いつもふわふわな雰囲気をまとっている涼ちゃんは
キーボードの前に立つと顔つきが変わる
その瞬間がたまらなく好き
これは涼ちゃん?
それとも藤澤涼架?
どっちでもいいか
どっちも好きだから
練習終了後、若井が近づいてきた。
「今日、涼ちゃんとアフター?」
「アフター言うな。」
「明日も練習なんだからな?」
「それが?」
「無理させるなよってこと。」
「わかってるよ。」
無理はさせない
させたくない
箱の中に閉じ込めてしまいたいくらい
大切な存在なんだから
「お邪魔します。」
俺の家に来た涼ちゃんは自分の家のように早々にソファーに座って寛ぐ。
「元貴の家のこのソファーいいよねぇ。」
「よく寝落ちしてるもんね。」
「気持ちいいんだよね。肌触りいいし、アメリカのソファーにみたいに大きめだし。」
俺は買ってあった有名どころのケーキを2ピース冷蔵庫から取り出し持ってきた。
「わー美味しそう!」
涼ちゃんの隣に座ると、フォークでケーキを一口よりやや大きめに分ける。
「はい、涼ちゃん。あーん。」
「え?あ、あーん?」
開かれた涼ちゃんの口に、フォークに刺したケーキを入れる。
「ムグッ。」
「美味しい?」
「(コクコク)」
「じゃぁ次。はい、あーん。」
しばらくこれが続くことを理解したのか、涼ちゃんは口を開ける。
「涼ちゃんはさ、別れるつもりだったんだよね?」
「そ、それは・・・ムグッ。」
口にいっぱいケーキを詰めてるからうまくしゃべれないようだ。
俺はお構いなしに涼ちゃんの口にケーキを入れる。
「俺がその時「分かった。別れよう」って言ったらどうしたの?」
「?!」
「チーム辞めるつもりだったんでしょ?すぐそういう思考に行くってことはさ、俺のこと信用してないってことだよね?」
首をぶんぶんと横に振る涼ちゃん。
その顎を掴んで、次の一口を食べさせる。
涼ちゃんの瞳に涙が滲んできたけど、気にしない。
「あとどれだけ愛してるっていえば、涼ちゃんは信じてくれるの?」
あぁ、本当に
(誰の目にも触れさせないように監禁したい。)
現実的じゃないから実際にはしないけど。
それぐらい愛してるってことを伝えているつもりなのに。
最後の一口を涼ちゃんに詰め込む。
かなり無理して、涼ちゃんは呑み込んだ。
「ムグッ・・・。元貴、ごめん!ごめんなさい!!」
涼ちゃんの瞳から涙が溢れだした。
「何がごめんなの?」
「元貴のこと信じてないわけじゃない。でも、自分が傷つきたくないから、元貴を傷つけた・・・。本当にごめんなさい!だから、泣かないでっ。」
泣く?
泣いてるのは涼ちゃんじゃん。
「元貴に泣かれたら、僕どうしたらいいか分からないよっ。」
練習スタジオで俺が涼ちゃんにしたみたいに、涼ちゃんが袖で俺の涙を拭う。
それで初めて、自分が涙を流していることに気が付いた。
あぁ、そっか
俺は傷付いてたんだ
信じてもらえないことに
俺から離れていこうとしてることに
その結論に至ってしまう貴方に
こんなにも愛しているというのに・・・
コメント
2件
もっくんの深くて、重い愛をりょうちゃんに信じて欲しかったんですね🥲♥️ もっくんが泣いちゃうの新鮮で、良きですね🫣♥️