クマさんはこちらに気付き、魔法を避けた。
「何で!?」
「五感も良いんだろうよ!」
こうなりゃヤケクソだ!
パァンッパァンッパァンッパァンッ
『ガッ』
おっ!一発当たったぞ!
「私も!」
パラララララッ
ミランのサブマシンガンが火を噴いた。
が、ダメージは少なそうだった。
「セイくんこれ!」
渡されたのは手榴弾だった。
確かレバーを握って、安全ピンを外してから投げれば良いんだよな?
「うぉりゃー」
当たるわけがないのは知っている。少しでも怯ませたかったんだ。
ズガァアンッ
手榴弾は、クマとこちらの間で炸裂した。
「聖奈!魔導書!」
もはや名詞のみの会話だ。時間が惜しい。
魔導書を受け取ると、俺はすぐさま詠唱に入った。
二人は時間稼ぎの為の弾幕を張ってくれている。
バンバンバン!
パラララララッ
聖奈さんのハンドガン二丁撃ちはかっこいいけど、反動に負けて全く狙えていない。
『アイスバーン』
広範囲の上級魔法だ。
熊の足元を狙ったが、動きが速い。広範囲がどれだけの範囲か知らないが、上級なら何とかしろよ!
パキンッ
氷が溶ける時に聞こえる音を、何十倍にもしたような音が森に響き渡る。
「よし!熊の膝まで凍ったぞ!今のうちに頭を狙え!」
言いながら俺もライフルを構え、頭を狙った。
どれが致命傷になったのかわからないが、俺の弾だといいな。
熊は立ったまま手と頭を下げてピクリともしなくなった。
「凄いね!アイスバーン!名前は雪道見たいでダサいけど、ここだけスケートリンクだね!」
「はい。こんなに巨大な氷は見たことがないです」
狙ったところを中心に、半径100メートルくらいの地面が凍っていた。
多分範囲内にいると、熊みたいに膝くらいまでは氷漬けになるんだろうな。
「よし。解体しよう。その前に溶かさないとな」
俺は『ファイアウォール』を使い熊までの道を溶かしていった。
「ところで普通のナイフで解体出来るのかな?」
確かに。威力の低い弾なら弾くぐらい硬かった。
「熱したナイフであれば切れると聞きました。
獣系の魔物は基本的に火には弱いはずなので」
「なるほどなぁ」
俺は『着火』マシーンと化した。
だって解体させてくれないんだもんっ!
解体を終えた俺達は、今日の収穫は赤目熊で十分と判断したので、スケートリンクで涼んでいた。
暑くてここから動きたくないっていうのは、みんな同じだったようだ。
「セイくん!この魔法面白そうだよ!」
聖奈さんが見せてきたページには、とある魔法が載っている。
「魔力視?」
「うん!これを使えば魔力が見えるんだって!作者のオリジナルみたいだよ!すんごい自慢が書いてある」
魔法の説明より自慢の方が長いじゃねーかっ!
「詠唱も、5秒もかからないし有用なら覚えておきたいな」
「じゃあ、私から使うね!」
聖奈さんが詠唱する。
『魔力視!』
どうだ?何が見える?
「きゃあっ!?セイくんヤバい!キモい!」
何が見えてるのか知らんが、自爆魔法使うぞ。
そんなのあるのかしらんが。
「ミランちゃんも使ってみて!」
「私に使えるでしょうか?」
そう言いながらも詠唱する。
『魔力視』
使えたか?
「セイさん…なんですか、それ?」
ドン引いてる。
「ちょっと貸せ」
『魔力視』
おお!なんかミランから黒い煙?みたいなのが見えるぞ!
聖奈さんは……ほぉ。煙というよりも、黒い炎のように何かが立ち昇っているな。
まさか……
俺は自分が見えないので、二人に聞くことにした。
「俺はどうなっている?」
「セイさんは……黒い炎ではなく…全身からドロドロとした物が放出されています…」
なんだその化け物は…最終形態のカオナシか?
「とにかく黒いドロドロが身体から噴き出して見えるの!
ヤバいよ!セイくん死ぬの?!」
ふざけんな!なんで死ななきゃいかんのだ!
「それより解除は?」
「時間が経てばと書いてあるよ」
それを聞いて絶望したが、大した時間ではなかった。
2分後。
「それにしてもセイくんのは凄かったね!」
さっきまで俺から逃げていたくせに、見えなくなれば近寄るとは……
忘れないからなっ!
