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劉飛戦
江戸時代の日本。この街は妖怪人間が生きている世界である。夜になっても明るく眠らない街である。さぞ、美しい。海を一望できる風光明媚な街並みが広がる街、賀露。
そこで暮らす河童はなんとも惨めで哀れな人生を送ってきた。その河童の気持ちになれば、さぞ死にたくなるような人生である。その河童は子供の頃から気弱な性格で、弱々しい河童は周りから馬鹿にされ、いじめられていた。河童はその気弱な性格もあり、甘えん坊な性格も持っていた。常に兄の河童に後ろにくっついていた。さぞ、なにかあった時でも、兄が守ってくれるという安心感からその様な行動をとっていたのだろう。しかし、河童は天邪鬼や毒蛇たちに木に縛られ三日間放置されたり、火で炙られたりと、河童は自分を馬鹿にしてきた奴を「殺してやろう」その意思を積極的に肯定していた。河童は深い怒りを覚えており、震えていた。
寒さは限界を超え、滞るような風邪が吹いている。風は屋敷と屋敷の間を太陽の光と共に相手に申し訳ないと思わず遠慮なく吹き抜けている。
河童はいじめられていたからか自己肯定感がとても低くなっており、自分に自信がない。さぞ、周りの妖怪たちが幸せそうで楽しそうに暮らしている様に見える。なぜ自分だけが苦しみに合っているのかを疑問に思っていた。
そんな中、弱々しい河童を父親の河童はどうにかしなければと思い悩んでいた。そして、龍神寺というさぞ厳しいのが有名な寺に入れて半年間の修行をさせる事にした。
河童は周りが怖いからか、頸をちぢめて、深く猫背になっている。そして、肩の位置を高くして辺りを見渡した。ふと気づくとそこは大きな屋敷の前に立ちすくんでいた。ちなみに、河童の父親は、とても厳しい妖怪であった。そのため、なにか危険な事があったら、自分の身をこれで守れという意味を込め、聖柄の太刀を腰にさげていた。奪われからかわれていたが。
河童は藁草履を履いた右足を屋敷の階段にふみかけた。その時である。後ろから仲間の叫び声がした。かなり遠くからの叫び声だった。河童は足音を隠すかの様に静かに叫び声がした方へと向かっていった。河童は天宮守という屋敷の裏に隠れ、体をできるだけ平にして、頸を前へ出して恐る恐る叫び声がした方を向いた。見ると、仲間の河童をいじめている毒蛇が河童を殴る蹴るしていじめていた。そして辺り一面には河童の幾つかの死骸が捨てられたかの様に放り投げてある。その数は無数にあり、幾つともわからない。河童はその光景を見て、六分の恐怖と四分の怒りとに動かされていた。河童はあまりにも複雑な感情を抱き、呼吸をするのを忘れていた。そして時間と共に毒蛇の悪行はますます悪化していった。毒蛇は火を持ってきて河童たちを燃やし始めた。ここで河童の怒りは火を吹くほどの限界に達し、河童は両足に力を入れ毒蛇の方へと歩み寄った。屋敷の屋根には一匹の猫が馬鹿を見るように二人を見つめていた。その時、重たくうす暗い雲が空にかかる。毒蛇はその河童を見て、「お前随分見た目が変わっているな」と云った。河童は龍神寺で強制的に全身に入れ墨を入れていた。河童の全身に入れ墨が入っているのを想像してみよう。そこで、以前の河童では、泣いて逃げるという弱々しい所業にでるはずだ。しかし、河童は龍神寺に行き、修行し、培った度胸と根性で毒蛇を持っている。毒蛇はかなりその変り果てた河童の姿に恐れている様子であり、その場からゆっくりと立ち去ろうとしていた。すると河童は「おのれ、どこへ行く」そう言い放ち、慌てふためいて逃げようとする行手を塞ふさいで、こう罵ののしった。毒蛇はその言葉にも恐れ、さらにその場から逃げようとしたが、河童はそれを行かせまいとする。二人は無数の河童の死骸の中、戦いを始める。河童は「お前が行ってきた悪行は決して許される事ではない、だから私が今までの河童たちの仇、そして、今までされてきた復讐を行う」と云った。河童がこの悪を憎む心は凄まじいものがある。それは当たり前の事であるが、河童は太刀の鞘さやを払って、白い鋼はがねの色をその眼の前へつきつけた。河童は目を大きく見開き、怒りからか目が真っ赤に充血している。毒蛇は恐れ慄き、河童に謝罪をする。河童はもちろん毒蛇を許さない。河童は怒りに身を任せている様子だ。河童は毒蛇に最後のチャンスを与えた。「今までの悪行を私の前で心を込め謝罪をするのならば、許す」そういった。毒蛇は脚をガクガクと震わせながら、膝まづき、頭を地面に下げ、土下座をした。すると河童は毒蛇を太刀で真っ二つに斬り、殺した。そして今まで燃え盛る炎のように険しく燃えていた毒蛇への怒りの気持ちは少し収まった。
