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※性・暴力表現有
裸で両手を拘束され首にはリードのついた首輪を填められていても眠る事が出来る様になっていたウーヴェが目を覚ましたとき、ようやく昇った太陽が地下室を斜めに照らしていたが、粉雪が降った昨日とは打って変わった晴天のようで鉄格子の分だけ切り取られた青空が見えていた。
目を瞬かせて眠気を飛ばしたウーヴェは拘束されたままの手を不自由に感じつつも起き上がり、ケージのポールにもたれかかろうとするが、背中の痛みを思い出して思いとどまる。
時間を知る術はこの部屋にはなく、日差しが入る角度でしか分からないが、常日頃太陽の傾きなどを意識したことのないウーヴェが今差し込む光で時間を知ることなど出来るはずもなく、室内をぐるりと見回したとき簡易ベッドで男がいびきを掻いて眠っている事に気付き、室内に設置されている二台のカメラが昨日のビデオ通話の際に移動した為、ケージではなく地下室の壁や窓に向けられていることにも気付く。
今ベッドで眠っている男や別の男が地下室から姿を消しているときルクレツィオが降りてきては日課の作業をこなすようにウーヴェを犯し、二人の男とは違ってそこからどんな感情も読み取れず、逆らえばナイフで傷口を抉られるだけだと分かっていたために大人しくしていたが、一台のカメラでスイスの客に見せるために録画していてもう一台はリビングのテレビに繋がっていて誰かがいつでもお前の調教を見て笑っていると囁いていたことを思い出したウーヴェは、拘束されている両手で顔を覆い隠し、ケージの床に伏せるように蹲る。
昨日聞かされた言葉が不屈という名のランプに火を付けた事も分かっているが、鞭やナイフの傷が、数えられないほど犯され、中に射精されたときのおぞましさが、そんな前向きな気持ちを嘲笑い振り向かせる足枷になりそうだった。
リオンの、太陽の下に早く帰りたい気持ちと同じだけの強さでレイプされても腰を振ってしまう己の姿を見られた絶望感が、いっそのことこのままスイスの客とやらに売られてしまえば良いと囁くのだ。
「……!!」
内なる声に抱えた頭を振って打ち消そうとするが、リオンならば事情も分かっていることから理解し許してくれると小さな声が囁き、衆人環視の中でも気持ちよさそうに出来るお前に呆れるんじゃないかとルクレツィオの嘲笑が反論する。
握った拳を床に叩き付け込み上げてくる嗚咽を必死に堪えるウーヴェだったが、こちらに向かう足音を聞きつけて胸を上下させることで感情を押し殺し、ケージの中で起き上がって背中の傷に響かない様にポールに軽く背中を預ける。
ドアが開き入ってきたのはジルベルトで、簡易ベッドでいびきを掻いて眠る男を冷めた目で一瞥した後ウーヴェと正対するようにケージの前にやって来たかと思うと、ここに監禁されてからは一度も無かったがジルベルトがケージの中に入ってくる。
「……」
「昨日はあいつと久しぶりに話が出来て嬉しかっただろう?」
あの男にされたことは余興だから気にするなと笑うジルベルトの言動が何を意味するのかが分からずにただ見上げたウーヴェは、さっきお前を引き取りに来る客から連絡が入った、どんな感じに仕上がっているか楽しみだそうだと笑われて唇を噛み締めると、リードではなく首輪をぐいと掴まれ尻が浮くぐらい持ち上げられて苦痛の声が自然とこぼれる。
「何が気持ちいいんだろうな」
「……?」
ジルベルトの狂気が宿ったような双眸に睨まれ直視できずに顔を背けたウーヴェだったが、顔のすぐ傍でスラックスの前が開けられた事に気付き、嫌だというように後退る。
昨日のビデオ通話ではジルベルトはホモが嫌いだと断言していたはずだった。
なのに何故今己のものを無造作に下着の中から出し、ウーヴェに向かって極低温の声で咥えろと命じてくるのか。
同性愛者が嫌いならば見るのも触るのも嫌だと思うといつだったか誰かから聞かされたことがあったが、嫌いだと言いながら行為をしろと命じるジルベルトの心が読めずただ拒否するように頭を左右に振ると、手入れされている革靴が素早く動きウーヴェの股間に爪先が宛がわれる。
「……ッゥ……グ……!」
「早くしろ」
お前に拒否権はない事をもう忘れたのか、だからお前はダメ犬なんだと嘲笑され、股間に宛がわれた爪先に徐々に力が込められて痛みが芽生え、逆らえばもっと強烈な痛みが来ることを察した身体が震えつつジルベルトの全く反応していないそれを咥えてしまう。
「……本当に、ルークもあいつもどうしてこれが気持ちいいと思うんだろうな」
