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レオノラがフィアに白羽の矢を立てたのは、まったくの偶然であった。彼女が神器に問うたのは「腕利きの掃除人は誰か」ということだった。ここで勇者とか戦士と言っていれば、別な人間がレオノラに振り回されたことだろう。あるいは腕利きのメイドが推薦されたのかもしれない。表社会で掃除屋を自称し、暗殺対象の存在ごと抹消するような腕前に対して囁かれる掃除屋という畏敬の念を込めた呼称と、ついでに汚部屋掃除の経験を持つという情報が奇跡的に噛み合った結果、フィアは選ばれたのだった。そんなことはいざ知らず、フィアはせっせと探索と討伐を繰り返す。第1階層における大量のミミックと巨大なミミックの組み合わせこそ、苦手分野ではあったが、やれと言われていればフィアはやっただろう。フィアはレオノラにとって、大当たり中の大当たりでしかなかった。


「え、ちょっと近付かないで」

神器から解放された女神の一言目は至極当然のものであった。仕事スイッチが入ってしまった掃除屋は殺し以外のすべてに対してポンコツとなる。必要なら水にも浸かるし、返り血を浴びることも厭わない。だから、彼は酷いあり様で立っていた。スライムの粘液と魔獣の血液に塗れ、この世のものとは思えぬ臭いを放っていた。レオノラは速やかに神器を起動し浄化を選択する。フィアは頭の先からつま先までを綺麗さっぱり洗われて、晴れて2人は合流を果たしたのだった。


束の間の休息に始まってしまった、第2階層の魔物は何が変異したものだったのかという答え合わせは、レオノラにとっては地獄の説教大会でしかなかった。反論は確実に掃除指導へと発展する。

「水浴びしたときに脱いだままにした服が彷徨ってましたが」

「すみませんでした…」

「食べ残した肉がゾンビ化してたんですが」

「すみませんでした…」

「牛とか猪とか丸ごと捧げられてたのは同情する」

「…ありがとう」

「換気とか乾燥って知ってる?」

「…知らない。でも、そんなものが魔物になるなんて思わないじゃない!」

「地上世界の魔物、レオノラの神域から湧いてきたものって可能性もあるんだけど」

「うぐ」

「平和のためにもちゃんとしましょう」

「…はい」

レオノラは逃げるように会話を切り上げ、2人は第3階層へと歩を進めた。


飛ばされた先には、何も無かった。広く開けた空間の真ん中にただ独り、女神が佇んでいる以外には、何も。

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