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結婚相手を間違えました

69 - 第69話 芹だって馬鹿じゃない②

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2025年03月19日

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涙に濡れたせりの瞳はあまりにも真っ直ぐで、結葉ゆいはは胸の奥が息苦しいぐらいにチクチクとうずかされてしまう。


「でも……お兄ちゃんはきっと結葉ゆいはちゃんの異変に気付けたってことだよね? だから結葉ゆいはちゃんもお兄ちゃんを頼ってここに来たんでしょう?」


――違う?


言外にそう含められて、結葉ゆいはは思わず言葉に詰まった。



たまたま実家でそうに再会したあの日――。


そう結葉ゆいはを一目見るなり、結葉ゆいは自身が誰にも知られたくなくてひた隠しにしてきた結葉ゆいはの異変に気付いてくれた。


その上で、いつでも相談してこいと手を差し伸べてくれた。




言葉に詰まった結葉ゆいはを見て、せりが小さく吐息を落とす。


「お兄ちゃんって昔っからそう言うところあったよね……。あたしも何度もお兄ちゃんに助けられたから分かる」


「……うん」


せりの言葉に結葉ゆいはがうなずいたのを確認すると、彼女はもう一度だけ結葉ゆいはをそっと抱きしめてくれて。


「あたしも……結葉ゆいはちゃんの力になりたい」


言って、せりが涙に濡れた瞳で、真剣に結葉ゆいはを見つめてきたから、結葉ゆいはも目頭が熱くなった。



「あのねせりちゃん。実はね、私。もうせりちゃんに助けられてるんだよ?」


「え……?」


「ほら。せりちゃんがそうちゃんの連絡を受けてすぐにここへ来てくれたから。それだけで私、すごくすごく救われてる……」


結葉ゆいはの言葉にせりがキョトンとする。


そんなせり結葉ゆいはは、そうに告白したのと同様、近場だと旦那と遭遇しそうで外に出るのが怖いこと。

だからと言って一人留守番のためにアパートに残ると、夫が連れ戻しに来るのではないかと不安に押しつぶされそうになって縮こまってしまうこと。


それらを包み隠さず話した。



***


結葉ゆいはの告白を聞いて、ようやく何故兄が自分をアパートここに呼び寄せたのかが分かったせりだ。


結葉ゆいはちゃん……」


せり結葉ゆいはの名前を呼ぶと、彼女をもう一度ギュウッと抱きしめた。


「あたしの仕事ね、残業なしで十七時半ごじはんには終わるの。お兄ちゃんが残業とかになって寂しい時は遠慮なく呼んで? あ。携帯番号、昔のとは変わってるから教えるね――」


番号は、元カレと別れた時に心機一転したくて変えてしまったせりだ。


床に置いた鞄からスマートフォンを取り出すと結葉ゆいはのほうへ持ってきて。


「……結葉ゆいはちゃん?」


てっきり結葉ゆいはも同じように携帯を取り出して自分に教えてくれるものだと思っていたせりは、結葉ゆいはが困ったように眉根を寄せるのを見て戸惑った。



「あの……ごめんね、せりちゃん。私、携帯持ってないの……」


泣きそうな顔で結葉ゆいはに言われて、せりは息を飲んだ。


もしかして、結葉ゆいはの旦那の支配は、彼女が外部と連絡を取る手段まで奪うような徹底ぶりだったのだろうか?


(奥さんに足枷あしかせをはめて監禁するような人だもん。きっとそうだよね)


そう思って。



「――ちょっと待ってね」


せりは手にしたスマートフォンを操作して、着信履歴を開いた。


そのまま一番上にあるそうの番号をタップすると、兄に電話をかける。



『もしもし?』


ガヤガヤと喧騒が聞こえてくるところを見ると、そうはまだ外にいるらしい。


車に乗り込んでいないならチャンスだ!とせりは思った。


「お兄ちゃん! お使い、もう一つ追加ね――」


この家には固定電話がない。


結葉ゆいはが携帯を持っていないのは問題ありまくりだ。


そう思ったせりは、そう結葉ゆいは用の携帯電話を契約して帰るように持ちかける。


「お兄ちゃん、免許証もクレジットカードもいつも持ち歩いてるでしょう? すぐ契約できるよね?」


言えば、『あ、ああ』とせりの勢いに押され気味の、そうからのやや気後れした返事。


「全くもう! お兄ちゃんったら何でそんなことに気付けなかったかな⁉︎ 頼むよー。結葉ゆいはちゃんとの連絡手段ないとか問題ありまくりじゃない!」


せりは、しっかりしているようで抜けたところのある兄にお小言を言うと、小さく吐息を落とした。


『あー、ホント俺、ダメだな。気付いてくれてサンキューな、せり


だが、そんなせりに素直に謝ってくれた上、礼まで述べてくる兄の声を聞きいていたら、毒気を抜かれてしまう。


せり

「あー、もう、いい。分かったからちょっと待ってて?」


言って、そうと通話を繋げたまま結葉ゆいはに向き直る。


結葉ゆいはちゃん、スマホ、使ってたことあるよね? 確か昔、あたしとも時々ラインしてたもんね?」


そう問いかけたら、「三年以上前だけど……」と不安そうに結葉ゆいはが瞳を揺らせて。


せりはにっこり微笑んで

「なら問題ない。そんなに変わってないもん」


言って、「使ってたのはアンドロイドだっけ?」と畳み掛けた。


結葉ゆいはがうなずくと、「お兄ちゃん、機種はアンドロイドのね?」と、有無を言わせぬ調子でそうに付け加えた。


『了解』


通話口から聞こえてきたそうの声に、


「あ、あのっ、でもっ」


結葉ゆいはが慌てて言い募ろうとしたら、せりに人差し指を立ててシーッと制されてしまう。


「そういうわけでお兄ちゃん。可愛い機種選んで来てね? 結葉ゆいはちゃんに似合うやつ!」


フンッと鼻息も荒く電話口に告げた。


そうが『善処します』と小さく笑う声が聞こえてきて、結葉ゆいはが何かいう前に「よろしくね」と、せりは通話を切ってしまった。



***



結葉ゆいはは、もう何年もキッズ携帯しか扱ったことがない。


いきなり昔みたいに自由に色んなことが出来るスマートフォンを渡すと言われても、戸惑ってしまって。


せりちゃん……私」


オロオロと眉根を寄せる結葉ゆいはに、せりは「お兄ちゃんがスマホを持って帰って来たら、とりあえずライン入れよ? そうしたら昔みたいにメッセージのやり取りも出来るし。何より繋がってる相手とは通話料とか気にせずお話し出来るの、素敵じゃない?」


言って「楽しみ!」と微笑んだ。

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