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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

153 - 153話 キャンプとは、いかに手を抜くかだ!

2024年03月12日

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おはよう諸君。昨日はぐっすり寝れたぜ!

「あっ。セイくん起きてたんだ」

「ああ。これから向かうんだろ?」

「うん。朝食を食べたらね」

朝起こしに来てくれた聖奈さんは、余裕オーラが全身から溢れ出していた。

あれ?戦時中だよね?

ここは城にある客室で、メンバーにはそれぞれ豪華な部屋が用意されている。

そう。久しぶりのお城での宿泊となったのだ。

「ライルくん達も食堂に来てるから、着替えたら来てね」

「ありがとう。行くよ」

俺たちがゆっくりしているのは、昨日の聖奈さんの返事からだ。


『今日はゆっくり休んで、明日行きます』

『良いのか?』

『はい。妃様から聞いていましたが、帝国程ではないにしろ皇国も自分勝手ですから。

少し焦ってもらいましょう。

もちろん民という名の兵士が傷つくのはどうかと思いましたが、必要な犠牲があるのも世の常ですので』

ドライや……

自分の望みを叶える為でもあるし、素直には助けたくならない皇国にも非があるな。

まぁ住んでる人達にはあまり関係ないって言えばそうだが、世の中はそうした偽善で満ち溢れているからな。

ホントの善は俺達ではなく、別の誰かに任せるよ。





朝食を食べ終えた俺達が向かったのは、もちろん戦場だ。


「凄いね…」

「最早なんでこの土地を遊ばせていたのか気になるな」

俺達の目の前は戦場だ。

目の前って言ってもかなり離れてはいるが、戦場のサイズがアホみたいに広過ぎてな……

「もしかしたら、ここは魔物の生息地…セイさんが初めて異世界こちらに来たところと同じ扱いなのかも知れませんね」

「ああ。あの昼間はスライムだらけだけど、夜は危ない場所か」

確かに。

いくら耕しても街を作っても、異世界不思議パワーで魔物が湧くなら放置一択だな。

俺達は水都と同じか、下手したら広いまである戦場を眺めていた。



画像



「皇国軍が割と善戦しているんじゃないか?」

「それは違うんじゃないかな?帝国軍に無理して攻める気がないだけだよ」

えっ?侵略戦争をふっかけてきて、攻めないとは…その心は?

「援軍を待って、より万全になってから攻める気だと思うよ」

「あぁ。待てど暮らせどやってこない援軍か」

まさか北軍と南軍が敗れているなんて思ってもいないよな。

聖奈さんの読み通りなら、帝国が二つの王国を倒すのは容易いと考えているはずだからな。

「じゃあ、終わらせるか?」

俺の質問に聖奈さんは・・・

「まだダメだよ。倒すのは王国軍が着いてからだね。負けそうなら手を出そうかと思ってたけど、必要なさそうだし」

さらに・・・

「とりあえず車を置いてきてくれるかな?戻ってきたら皇国軍のお偉いさんに挨拶しに行こ?」

「了解」

可哀想に皇国軍のお偉いさん。

こんな少人数の援軍だと冷やかしだと思うだろうな…実際そうなんだけど。





「なんだと?お前達に任せろだと!?」

激昂しているのは皇国軍の総司令官なるお偉いさんだ。

「そうです。ナターリア国王とエンガード王国軍元帥の王子殿下の文にもそう書かれているはずです」

「馬鹿な!いくらAランク冒険者といえど、戦争の行方を任せるなど正気の沙汰ではない!」

俺も同じ立場なら一蹴してしまうだろうな。

しかし!我らが我儘姫はそんな事では動じないぞ!

「その文にも書かれているように北での戦いも南での戦いも私達の主導で勝ちましたよ?」

「こんなもの…何とでも書けるわ!」

うーん。確かに俺もそう思います。

でも、後で困るからそれくらいにしたほうがいいよ。

「わかりました」

あれ?引っ込むの?

