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「曽野くんもう少し近く寄って」
カメラマンの声に「はい」と返して、柔太朗の前に座る
これくらいの距離、仕事で何度もやってきたのに今日は少しだけ落ち着かない。
「はい、曽野くん顎上げて〜」
動こうとした瞬間、低い声が落ちてくる
「こっち」
気づいたら柔太朗の指が顎に触れていた。
軽く持ち上げられて、そのままよく整った顔を向けられる。
「っ」
一瞬で体が熱くなる。
息がかかるほど近い距離
逃げたいのに、獲物を見つけたかのようなその目からは逸らせられない。
「舜太、ちゃんと見て」
静かに言われて、そのまま見返す
柔太朗はいつも通りの顔
何も思ってないみたいに綺麗で、それが余計に
「…は、はい」
声が少しだけ揺れる
シャッター音だけが続く
顎に触れられたまま、視線も外せないまま。
あかん、耳が熱い
自分でも分かるくらい赤くなってる、じわじわ熱が上がってきて体の奥まで変に火照って
息も浅くなるのが分かる。
なんとか耐える
カメラの前やから、絶対に崩れたらあかん
「はい、オッケー」
やっと解放されて一歩下がる
息を吐いても全然戻らないほど 熱が残っている
「さっきの良かった」
柔太朗はいつもと同じ声で言う。
「……そう、なん?」
なんとか返すと、柔太朗は笑顔で頷く。
「自然だった」
どこが?こっちは全然余裕なかったのに
「……そっか」
それ以上、何も言えずに。
後日、柔太朗に楽屋でスマホを見せられた
「これ見た?」
「ん?」
画面を見てすぐ分かる、 あのときのやつ
表情が崩れた瞬間、目も逸らせてなくて、少し息も上がっている。
「……これ、使われとるん?」
「うん、普通に上がってる、あとバズってる」
淡々と言われて、言葉が出なかった
そんな軽い一言で済むのに中身は全然軽くない、むしろ大事件だ。
アイドルとして醜態を晒している 画面の自分から目が離せない
あのときの感覚が思い出されて背筋がゾワゾワとする。
顎に触れられたとこ、あの距離、あの声
「……なあ、これ100仕事やったよな」
ぽつりと落とす、返事はない。
でも分かってる、柔太朗は何も変わってない
あのときも今もただ完璧に仕事としてこなしているだけ。
変わったんは
「…恥ずかし、俺だけ?」
小さく呟くと、柔太朗が少しだけ首を傾げる。

何が?と、とぼけた声
分かってるくせに。
「……別に」
スマホから目を逸らして、そのまま離れようとした瞬間腕を軽く掴まれる。
「しゅん」
呼ばれて反射で振り返ると、距離が近い。
それだけで全身に熱が一気に戻ってくる
耳がじわっと熱くなるのが分かる。
「どこまでが仕事だったと思う?」
「……は?」
言葉に詰まる、答えられるわけない
そのまま固まっていると、柔太朗がふっと笑う。
ほんの少しだけ、意地悪に。
「ねえ、どう?」
もう一歩近づく
また逃げられない距離
心臓がうるさい、何も言えない
その反応を見て、柔太朗は満足したみたいに小さく頷く。
「そっか」そう言って手を離すと
「じゃあ、いいや」と軽く背を向ける。
少し歩いてから、振り返らないまま一言
「次はどうしようかな」
ドアが閉まる
静かになる
「これ以上は俺……無理…」
力が抜けて、その場にへなへなと崩れ落ちる。
何となく、頭に浮かんだ言葉は最低だった
いつかいけない所まで行っちゃうのかな。
END
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