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「次はいつ会えるの?」
「いつ? そうですね……」
「やっぱいいよ、聞き飽きたから」
台湾は目を逸らすように夕焼けを眺めながら問い、そこから視線を動かさずに言葉を取り消した。
数年前から明日があるかさえわからないままで、最後に次を約束できたのはいつだったか、もう忘れてしまった。
「……申し訳ない、です」
「別にいいよ、わざわざ聞くのもイジワルだった。それに……君がどうこうできる話じゃないのは、分かってるつもりだから」
沈黙のまま居られるのは信頼があるからで、理想的な関係性だと言う人を知っているが、気まずい空気が流れるようではプラマイゼロだろうとつくづく思う。
「またね、日本」
「はい。また」
どんな話をした日でも、最後はいっつも大きく手を振ってくれる。そんな一種のポジティブさが好きだ。本当に、少しの間でも隣に居られるだけで十分過ぎるほど幸せだった。
けれども、今の私は理想の彼氏とは程遠いだろう。逢引きの際も砂や泥にまみれた服装で、悪い時は赤黒いシミまで付けてきて。
生傷もアザも絶えない荒れた肌に、男らしさの欠けらも無い貧相な体で抱き締められた所で……。
「全員伏せろ!」
考えられているだけ幸せな思考を巡らせているうちに、戦車が砲撃され、かなりの規模の爆発が起こった。
それは今日だけじゃなくて、もう既に何十、何百の命が何も残さない火花のように散っていった。
「あなたは私の生きる意味だけど、私は……あなたに贈れるものが何も無いな」
我ながら情けない自問自答は、戦場の土埃と混ざって消えた。