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유리
梟谷学園第3学年棟。
昼休みが始まった途端、その階は一気に騒がしくなる。
「赤葦ィィ!!聞いてくれ!!今日の俺、絶対調子いい!!」
廊下の端から端まで響く大声。
その中心にいるのは、もちろん木兎光太郎だった。
昼休みだというのに落ち着きなど一切なく、木兎はぎゃあぎゃあと騒ぎながら、一つ下の後輩・赤葦京治の腕を引っ張り回している。
「だからさ!昼練の前に一本だけトス上げてくんね!?」
「嫌です。昼飯食べてください」
「えぇ!?冷たっ!!」
「五分前にも同じ会話しました」
呆れたように返しながらも、赤葦は慣れた様子で木兎の隣を歩いていた。
その騒ぎ声は教室を越え、階段を抜け、校舎のあちこちへ響いていく。
「あ、また木兎先輩だ」
「今日も元気だなぁ」
他クラスの生徒たちは、聞こえてくる声に苦笑しながら窓の外を見たり、友人同士で肩を揺らして笑ったりしていた。
梟谷では、これもいつもの昼休みの風景だった。
けれど、その騒がしさを快く思っていない人間もいる。
校舎の端にある音楽室。
昼休みのそこは静かで、カーテンが半分だけ閉められた室内には、春の柔らかい風だけが入り込んでいた。
窓際のロッカーの上に、一人の男子生徒が寝転がっている。
制服の上着を丸めて枕代わりにし、長い脚を適当に投げ出したまま、面倒そうに目を細めた。
「……うるさ」
遠くから響く木兎の叫び声に眉を寄せ、鬱陶しそうに顔を歪める。
彼はヘッドフォンを取り出すと、乱暴に耳へ押し当てた。
すぐに大音量の音楽が流れ込み、外の喧騒を少しずつ塗り潰していく。
それでも完全には消えない。
『赤葦ーー!!』
廊下の向こうから、まだ馬鹿みたいにでかい声が響く。
男子生徒は小さく舌打ちをして、腕で目元を覆った。
窓から差し込む光が、銀色にも見える髪をぼんやり照らす。
静かな音楽室の中で、彼だけが周囲から切り離されたようだった。
だが、その静寂も長くは続かない。
騒がしい足音が、少しずつこちらへ近づいてきていた。