同じ咥えてしゃぶってくれるのなら豊満な胸と尻で包み込んでくれる様な女が良いのに、こんな男のどこが良いんだと全く理解出来ないと吐き捨てながらもウーヴェの口を犯していたジルベルトは、それでもしゃぶられている内に己のものが堅さを増した事に気付き、気持ちいいと思っている己に舌打ちをしてしまう。
「イライラする」
何日か前にも発した言葉を吐き捨てその苛立ちをぶつけるように腰を強く突き出しウーヴェの喉がくぐもった悲鳴を上げても何度も腰をぶつけ、それも苛立つと言いながら一際強く腰を押しつけたジルベルトは、喉の奥のウーヴェの悲鳴を聞きつつ口内に射精する。
ずるりと抜け出すと同時にその場に伏せて噎せ返るウーヴェの背中に巻かれた包帯を無表情に見下ろしつつ気持ちが良いが楽しくないと吐き捨てると、ケージに落ちていたバスローブでウーヴェの唾液に濡れて光る己のものを拭き取って元に戻す。
初めて男の口に射精したジルベルトは苛立っているのは相手がウーヴェだからだと己に言い聞かせ、ルークを抱けば気持ちが良くて楽しいかなと苦笑しケージから出ていく。
スイスの客には喜んでしゃぶるようになった事、衆人環視の中でも腰を振れるようになった事を報告しようと決め、ああ、しっぽがあれば面白いと手を打つとルクレツィオに相談しようと笑って地下室を出て行く。
残されたウーヴェは口の中に出されたものをはき出すとその場で横になり、昨日のリオンの言葉など幻聴だったというように再び生気を失った目でぼんやりと斜めの床を見ているのだった。
ぼんやりとしていた世界に不意に音が戻ってきたことを男の悲鳴から気付いたウーヴェは、のろのろと身体を起こして悲鳴がする方へと顔を向ける。
窓から入り込んでいた日差しはいつの間にか消えていて、遠くの街灯の明かりや通り過ぎる車のヘッドライトが時折微かに差し込むだけになっていた。
相変わらず時間の感覚が無かったが、悲鳴を上げる男を見るとウーヴェを代わる代わるレイプしていた男に顔を固定され、昨日シャワーを手伝った別の男が何錠ものクスリを男の口に突っ込み、ウーヴェの時と同じように無理矢理スポーツドリンクを飲ませているところだった。
何が起きたのかが分からなかった為に様子を見守っていたウーヴェだったが、尻の辺りに違和感を覚えて可能な限り身体を捻ってそれを確かめると、動物の尻尾のようなものが見え、拘束された手を使って何とかそれを触ると犬の尻尾を触っている様な手触りと尻に不快な感覚を覚える。
一体いつの間に犬の尻尾を模したプラグを尻に差し込まれたのかとまだ驚く事が出来る己に感心しつつ記憶を探ってみるが、ジルベルトに口を犯されてからの記憶がほとんど無く、どういうことだとの疑問が脳内を駆け巡るが文字通りのペットに仕立て上げられたのだと気付いて肩を揺らす。
ウーヴェの自尊心を根こそぎ奪い取り客に渡すときには従順なペットに仕立て上げるのが目的なのだろうが、リオンの約束も待つという不屈のランプもジルベルトによって粉々に砕かれてしまった今、犬の尻尾を模したものを尻に差し込まれている現実が別の世界の出来事のような乖離感を覚えてしまう。
ケージの外では男が錠剤を大量に飲まされて咳き込んだ後に簡易ベッドに倒れ込んでしまうのをトーニオとマリオが見届け、ドアを開けてジルベルトを呼ぶが、地下室の様子をずっと録画していたカメラ二台とラップトップが纏められて壁際の段ボールに無造作に放り込まれていて、室内も軽く掃除をしたのかケージや床に飛び散っていたウーヴェの血や男達の出したものも拭き取られていた。
まるでここを撤収するような雰囲気にぐるりを見回した時ジルベルトがルクレツィオと一緒に地下室にやってくるが、ウーヴェが起き上がっているのを見ると、犬に尻尾がないのは可哀想だから付けてやった、それで思う存分新しいご主人様に尻尾を振れと笑われ顔を背けてきつく目を閉じる。
そんなウーヴェを前にルクレツィオが顎に手を当てて何かを考え込んだ後、お前への最後のプレゼントはネームプレートにしようと思ったが体の何処かに名前を入れるかと笑うが、それは新たな飼い主がすれば良いとジルベルトが素っ気なく笑う。
「そうだな。お前が気持ちよさそうに眠っている写真を送っておいた。随分と気に入ってくれていたからせいぜい向こうでも喜ばれるように頑張れよ」
もっともその客は俺たちと違ってゲスでサディスティックな傾向が強い男だからどれぐらい正気を保っていられるだろうなと笑うルクレツィオに言い返す気力もなく、ジルベルトによってケージから引きずり出されてもされるがままだった。
床に手をつき座り込む様子に当初の目的通り自尊心を粉々にすることが出来た実感を得たジルベルトは、新しい飼い主の所でも大人しくしていると気持ち良くて楽しいことばかり待っていると笑い、痣が少しだけ薄くなった頬をぐいと掴んで笑いかける。
