ヴラドは、己の責務を果たすため、父に別れを告げ、牙の山へと向かう。昼夜問わず馬を走らせ、振り返ることはない。背には、祖国を救うという強い決意が宿っている。牙の山は、魔の血が眠る場所。それを飲めば、人智を超えた力を得られるという。しかし、同時に、血族末まで解けることのない呪いが待っている。
ヴラドは、躊躇しない。人を捨て、呪血の一族の開祖となる。その覚悟が、彼を突き動かす。
牙の山に到着したヴラドは、奥深くへと進んでいく。周囲は、不気味な静けさに包まれている。木々の間から差し込む月光が、地面に奇怪な影を落とす。ヴラドは、魔の血が眠る場所を探し求める。
やがて、彼は、洞窟の入り口を見つける。洞窟の中は、さらに暗く、冷たい空気が漂っている。ヴラドは、深呼吸をし、意を決して洞窟の中へと足を踏み入れる。
洞窟の奥には、祭壇があった。祭壇の上には、黒い液体が満たされた杯が置かれている。これが、魔の血か。ヴラドは、杯を手に取り、その液体を見つめる。液体は、まるで生きているかのように、蠢いている。
ヴラドは、迷わない。彼は、杯を口に運び、一気に飲み干す。
瞬間、ヴラドの体は、激しい痛みに襲われる。体中の血が沸騰し、骨が軋むような感覚。彼の意識は、遠のいていく。
次に彼が意識を取り戻した時、彼は、以前のヴラドではなかった。彼の目は、血のように赤く染まり、牙は鋭く伸びている。彼の体には、人智を超えた力が宿っている。
ヴラドは、ドラキュラ公として生まれ変わったのだ。
彼は、すぐに軍を率い、オスマン帝国の侵略軍を迎え撃つ。十万の大軍を、彼は、森の奥深くに誘い込む。そして、闇夜に乗じて、奇襲を仕掛ける。
トゥルゴヴィシュテの惨劇。
ドラキュラ公の軍は、オスマン帝国の兵士たちを串刺しにし、殺戮のショーを繰り広げる。その光景は、まさに地獄絵図。オスマン帝国の兵士たちは、恐怖に震え上がり、逃げ惑う。
ドラキュラ公の活躍により、ヴラドは、祖国を救うことに成功する。彼の名は、後世にまで轟くことになる。しかし、同時に、彼は、人ではなくなってしまった。彼は、永遠に、呪われた血の一族の開祖として、生き続けることになる。闇はヴラドの舞台となり、彼の伝説は、語り継がれていく。