間違いなくあいつだった。花京院だった。
この間、たまたま外出していた時の事だ。
『〜なさいッ…!も、もうゲホッ!ゲホッ!許してッ…ください!』
細い路地裏から妙な声がする。最初はただの喧嘩か何かかと思い、気にしていなかった。
『こいつはめちゃ許さんよなあ…』
聞き馴染みのある声が足を止めた。この声は、まさか花京院……か?思わず星の白金を出し、路地裏を見た。
グリーンの長ランに赤毛。特徴的な前髪まで、完全に花京院だ。あんなところで、一体何を…?
気づけば、奴は、エメラルドスプラッシュを繰り出そうとしている。あれを一般人にふりかざせば、襲われている野郎は間違いなく死ぬだろう。が、その瞬間、花京院がこちらを鋭く見た。そこには、いつも俺に優しく微笑みかけてくれるような奴ははいなかった。冷酷な目つきで睨みつけている。まるで初めて出会って戦った時のような顔だった。
俺に気がついた花京院は生徒を手放し、早足で消えていった。襲われていた野郎も気が抜けたのか意識を失って完全に倒れた。
だが、翌日の朝に会った花京院と、路地裏で見た花京院とはまったくの別人で。”おはよう”と優しくにこやかに話しかけてくれる、そんな奴に、何も聞けるはずがなかった。俺は花京院を信じた。あの日の出来事は、何かの見間違いだったと。そう自分に言い聞かせた。
数日が立ち、似たような噂が学校に知れ渡るようになった。また頭の中にあの日の映像が流れる。子供の頃『刑事コロンボ』が好きだったせいかこまかいことが気になると夜も眠れねえ。
『キャー!!やめて!やめてよ~ッ!!』
どこからか女の悲鳴が聞こえる。まさか……またか?公園の薄暗いところからだ。空は日が落ちてかなり暗く、人もいない。急いで悲鳴の方へ向かった。
目の前に立つ姿はやはり、野郎だった。
『花京院…か?とにかく今すぐそのアマを離しな。何があったんだ。』
『ん?なんだ、ジョジョか…。こんな所で一体何をしているんだい?』
あの時の顔と同じだ。口角は上がっているが、冷酷な目だ。
『早くそいつを離してやれと言っているんだ。聞こえなかったのか?』
『おお、怖いなあ。星の白金なんか出して、怒鳴らなくてもいいじゃあないですか。ジョジョ~?』
『・・・てめえらしくねえな』
『お前は何か勘違いをしているようですが、実は最初から僕は君に恋愛感情なんてものはないんですよ。』
『なんてったってお前が大嫌いなんでねえッ!』
『花京院…。お前…。』
『ッ!』
急に視界が暗くなる。
落ち着いて目を開けると、奴はもういなかった。
何がなんだか理解できない。そのまま俺は、使いを済ませ、家に帰った。
『あら!承太郎おかえりなさ~い!ありがとうね!………承太郎?』
家に帰って、ドッと気が抜けた。敷かれた布団に倒れ込み、そのまま瞼を下ろした。色々気になって仕方がなかったが、考えようとする間に、意識は夢の中に消えていった。
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え!?うん、そうだ、イエローテンパランスに取り憑かれてるだけだと私は信じる!