「あぁ、本当に良い顔だな、ドク」
お前の顔を見るのも忌々しいがこの顔ならば何時間見ても飽きないしいくらでも美味いビールを飲めると笑うと、ルクレツィオも同意するようにジルベルトの肩に腕を乗せる。
焦点の合わないウーヴェに下卑た笑いを見せてその顔に唾を掛けたジルベルトは、犬に服を着せるのは好きではないが短毛種のこいつには特別に服を着せてやろうとどれほど心優しいかを示す様に伝え、着替え一式を無造作に投げ捨てるとルクレツィオがウーヴェの手首の拘束を解く。
手首に残る痣がどれほどの苦痛をウーヴェが受けていたのかを教えてくれるが拘束具がなくなっても動かないウーヴェの腿をつま先で蹴ったジルベルトは、早く服を着ろと命令しのろのろと動くその手を見守る。
その時、ウーヴェの左足薬指にきらりと光るものを発見し、そういえば今までどうして気付かなかったとしゃがみ込んでそれを見下ろすが、脳裏で子どものような笑みを浮かべたリオンがウーヴェのリザードとお揃いのものを同じ場所にタトゥーにしてもらったと教えてくれた日の事が蘇り、これがあの時のリザードかと唇の端を持ち上げる。
「ルーチェ、どうした?」
「こんな所に前の飼い主のネームプレートがある。外しておかないとな」
新しい飼い主も前の主人を示すものがあれば面白くないだろうと笑いウーヴェの左足に手を伸ばすが、服を着ることすら鈍重なはずなのにジルベルトの手が触れかけた瞬間、反射反応よりは明確に左足が隠されるように動かされる。
それは、ウーヴェにとっては無意識の抵抗だった。
リオンに初めて己の過去の一端を伝えたあの時、ずっとこれからも一緒にいる、その証としてリザードをお前の足に宿らせると口付けとともに誓ったその証のリザードで、今まで二人の仲を試すような出来事や、心の裡を曝け出さなければならないような悲しい出来事を乗り越える為の力にもなっていた。
それを外させようとする手から逃げるのは当然と言えば当然だったがウーヴェのそれをまだ残っている反抗心の表れだとし、外すつもりがないのなら壊してしまうだけだとジルベルトが低く告げた後、背後に回り込んだルクレツィオが脇の下に腕を入れてウーヴェの上半身を固定する。
「……!!」
嫌だ止めてくれ、俺のリザードを壊さないでくれと誘拐されてから最も激しく抵抗し、背中や尻の傷も違和感も一切合切無視して何とか逃れようとウーヴェが暴れるが、背後から身動きが取れないように固められてしまった今、どれだけ暴れたとしても無駄な足掻きだった。
ルクレツィオがウーヴェを押さえつけている間にジルベルトが部屋の隅の工具箱からレンチを取り出すと、蒼白な顔で小刻みに頭を左右に振って嫌だ止めてくれと懇願するウーヴェに驚くほど優しい声で未練がましい男は嫌われるぞと笑いかけ、二度手の中でくるりと回転させたそれをレンガかブロックに打ち付けるよりも強く振り下ろす。
「アァアアアァアア!!!」
レンチを振り下ろしたジルベルトの手に骨が砕ける感触と音とウーヴェの絶叫が伝わり、あぁ、本当にイイ声だとルクレツィオがうっとりとした顔で骨が砕かれた激痛に一瞬で脂汗を浮かべて身体を痙攣させるウーヴェに囁きかけるが、まだ完全にリザードが砕けていない事に気付いたジルベルトがレンチの広い面で二度三度と足の甲全体を殴り、その度にウーヴェの身体が跳ねてルクレツィオが背後からウーヴェの口を手で覆ったため、その手の中に悲鳴が吐き出されてしまう。
「ン……ンゥン!!」
二度、三度と襲いかかる激痛にさすがにウーヴェがルクレツィオの拘束を振り解き、左足を抱えてその場に倒れ込むとレンチの広い面と細い面で何度も殴られた左足は見る見るうちに赤黒く腫れ上がり苦痛の声すら上げられなくなるが、もっとイイ声を出せと命じたルクレツィオが腫れた左足を軽く蹴りつけると、ウーヴェの身体全体が跳ね上がって痙攣するのをさも楽しげに見下ろす。
「これであいつの名前も消えたな」
「ああ。……足は一本ぐらい無くなっても問題ないな」
「最近はわざと手足を切断させたペットを飼うのが好きな奴もいるからな」
この傷のまま客人に送り届けて後は好きにしてくれと伝えればそれこそ文字通り好きにするだろうと笑う二人の声を遠くに聞いていたウーヴェは、骨が砕ける音が脳天を突き抜けた瞬間に壊されたリザードの悲鳴を聞いた気がしたが、あまりの痛みに意識を保つことが出来ずそのまま意識を手放してしまう。
目覚めることが無いかも知れない闇に意識が飲まれる寸前、お前のリザードだと誇らしげにウーヴェの足にキスをし、そっとリザードを填めてくれたリオンの笑顔が脳裏に浮かぶが、閉じた瞼から溢れ出した涙に滲んでぼやけてしまうのだった。