈が飼い主だよ。そして近くにいる黒い犬はクラウディア。胸元だけ白い毛が生えてるんだ。まだ生後2〜3ヶ月の幼い元野良犬なんだ。戦争が始まり、ミサイルが落ちてきた。わたしたちが住んでいるのはウクライナの首都、キーウだからだ。そのため、ママと里緒奈とわたしで隣国、ポーランドを目指した。が、途中で離れ離れになり、元野良犬のクラウディアと共にシェルターに保護されたが武装したロシア兵が出入口付近を塞いでいたから職員たちは来なくてそのせいで友達のウィーナが亡くなった。でもすぐに駆けつけてくれてなんとか生きた。そして必要な手続きを済ませ、動物パスポートを発行し、里緒奈たちがいるかもしれないポーランドへ行ったのだ。
🐾あらたなシェルター
「さ、ここが君たちが新しく住むところになったシェルターだよ。」カルルが少し寂しそうに言う。「元気でな」わたしたちはゆったりと尻尾を振った。「じゃあな」そう言ってカルルは車に乗って戻っていってしまった。不安そうなわたしたちを励ますようにシェルターの人が言った「みんな!はじめまして!シェルターの管理人のカルチャーだ。よろしくな!」若い男の人が言った。不思議なことに匂いと見た目、雰囲気がとてもカルルによく似ていた。「僕はカルルの二卵性の双子の弟なんだ」にっこりとカルチャーが笑った。とても優しくカルルに似た笑顔だった。「よかったね、クラウディア。この人もいい人だよ、きっと」「うん。カルルはいい人だったからきっとカルチャーはいい人何だと思う。」クラウディアは珍しく素直にうなずいた。
🐾助言
新しく保護シェルターの暮らしは良くはあった。。でも物足りなかった。里緒奈がいないのだ。里緒奈がいないからストレスが溜まった。クラウディアはなにもしてないのに八つ当たりしてしまうことも出てきた。ただクラウディアは反発しない。いつもは活発なのだか、わたしの心情を察したのかなにもしなかった。それを知るとなんだかクラウディアに申し訳なかった。自分が悪いって分かってる。そんなの百も承知だ。でもなんか変なふうになってわけがわかんなくなっちゃう時がある。まだほんの幼子に、悪くないのに八つ当たりして、機嫌が悪いような姿を見せたらクラウディアは傷つくだろう。でも直そうと思うほどなんだか泣きそうになってくる。
ある時、わたしはシェルターの部屋が少し開いていたのに気づいた。「よし…」わたしは決心してクラウディアに気づかれぬように部屋を抜け出した。そして足音がしないように一目散に一回へ降りた。そして職員の人がドアを開けた瞬間を狙って外へ飛び出した。「うわあ!みんな!大変だ!犬が一匹脱走したよ!」中年の男の声だった。やばい。逃げなきゃ。そう思うのに必死でとにかく逃げた。
「ふう、ふう…あれ?ここどこ?」どうやらここは土手のようだ。たんぽぽが沈みかける日に当たり赤く染まっていた。「ねえねえ、ちょっと君」誰かに話しかけられ、はっとした。後ろを向くとそこには左耳の上側だけ折れた耳、ちゃめっ気たっぷりのくりくりの目、黒多めの黒茶の毛(ブラックタン)をしたわたしより大きい犬がいた。「だあれ?」わたしは聞いた。「僕はトルティー。君は?」「わたしはりり。アメリカン・コッカー・スパニエルだよ」「へえ。僕は雑種なんだ。ところでさ、りり。君、人に飼われてるでしょ。首輪があるもん」「うん。そうだよ。ウクライナの首都、キーウで暮らしてたんだ。」「僕は元野良犬で今は地域犬なんだ。飼い主のおじいちゃんが死んじゃって。息子夫婦に預けられたんだけど居心地が悪くて抜け出したんだ。そして今は地域犬として可愛がられてるんだ。」少し誇らしげに言った後、トルティーはあたりを見回した。「ところで君の飼い主は?どこ?」「…わかんない」聞かれてそう答えた後、心が泣いた。わたしたち犬は涙をこぼすほどの涙の分泌はできない。でも、すごく悲しい。「ウクライナで爆撃にあって、飼い主と別れた。それから友達も亡くなっていろいろあって今はここのシェルターにいるの。」「そっか。ごめん。思い出させちゃったよ。」「ううん。大丈夫。あのさ、実はさ、ここにいる理由はね…」わたしはさっきのことを話した。
話を聞き終わるとトルティーはわたしに向き直っていった。「僕が思うのはね、りりは怒っているわけではないし、悲しんでいるっていうわけではないと思うんだ。確かに悲しんではいると思うけど。僕にはね、なんだか怯えているように見えるんだ。何をそんな怯えてるの?何をそんな心配してるの?」「うっ…」心で薄々思っていたことを鷲掴みにされ、ついに話した。「…わたしと里緒奈はいつも一緒だった。寝るときも、出かけるときも。でも、ロシアがミサイルを落としてきて離れ離れになった。離れ離れになってもう1ヶ月半。もうすぐで2ヶ月になる。そ、その間、わたしがいないあ、間で、里緒奈が、こ、こ、心変わりしちゃったら…わたしのこと、嫌いに、な、なっちゃったらって思うことが増えてきたんだ。」わたしの話を聞いたトルティーは言った。「話を聞く限りね、りりと里緒奈がそんなすぐに仲が悪くなるわけはないと思うんだ。だってお互い好きなんだろう?だったら絆ってもんはそう簡単に壊れはしない。大丈夫さ。きっと里緒奈はりりを嫌いにはなんないと思う。会ったことすらない僕が言うんだから絶対そうだよ。ね、だから元気だして。」「ありがとう、トルティー。おかげで結構すっきりした。クラウディアにはきちんと理由を説明して謝ればいいわよね。じゃあ、そろそろ帰るね。もしかしたらまた遊びに来るかも。じゃあね!」行きとは打って変わった晴れやかな気持ちだった。「…っていうわけなんだ。ごめんね、クラウディア。わけもないのに八つ当たりしちゃって。言い訳じゃないけどほんとうに悪気はないし、自分でもよくわかんなかったの。でも、ほんとうにごめんなさい。クラウディア」わたしは謝った。と、クラウディアはふふふっと笑い出した。「なんだ。りり、そんな理由が落ち込みの一つだったの?そんな。気にしなくていいから。野生のころのほうがずっと厳しかったし。りりはなんも悪くないよ。大丈夫。」そう言って優しく笑うクラウディアの顔とトルティーの顔が重なった。「あ、り、がとう。ありがとう。」 またトルティーにも会えるといいな。わたしはそう思った。
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