女子会以降、私とエミリさん、春日さんで三人のトークルームを作り、たわいのない事をポンポコ投稿して共有していった。
会社の昼休みにスマホを見ていると、恵に言われた。
「楽しそうだね。例の人?」
職場では尊さんと付き合っている事は秘密にしているので、彼女はそう表現する。
「あ、ううん」
声を掛けられて、私はハッとする。
恵は私の事をずっと見ていたから、スマホを見る表情一つでも変化を感じたんだろう。
「そういえば、こないだ女子会するって言ってたっけ。その人たち?」
「……うん」
私は若干の申し訳なさを覚えつつ、控えめに頷く。
「なんも気にしなくていいよ。私だって他に友達いるし、色んな人とメッセージしてる。悪いけど朱里は友達少ないし、いい友達ができたなら何よりだよ」
「……ありがとう」
私は恵にそう言ってもらえて安堵し、微笑む。
「でも、本音を言えばちょっと寂しいな。朱里が頼る女友達は、私だけっていう自負があったから」
素直に言われ、私は曖昧に笑う。
「恵は今までもこれからも、一番の親友だよ」
「分かってるよ。……でも私も、張り合う訳じゃないけど、朱里とちょっと豪華な泊まりをしたいな」
「私もしたい! どこがいいかな……。あっ」
そこで私はある人を、ピコーンと思い浮かべた。
「……なに、その顔」
恵は私の顔を見て、不審げな表情になる。
「……四人でランド行けたらいいね……」
ネチャア……と笑うと、恵はすべてを察してうんざりした顔になる。
「またそれ? 大体、朱里だってその人に会ってないんでしょ?」
「会ってないけど~……、いずれくる未来の話」
「ラノベのタイトルみたいに言うな」
「てへっ」
「可愛く笑っても駄目」
「も~……」
下唇を突き出してむくれると、恵は手を伸ばして私の腕をトントンと叩いてくる。
「デートを前提で言われたら、抵抗しちゃうのは理解して。どんな人か分からないのに〝相手〟って言われるの、複雑だから」
「……うん、ごめん。半分は冗談だったんだけど」
「分かってる。朱里はそういう事を言わない」
その言葉の中に色んな感情、意味が含められていて、私は頷きながら微笑む。
「まー、普通に友達候補として紹介するならいいよ? そのあと友達になるかどうかは、私が決める。例の人の親友だからといって、私にとっていい人とは限らない。もしかしたら、一緒にいるだけでイライラする人かもしれない。でも、もしかしたら気が合うかもしれない」
「うん」
恵の、こうやって公平に考えてくれるところが好きだ。
「ま、全部向こうの奢りで、朱里と一緒に泊まりでランド楽しめるのはありがたいけどね」
恵らしい言い方を聞き、私はクシャッと笑った。
**
その週は平日が四日だけで、木曜日まで働いたあと金曜日に手土産などの用意をし、土曜日の午後に松濤にある篠宮家へ向かう事となった。
私はベージュのワンピースを着て、控えめなパールアクセサリーをつけ、まとめ髪にした上でコートを羽織った。
尊さんは「外れないから」と、ネイビーのスーツを身に纏っている。
松濤の一丁目、二丁目、神山町は、特に豪邸が建っている場所らしく、付近を通ってもあまり地元の人が歩いている気配はなく、シンとしている。
一軒あたりの面積も信じられないぐらい広く、塀がどこまでも続いている。
尊さんは車を篠宮邸の前に停め、スマホのメッセージでお祖父さんに到着した事を知らせた。
すると通りに面したガレージが開き、彼はその中に車を停めた。
「こっち」
尊さんはガレージの横手にあるドアから外に出て、塀の内側に出る。
「わぁ……」
塀の中に隠れていたのは和風の豪邸で、石灯籠などがある日本庭園が広がっていた。
庭には椿の花が咲いていて、小さな太鼓橋が架かった池まである。
コメント
1件
篠宮家の豪邸、きっと素敵なんだろうなぁ....😍 見てみたい💕💕