【第3章:君にだけ、届けばいい】
「マイク、切った?w」
「また“バカ”って言わないの~?」
「次の生放送いつですか先輩~!?」
事件の翌日から、ジヨンは毎日こんなふうにからかわれ続けた。
階段を上がれば背後からヒューヒュー、
教室に入れば机に「💘告白王子💘」の落書き。
廊下ですれ違えば、わざとらしくマイクを突き出してくるやつもいた。
でも、ジヨンはもう怒らなかった。
うつむきもせず、ため息すらつかず、ただ淡々と過ごしていた。
(だって、全部ほんとだから)
心の中でつぶやいて、教室の窓から空を見上げる。
「ジヨン、怒んねぇの?いつもなら蹴り入れてんのに」
と、ヨンベがぼそり。
「……怒る理由がねぇ。俺が言ったことだし」
「ふーん……ついに“認めた”ってことか」
「……うるせぇ」
スンリはいつも通りだった。
からかうことも、触れてくることもない。
けれど、すれ違うたび、
ほんの一瞬だけジヨンの目を見て、笑ってくれる。
その目を、ジヨンは何度も思い出した。
学園祭の午後。
校内は騒がしく、笑い声と音楽が入り混じっている。
ジヨンは人ごみを抜けて、静かな屋上に出た。
ポケットの中のスマホ。
震える指で送ったLINEは、ひと言だけ。
「ちょっと、来い」
やがて屋上のドアが開き、スンリが現れる。
「あ、いた。逃げたりしないでくださいよ~?」
「……今日は逃げねぇ」
その目が、いつもと違った。
どこか緊張していて、でもまっすぐだった。
(言わなきゃ、終わらない)
ジヨンが口を開こうとしたとき――
「え?あれジヨン先輩じゃない?」
「屋上って立ち入り禁止じゃなかったっけ?」
「え、ちょ、まって、スンリもいる!!!!」
廊下にいた生徒たちがざわつき、階段を駆け上がってくる。
見れば、下の校庭にも人が集まり始めていた。
(また、注目されてる……また、逃げたくなる……)
けど。
今日は、違う。
ジヨンはスンリに背を向けて、校庭を見下ろす。
そして、振り返り、
真正面からスンリを見る。
「お前のせいで、俺の生活めちゃくちゃだ」
「……はい?」
「毎日バカにされて、笑われて、逃げて……
なのに、お前だけが……ずっと普通にしてくるから……」
「……ジヨン先輩……」
「俺、怖かった。
お前に嫌われんのが一番怖かった。
でも、もう逃げたくねぇ」
風が吹いた。
屋上にいた数人の誰かが、黙って見守っている。
校庭からもスマホを構える生徒の姿。
誰もが、ジヨンの一言を待っていた。
ジヨンは、声を張った。
「イ・スンヒョン!!!」
「俺はお前が、世界でいっちばん好きだ!!!」
一瞬の沈黙のあと。
\\\ キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!! ///
「やばい!本物の告白きた!!」
「マイクなしでやりやがったあああ!!!」
「学園祭史上最高すぎる!!!!」
そのどよめきの中、スンリは驚いた顔で立ち尽くしていた。
そして――
ふっと笑って、一歩、近づいた。
「……じゃあ、俺も言っていいっすか?」
「……な、なにをだよ……」
「俺もジヨン先輩が、いっちばん好きです」
その瞬間、
ジヨンの目に、涙が溢れた。
「……ばっか……お前、ずるい……」
「俺のセリフで泣くの、ずるいっすよ」
そのまま、ジヨンは俯いて、涙を拭こうとしたとき――
「よっしゃあああああああ!!!!」
「やっっっっとかよジヨオオオオン!!」
屋上のドアが開き、
ヨンベ、テソン、TOPが走り込んできた。
ヨンベがジヨンを抱きしめる。
「よく言った、マジでよく言ったよお前……!」
テソンが後ろから抱きつく。
「泣いてんじゃーん!!かわいーんだけど!!!」
TOPは無言で肩に手を置き、うなずく。
スンリはそんな光景を、ちょっと離れたところで見ていた。
そして、ジヨンと目が合ったとき――
ニッと、いつも通りの笑顔で言った。
「次の告白、今度は俺からっすよ?」
その笑顔が、ジヨンの心をまた熱くする。
涙がまた、ぽろりとこぼれた。
コメント
2件
ジヨン 泣いちゃうの可愛すぎますよぉぉおおおお!!!!!😩💗💗💗💗 え-もうお幸せに!!!!🥹🥹 このお話だいすきです😭😭🩷