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「フィンランド、そろそろやめよう。」


 僕は首を横に振る。本音を言うなら今すぐに白旗あげてでも休みたい。今まで戦いとは縁遠い生活をしてきて、体力があったわけでもない。ここまでソビエトとやり会えたのは完全に銃との相性が圧倒的に良かったから。

 身体はとっくに限界を迎えている。立ってることすら危うい。そんな僕を見かねてか、スウェーデンはいつにも増して、気味が悪いほど優しい声で語りかけてくる。


「…もう充分じゃないのか?」


 充分じゃない。もう後には引けない。休んでなどいられない。自身の私情で国民を巻き込み、それで尚自害せずに沢山の犠牲を払ってまでここまで来た。今更引けるわけなかった。

 …なんて自分は外道なのだろう。長々と言い訳を垂れたが、全て自分の自己満だ。勝手に作った言い訳に縋って、ソビエトとずっと争っている。

それでもいいんだ。もう後には引けない、引きたくない。どうせ、この戦争の有無に口を出せる者は居ないのだから。


「俺、フィンが苦しんでる姿は見たくない。だから、もうやめよう。」


 スウェーデンは優しくこちらへ手を差し伸べてきた。彼がどれだけ言っても僕の意思は揺るがない。彼の差し伸べてきた手を弾き、もう既に限界を迎えた身体を使い銃を手に取り、雪吹雪が凄まじい中、外へ出ようとした。


「…やめようってば。」


 突然、腹部に強烈な痛みが走る。何者からか、強く腹部を蹴りあげられた。誰がやってきたなど、言わなくても分かるだろう。

とてつもないほどの激しい嘔吐感が僕を襲い、肺から空気が漏れそうになる。この痛みをどのように表現できようか。

 先程と同じ、気味の悪いほど優しい、まるで子を守る親のような、慈悲に溢れた声が降り注ぐ。だがしかし実際はこちらへ害をなそうとしている者の声。


「どうしてそんなに戦おうとするの?」


 子に語りかけるような優しい声。薄汚れた床しか見えない僕は、今スウェーデンがどんな顔をしているのか分からない。知りたくもないが。

彼は僕の頬へ手を滑らせると、強い力で強引に面をあげてきた。彼は、いつも通りの穏やかな表情をしていた。まるで前々から予定していたかのような余裕さ。対して僕はまだ呼吸すら整ってなく、腹部の痛みが引いていない。

 彼の瞳が怖い。何をしてくるか分かったもんじゃない。


「辛いでしょ?楽にしてあげるからね。」


 彼はうっすらと口に狐を描いた。次の瞬間、彼は僕の肩を強く握り締め、床に叩きつけてきた。なんでスウェーデンが僕に対してこんな事をする?あの時、義勇兵だって貸してくれたのに。


「いつものフィンランドなら抵抗できる。もう俺にですら勝てないくらいに君は弱ってるんだよ。」


 呼吸をする事に必死で、スウェーデンの言葉が上手く脳に流れてこない。ただ、上から慈悲のような生暖かい目線を感じる。実際、慈悲なんてないし優しくもない。


「もうフィンランドは休むべきだ。でも君は休もうとしないよね。死ぬまで戦う気でしょ?」



「…じゃあもう仕方ないよね。」


 何をして____やっとの事で呼吸が整い、そう問おうとした瞬間、肩にグッと針がねじ込まれる感覚がした。

嫌な汗が頬を伝う。こんな手荒な方法でねじ込まれた注射がまともなものであるはずがない。

何とか抵抗しようとしても、彼の力は強く、そしてこちらはもうその力に抗えるほどの力は残されてなかった。彼はそんな僕を非常に楽しそうに見ている。


「俺は何回も君のお願いを聞いたよ。義勇兵だってあげた。支援だってしたよね。」


徐々に意識が薄れていく。脳が身体中に『こいつから離れろ』と訴えかけているが、身体は全く言うことを聞こうとしない。


「俺のお願いだって聞いてくれよ、フィンランド。」


意識が薄れていく中、気味が悪いほど優しい声色のスウェーデンの声だけが聞こえていた。

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