テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
今日はLIVEで演奏する曲を練習してるんだけど…
あ、やっぱ…これ無理だ…
「ちょ、涼ちゃんめっちゃ泣いてるじゃん!大丈夫?!」
「うわ〜ん…やっぱ僕のこの曲ダメだぁ。」
昔からこの曲、苦手なのよ…。
元貴が失恋した時の曲なんだけど、この曲はどうしても僕の心を締め付ける。
「わ!ほんとだ!めっちゃ泣いてるじゃん!」
若井が騒いでるのを聞きつけて、元貴も近づいてくる。
「そういえば、昔、レコーディングの時も泣いてたよね。」
若井がそう言うと、二人してケラケラ笑う。
「てか、ぼくの失恋ソングなのに、なんで涼ちゃんが泣くのよ。変なのー!」
「もぉ〜!元貴、からかわないでよ〜。」
二人が笑いながらからかってくるから、僕も泣きながらも笑顔で答える。
ああ、もう何年も経ってるのに、今もあの頃と同じように“恋”してる。
初めてこの曲を聞いた時、僕ならこんな想いさせないのにって…
僕もこんな風に想ってもらえたらって…
僕なら『独りで寂しい』なんて思いはさせないし、ずっと側にいるのにって考えていた事を思い出す。
全然涙が止まらない僕に、元貴がティッシュを持ってきてくれた。
若井はもう飽きたのか離れた所で一人で練習している。
「涼ちゃん大丈夫?」
「う、ぐすっ…うん、大丈夫っ。」
元貴からティッシュを貰って涙を拭う。
「ふふっ。」
「も〜笑わないでよぉ。」
「ねぇ、涼ちゃん。」
「ん?」
ちゅっ。
「僕にはもう、涼ちゃんが居てくれるから大丈夫だよ。」
そう言って、元貴はニコッと笑うと、センターの位置に戻っていった。
僕は元貴にキスされた頬をさすり、今度は元貴がくれた“愛”を感じて涙した。
-fin-
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!