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今日だっていい成果はほぼ無い。前線も押され気味だし、踏んだり蹴ったりだ。大声では言えないが、上司の命令は前線を知らないからか、あまり適切とは感じがたい。
「今日も、疲れてそうだね。もう少しこっちに寄って?」
台湾は私を優しく抱き込んで、空いた右手で頭を撫でてくれた。冷たい鉄とも、生ぬるい体液とも違う。柔らかくて、いい匂いがして、あたたかかった。
「日本は本当に甘えるのが下手だよね。こんな時ぐらい、頼ってくれてもいいんだよ」
「でも、流石に迷惑では」
背中に回された台湾の力はより一層強くなり、頭の近くで聞こえる心音がだんだん早くなっていった。
「迷惑な訳無いでしょ、むしろ嬉しいよ」
双方の熱がすべて移り変わるほど、時間を忘れて抱き着いていた。きっとこのまま眠れば、とても気持ちいい目覚めが待っているだろう。
ずっとこうして居られないと知っている、それでも何もかも上手く行ってると思えるような一時が、私を生かす全てだった。
「台湾……」
「うん? なあに」
体制を立て直し、台湾に口付けをした。最後にしたのはずっと前だった。抱擁によってまるで溶されるような気分で、ようやく愛し方を思い出せた。
「日本のせいでびっくりして腰抜けちゃった。治るまで支えててよ」
「台湾は甘えるのが得意ですね」
「そうかな、日本が下手くそ過ぎるだけじゃない?」
その日は夕焼けを見届けるまで二人で居られた。ベッドに入った私は、こんな毎日がいつまでも続く夢を見た。