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何もかもがうまくいったわけではなかった。すべてが終わったあと、レオノラは意識を失った。力の使いすぎか、あるいは一度に力が戻って来すぎたのか。背負って進むか、ここで止まるか。レオノラが崩れたと同時に立案されたプランは、しかしどちらも採択されることは無かった。レオノラは光に包まれると神器に吸い込まれてしまったのだ。フィアはそれを神器によって保護されたのだと解釈すると、床から拾い上げてポケットに入れた。巨大なミミックがいた場所に立つと景色が歪み、フィアは別な場所へと飛ばされた。


粘液質な音を立ててスライムが襲ってくる。フィアはマジックバックから鞭を取り出すと、ゼリー状の体を容赦無く打ち据えて潰していく。この手の魔物に対しての基本戦術だ。氷の魔法で固めてしまう方法もあるが、フィアには魔法の嗜みが無かった。液状になったスライムからは光が浮かび、ポケットの中に入れた神器に吸い込まれた。


うっすらと熱を持つスティン・ザウルにレオノラの存在を感じながらの探索は順調だった。普段は1人で仕事をすることが多いから、これが本来のスタイルだ。寂しいとも思わない。すべてが自分でコントロールできる。少なくともフィア自身はそう思っていた。


「静かだな」

ぽつりと呟くと反応するように豪華な木箱が跳ねてくる。あれにはさっき意表を突かれた。切れ味が良すぎるナイフを吐き出してきたのだ。危うく殺されるところだった。フィアは全速力で接近して手斧の一撃を叩き込む。硬い。飛び道具も厄介だが、ドワーフとやらが造った木箱は殊更に頑丈だった。体勢を立て直してもう一撃。今度は体重をしっかりと乗せて確実に葬った。こんなことがもう数時間も続いていた。


この階層にも群れのボスみたいなのがいるのだろうか。巨大スライムだったらどう蹴散らすべきか。巨大装飾ミミックは単体なら倒せるだろうか。フィアはぼんやりと考え事をしながら歩いていく。通路の脇を流れる水路から真っ直ぐに魚が飛び出してくる。ミミックが飛ばしてくるナイフに比べたら遅い。避けながら横から両断する。コイツも捧げ物だったんだろうか。レオノラは魚を捌けないだろうし、焼いて食べることもしないだろう。祭壇に捧げ物をして祈りを捧げる遥か過去の民たちに思いを馳せていると、遠くから蹄の鳴る音が聞こえた。そうか、魚を丸ごと捧げる時代があったのなら、そういうこともあるか。

「洒落になってないぞ、古代人」

牛の魔物が真っ直ぐに走ってくる。回避は簡単だと動き出してから、倒さないと女神の力が回収できないことに気がついてすれ違いざまに腹に一撃。切れ味が良い武器で助かった。しかし、これは他の動物も出てくるんだろうか。合体とかしてなければ良いな。人型になっていればむしろ楽だろうな。人相手の殺しなら獣相手よりも慣れてるんだから。

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