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いるなつ短編集 名前伏せません
リクエストOKです。こさらん、らんこさ、すちみこもリクエストされれば、他は地雷なので受け付けません。
教室で、なつは今日も笑っていた。
クラスの中心で、誰よりも明るく振る舞う。
けれど廊下に出た瞬間、小さく漏れる声。
「……しんどいな」
それを偶然聞いたのは、通りかかったいるまだった。
放課後、本を閉じたいるまがぽつりと呟く。
「無理して笑うなよ」
「……え?」
心臓が跳ねる。どうしてわかったんだろう。
いるまは視線を逸らしながら短く答えた。
「見てればわかる」
その夜、なつはスマホを握りしめてため息をついた。
「俺、もう無理かも……」
通知が鳴る。
『大丈夫か?』
いるまからのメッセージだった。
思わず本音を打ち込む。
『ほんとは笑ってるの、疲れる』
すぐ既読がついて、不安になる。
けれど返事はすぐだった。
『疲れたなら、俺の前でくらい笑わなくていい』
胸がぎゅっと苦しくて、でも同時にあたたかかった。
次の日。
クラスの陰口が耳に刺さり、なつはトイレに逃げ込んだ。
膝を抱えて涙をこぼしていると、コン、とドアがノックされる。
そっと開いた隙間から、差し出されるハンカチ。
無言のまま立っていたのはいるまだった。
「……強がらなくていい」
その一言に、堰を切ったように泣きじゃくった。
夕暮れの帰り道。
オレンジの光に包まれながら、なつは勇気を出して言った。
「……いるまがいるから、俺、まだ笑えるんだ」
いるまはしばらく黙って、それから視線を逸らす。
「……俺も。お前がいないと、だめだ」
「え、それって……」
真っ赤な顔で、いるまが絞り出すように言った。
「好きだって言ってんの」
教室に差し込む夕日の中、二人きり。
「じゃあ俺も……いるまのこと、好き」
そう言った瞬間、いるまが一歩近づいてきた。
息が触れるほどの距離。視線が合って、何も言えなくなる。
次の瞬間――そっと唇が重なった。
あたたかくて、震えるほど甘いキス。
「……これからは、無理すんな」
「うん。……いるまがいれば、大丈夫」
夕日が沈む中、二人は新しい恋人として歩き出した。