という話を河童が父親の河童にし終わった時、父親の河童は嘲る様な声で笑った。そして「お前はまだのびしろがあるな」と云った。河童はその意味を理解できなかった。河童は真っ二つに斬った毒蛇がしばらくその状態で動いているのを見た時は心の底からスッキリした気持ちになった。そして、無数の死骸の中から父親の河童を見つけた時は心の底から笑う事ができた。
そんな中、暮れの話。それは有名な寺。そこは賀露から一キロほど離れた寺を栄えた街。嘗ては竜を宿しその街を象徴する寺が、いまでは朽ち果て、ボロボロになった寺がある。周りには何も無い。人がいる気配もない。そこに河童は住んでいる。
その寺の名は蓋縡寺。その寺の奥の方にある小さな屋敷に一人の河童が屋敷の屋根の下で暗闇の中、一人何か作業をしているでないか。何をしているのか。それは殺した毒蛇を一人で解剖している様子である。なぜ河童は毒蛇を解剖しているのか、それは毒蛇を解剖して売り捌くためである。その蛇は有名な勝間蛇というまるで魚の様な美味い味をしているため、かなりの高額で売れる事が分かっている。また、売ることによって、今までの悪行された事を売ることによって気持ちを落ち着かせるためでもあった。そんな中、屋敷に一人の女がやってくる。その女は昔河童の世話を焼いていた女である。女は蛇を解剖している河童の様子を見る。女には、勿論、何故河童が蛇を解剖しているのか分からなかった。しかし、なぜかその女には河童がその蛇を解剖している姿が朧げではあるが少し美しく見えていた。従って合理的には、それを見ては、「悪」と決めつけるのは良くはないが、さぞ女にはこれが「悪」とは決めつけられなかった。しかし、そんな事よりもこんな雨の中、一人孤独に電気も何も無く、一人で蛇を解剖しているというこの状況が女には実に悲しく見えていた。女は「なぜ蛇を解剖する」と尋ねると、河童は「売るため」と、なんとも弱々しく、小さな声でそう言った。河童の中にはとても渦巻く複雑な気持ちがあるのだろう。仲間や家族を殺され、その蛇を殺し、残ったのは自分だけである。女は「なぜこんな事をする」と、河童を少し突き放すような言い方をした。すると、河童は女の方をギロリと向き、「僕の気持ちは分かるまい、誰もいなくなった孤独、そして僕が今まで奴にされてきた悪行を傷ついた心を」と云った。そこで女は、むしろ悪に対しての反感であるとか、様々な思いが脳内に巡った。女は「これからずっと一人だそ、孤独ではないのか」と云った。河童は常に父親に支配され、一人になりたいと願う日々を送ってきた。だから今は幸せであると云った。その時、河童は両足に力を入れて、いきなり、女の方へと歩み寄った。女は、驚き、「おのれ、何をする」と云った。河童は、女が蛇の死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞ふさいで、女を太刀の鞘を払って、突きつける。女は、驚く表情と共に、声を震わせながら「なぜ私を殺す」と云った。河童は「もう誰もいらない、俺は孤独に生きる」と云った。女は、黙り、両方の頸をぶるぶると震わせて、激しく息を荒くさせ、眼球が外に出そうなぐらいに見開いている。河童は太刀を女の頸の所に突き付けられているその時、女は河童に自分の生死を相手に支配され、もう誰も助けに来てはくれないという絶望感と、相手に支配されているというなんとも言えぬ恐怖感により、全身にヒリヒリとした、鳥肌が立つ。そこには昔、あの優しく、弱々しい河童の姿は微塵も無かった。まるで悪魔となったかの様な恐ろしい形相をしている河童に恐怖と悲しみを覚えた。そしめ河童は女の頸を思い切り斬って殺したのだ。女は頸からだらだらと血を流し、頭は何処へ。その時、河童は大口を開けて、笑い叫ぶ。これでもかと云うほどに笑った。まるで悪魔だ。その死体を近くにある核川に捨て、何事も無かったかのように蛇を解剖する作業に入った。まるで悪魔に変わった河童はもう何も失うものはないという無敵感で怖いものは無かった。盲目となり、彼の観念というのは凄まじく「悪」に近づいていた。
悪魔に変わった河童はこれからどうなるのか。その行方は誰も知らない。