「ふふふっ。これで戦後交渉し易くなったね!」

わざと怒らせたのか…その為に手紙を書かされた二人には申し訳ねぇ……



「さて。それじゃあ王国軍が来るまでゆるキャンして待とうね」

「ゆるキャンって…まぁ魔法の鞄と転移魔法が有ればどこでも緩いけど…」

「ゆるキャンってなんです?」

「ゆるいキャンプ…お手軽な野営って感じだな」

「いつも通りということですね」

「腹減ったな…」

「ライルくん。朝めちゃくちゃ食べてたわよね?」

魔法の鞄や転移魔法は関係ないな……

このメンバーだと、どこに行ってもゆるいだけや……



その後の合戦は攻撃してこない帝国軍に痺れを切らせた皇国軍が散発的に突撃して、自軍の数を減らしただけだった。

最初は帝国軍が数で劣る皇国軍にすらビビってると皇国側は思っていたが、当たれどこちら側の被害が出るだけだと徐々に理解しだし、不穏な空気が皇国軍側に流れ出してきた。

「帝国は時間稼ぎが出来たら挟み撃ち出来ると考えてるんだから攻撃はしないよねぇ。

戦争なんて守る方が攻めるより容易なんだから、兵糧の心配だけしていたらいいもの」

「この場合、皇国はどうするべきだったんだ?」

「私達が他の50万の帝国軍を追い払ったのを知っているんだから、【援軍が来るまで待つ】が正しいよね。

出来るなら、援軍のタイミングが分かれば帝国の兵糧を狙うのも面白いよね。

あまり早く狙うと、流石の帝国軍も決着を早めちゃうからタイミングが大事だけどね。

後は…帝国は無理攻めしてこないのだから、援軍と連絡を取って後方を狙ってもらう事くらいじゃないかな?」

帝国がしようとしている事を皇国がするってことか。

まぁ帝国も何もしていない訳じゃないだろうから、そろそろ他の戦地の情報が入るだろうな。

「そう言えば、情報が入ると帝国はどう動くんだ?」

「2択だね。皇国へ援軍が来る前にこの戦に勝とうとするか、自国に帰還か」

「自国に帰還したら何の成果も無いどころか大損害じゃないか?そんなの選ぶのか?」

戦争は一度始めたら勝つまでやめられないから、どちらかが滅ぶんだよな。

「むしろ3:7くらいで帰還を選択すると思うよ?」

その心は?

「だって皇帝…ううん。皇族が全てこちらの手中にあるってバレるんだよ?

そうなったらこのご時世だと軍事クーデターを選びそうじゃない?」

「俺が次の皇帝だっ!って奴か?」

「そうそう。それに皇国に固執しているのは皇族だけでしょ?

もしかしたら大貴族もかもしれないけど、軍部での最高指揮官の力があれば簡単に殺せるよね?

どうせ帝国なんて独裁政治で皇帝以外はドングリの背比べなんだし、だったらアイツに使われるくらいならってなりそうじゃない?」

最後の方は物凄く偏見にしか聞こえなかったが、保身の為にもそうする可能性もあるし、このまま皇国攻めをするより現実的か?

「もうすぐ答えは出るよ」

「そうだな」

距離的に敗残兵達がここの帝国軍に合流出来るとは考えづらいから、帝国が情報を得るなら専用の部隊を放っていなければならない。

帝国が攻めても退いても俺達がする事は決まっているからどちらでもいいが。

いや、今後の事を考えるなら帝国の軍事力なんて、削れるだけ削っておいた方が平和か。



俺達のゆるキャンは、翌朝終わりを迎えた。



「攻めてきたぞ」

ライルが双眼鏡を覗いて伝えてきた。

「こっちの方かぁ。まぁ仕方ないね」

「どうしますか?」

聖奈さん的には攻めてこない方が良いのか。

「泣きついてくるまでは様子見だね」

鬼や…鬼がおる……

まぁ賛成だけど。



昼前に事態は動いた。


エンガード王国軍の先触れが来たのだ。

先触れの兵士は皇国の総司令官に言葉を伝えた後、俺達の所へと足を向ける。


「王子殿下は後2時間程で到着されます!」はぁはぁ

「ありがとうございます。お茶と食事を準備しますので、こちらにかけて休んでください」

総司令官さんは友好国の先触れの兵士に何の労いもしないのか。

仕方ないからウチでしよう。

「ありがとうございます」

兵士さんにはこの世界でも問題ない程度のおもてなしをした。

ちなみに俺達は皇国軍の総司令官がいるであろう天幕から見える位置でゆるキャンをしていた。

偶にこちらを見ていたが、話しかけてこないなら俺達から行くこともない。

「皇国軍頑張ってるね。援軍がもう少しで来るとわかればなんとか踏ん張れるものなんだね」

朝からは帝国が攻めて、皇国が守るという場面しか見ていない。

もちろん皇国が跳ね除けているなんてこともなく、ジワジワと帝国が押してきている。

「来たぞ」

双眼鏡を気に入ったライルが、王国軍の到着を報せた。

まぁあれだけの大軍だから俺も普通に知っていたけど。



騎馬が一騎こちらへと駆けてきた。総司令官の方に向かうかと思ったが、どうやら俺達に用らしい。

だって乗っている人知ってるもん。



「セイ殿。待たせたな。ナターリア王国軍は?」

挨拶もそこそこに、気になる戦況を聞いてきた。

「殆ど無傷で勝ちましたよ。シュバルツさんは皇国軍総司令官に?」

「そうだ。何かあったのか?」

シュバルツさんにそう聞かれたのは、俺が総司令官と言う言葉を出したらパーティメンバーのみんなが嫌な顔をしたからだ。


シュバルツさんへの説明は聖奈さんに任せた。


「そんな事が…皇国の救世主に何という仕打ちか。殿下に伝えてくる」


続くこちらの言葉も聞かず、シュバルツさんは自軍へと急ぎ戻っていってしまった。

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