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「ヘレンさん。とりあえずモートくんが狩りをしている間に、私たちはどこか安全なところへと避難していた方がいいでしょう。例え、モートくんがいても、このまま廊下にいるのは生命に確実に危険なのですから」
いつもの調子に戻って、平然と話しているオーゼムに、不安による痺れを切らしたヘレンは青白くなっているはずの顔を強張らせた。
「……ええ。でも、オーゼムさん! マリンシス・ラオデキアさんは本当に無事なのかしら? 助かるのでしょうか? 今までモートが間に合わないことって、決して無かったとは思うんですけど……。彼女まで……殺されてしまったら、この街と私たちは一体どうなってしまうのでしょう?」
ヘレンはさすがに不安になってしまい。震える声で、オーゼムに堰を切ったように弱音を吐き出してしまっていた。
「それは、モートくんの助けが、間に合うか間に合わないかにかかっていますが。信じるしかないことなので……。もう一つ。ついでに、信じてみましょう。この一連の事件が、これから、あるいはどんな時でさえも、大きく好転していくものだということを」
その時、稲光とともに館内の照明が消えてしまった。館外の空の荒れようは、更に激しくなり、強風に乗った赤黒い雹が廊下の窓ガラス全てを横殴りをしているかのようにぶっ叩いていた。
館外からの呻き声が、じわじわとノブレス・オブリージュ美術館内へと入り込み。館全体へと広がり始めていた。
そんなヘレンの唯一の救いは、階下の玄関で行われているモートの狩りだった。この上なく激しい戦いの音が今も続いている。
再び階下で幾つかのガラスが割れる音がした。それから、ここノブレス・オブリージュ美術館へと入ってきたゾンビの群れが、正面玄関とは別の方の階段からゆるりと歩いてきて、ヘレンとオーゼムのいる廊下へとたどり着いてしまった。
ヘレンは悲鳴を上げた。
何故なら、そのゾンビの群れは皆ホワイトシティの元住民たちではない。まるで、地の底からでも湧いて出たかのような肉や服が腐り落ちている姿をしていたからだ。
「これは、マズいですねえ。モートくんは一人しかいません。よって、一階の別の入り口や窓から、ゾンビが侵入してきているのでしょう。先程もいいましたが、私は一切戦えません」
オーゼムは素直に、こちらにやってくる赤黒いゾンビの群れを観察しだした。ヘレンは、後ろはサロンへ通じる大階段。左右は壁という現実に直面した。どうやっても逃れられないのだ。
蹲りそうな恐怖に必死に耐えてモートの名を叫ぼうとしていると。
「ヘレンさん! ここにいたのね。無事よね」
すると、ゾンビの群れとは別の階段から、ミリーとシンクレア、アリスが走って来た。少しばかり遅れて、ロイヤル・スター・ブレックファストの武装した一団も姿を現した。ロイヤル・スター・ブレックファストの一団の後から、上流階級や貴族の逃げおおせた人達がついてきていた。
どうやら、悪霊から助かった人たちやアリスは、皆ミリーとシンクレアたちと合流できたのだろうとヘレンは考えた。
武装した一団は、あっという間に赤黒いゾンビにトンプソンマシンガンを発砲し一掃していく。ミリーはオーゼムの傍へよると、「あれ? 知らない男ね。見ない顔だわ」と小声を漏らしていた。
シンクレアとアリスは、大抑にミリーの頭を撫で、オーゼムが天使なのを告げる。
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