「それで、あれは何だったんだ?」
「本によると、あれが魔力です。密度が濃いほど魔力が高いみたいですね。
重ね掛けのように複合魔法を使い、魔力を帯びているモノを探査できるようです」
「それはかなり優秀じゃないか?」
「そうだよ。だから使ってみたかったんだけど、複合するもう一つの魔法を使う前にすごいモノを見ちゃったから…」
いや、言い方!
「じゃあ俺が使うな。二人に使わせたらキモいしか言わんし」
なんだか二人が謝ってきたが、よくよく思い出してみると、キモいと言っていたのは聖奈さんだけだったな。
という事は……ミランも心の中では……
『魔力視』
続けて
『魔力波』
うおっ!見えていないのに、森の中の魔物の位置がわかるぞ!
二人の位置ももちろんわかるが、近すぎて意味はないな。
一度魔力波を使った時に、魔物がいるところがソナーのようにわかるのか。移動されたらわからんくなるな。
『魔力波』
どうやら魔力視が発動している間は、何度でも使えるようだ。
二人の位置が微妙に移動しているのも、森の中の魔物の位置も、一度目と変わっているのがわかる。
魔力波自体に詠唱がいらないのもいいな。単体では発動しないけど。
「これは優秀だぞ」
二人に使った感想を伝えた。
「これでミランちゃんの負担が減らせるね!」
「そうだな!」
「わ、私の役目が…」
「ミラン。安心しろ。俺達はミランを働かせ過ぎだから、これで丁度いいんだ」
「そうだよ!それに魔力が少なすぎたりなかったりする生き物には反応しないから、そこは今まで通りミランちゃんが頼りだよ!」
おれも視力は1.5以上あるが、ミランは5くらいはありそうだ。これからもよろしくお願いします。
途中遊びが過ぎたが、結果良ければだ。
俺達は解体した熊と共に裏庭に転移した。
「よし、誰にも見られていないな」
「そんなに心配なら、家の中に転移すればいいのに」
「だって熊肉で汚したくはないだろ?」
「あのぉ。小さく切ってビニールに入れて運べば良かったのでは?」
よし!聞かなかったことにしよう!
熊肉を含めた素材を馬車に積んで、俺達は冒険者組合に向かった。
「えっ?赤目熊を討伐した!?」
驚いている買取の職員をスルーして、俺は会話を続ける。
「ああ。重たいからここに運んでいいのかどうかを聞きにきた」
「馬車ですか?」
「そうだ」
「では、裏手に人を回します」
「わかった」
どうやら運んでくれるらしい。俺たちだけだと、何往復かしなくてはならないから助かるな。
納品を済ませた後はお金を受け取るだけだ。
俺達は椅子に座り、その時を待った。
「17番の方」
呼ばれたのでみんなで向かうことに。
「俺たちだ」
そう言って割符を返した。
「こちらが報酬になります」
320,000ギルだ。かなりの額だと思ったが、死にそうな思いをしたのだから当然か。
それに俺達は転移があるからいいが、普通ならやってられんだろうな。
「それとランクアップの条件を満たしましたので、カードをお預かりします」
俺たち三人はカードを受付に提出した。
「やったね!」
「やりました!」
「今日もぱーっと食べに行くか!」
俺達は新人から一般にあがり、恒例となった祝いをする為、仲良く街へと繰り出すのであった。
〓〓〓〓〓〓〓人物紹介〓〓〓〓〓〓〓
キリがいいのでここまでの登場人物を載せます。
キリが良いということは…そうです!次回から初めての旅が始まります!
登場人物
リゴルドー商人組合組合長ドノバン(50代男性)
リゴルドー商人組合の職員ハーリー(30代男性)
リゴルドー商人組合の馬番トム
リゴルドー冒険者組合の受付嬢(20歳くらい)
冒険者ミラン(13歳金髪美少女)
ミランの父バーン(30代中頃)
ミランの妹ミレーユ(6歳金髪美幼女)
ミランの弟バラン(8歳茶髪)
ミランの母名前はまだない(30前後金髪美女)
宿のおばちゃん(40代)
須藤 智也(大学の学友)
川崎 奈々(大学の学友、須藤の彼女)
長濱 聖奈(大学の学友、前に所属していたサークル仲間)
二階堂 愛菜(27歳、ぽっちゃりほんわか、バイト)
林 恵里奈(26歳、茶髪、化粧濃いめ、バイト)
ストーカー 名は知らん(推定25歳。大柄)
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後、創作意欲が増しますので、是非!
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