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西暦2027 二月三日
朝目が覚めると、いつも同じ景色が目に映った。特に女子みがある訳でもない自室。
いつも勉強が終わるとPCゲームをしている勉強机、枕元にはゲーセンで取ったぬいぐるみ。全く珍しさの欠片もない部屋である。壁にかけてある時計を確認すると、午前六時四十五分を示していた。学校に行くには慌てる程の時間ではなく、ベッドに潜りたい欲を抑え、リビングに向かった。机には書き置きがあり、母親からのものだった。
『滴へ 今日も仕事で朝が早いので、朝食食べたら片付けておいてね。 ママより』
「はぁ」っと、ため息をついた私は、朝食を食べ、支度をし、学校へと向かった。私の通う学校は、この辺だと有名な進学校で私は受験するのにちょっと苦戦した。それでも、合格でき、無事高校二年生生活を送っている。
私は、そこまでコミュニケーションを取るのに難を持っているわけではないので、普通に学校生活を送る分には何の支障も出ない。ただ、それで友達がいるかと聞かれたら、、、居ない。
唯一の友達は、クラス一の人気者であり、秋園財閥のお嬢様、秋園 桜だ。
「やっほ〜、シズ〜おはようー!」
そう言い、突然後ろから飛びかかってきた人、そう、この子が秋園桜、私はアキと呼んでいる。シズというのは私の事だ。雨草滴、シズだ。
「お、おはよう。アキ」
「もう、元気がないんだから!そんなあなたには、ウチが元気を分けてあげよう!」
「大丈夫、ありがとう」
「最近、全然元気ないけど、どったのよ」
「いやぁ、PCゲーを夜遅くまでやってて、ちょっと寝不足気味なのかな」
「全く、ウチには分からないなぁ、そんなに面白い?」
「そりゃあもう!今、全世界で話題になってるオープンワールドRPGだよ?やらなきゃ損よ!」
「めっちゃ元気じゃん、おい!」
そう言ってアキはくしゃっとした笑顔で私の背中をバンと叩く。
「ごめんごめん、じゃあ、ほら。チャイム鳴ってるし、席戻りなって」
「うん!またね!」
そんなたわいのない会話ばかりだが、アキは、紛れもなく私の親友だ。こんな私でも友達になってくれたのだ。入学したての頃、誰とも話せなく、困ってた私に話しかけてくれたのがアキだった。あの時、話しかけてくれなかったら、きっと今でも一人だったかもしれない。この二年間、私の高校生活を彩ってくれたのはアキだと、私は思っている。
放課後…
私が帰ろうとすると、アキが話しかけてきた。
「シーズ!一緒に帰ろ!」
「うん、いいよ」
学校から、家まではおよそ三十分。そこそこな道のりだ。
「シズさ、ゲームばっかやってるけどさ、頭いいんだよなぁ、、、この間のテストなんて、確か学年四位でしょ?」
「まぁね、でも私はこれ以上は、無理だと思ってる」
「なんで?」
「だって、残り上に三人いるのわかってるでしょ」
『三皇帝、ね』
「そそ、学年一位の寿 文也。二位の愛川 百合明。三位の翔塚 黒兎。あの三人は、異常なんだよ。何せ、全員化け物レベルの才能を持ってる。私なんか、足元にも及ばないよ」
「そんなことないよ!」
「え?」
「シズにだって、いい所はいっぱいあるんだから!才能なんて大した差にはならないよ」
「いや、実際今負けてるんだからさ」
「むー」
「まぁ、ありがとう。私にそんなこと言ってくれるのは、アキだけだよ」
アキは、満面の笑みを浮かべた。
こんなに私の事を大事にしてくれる友達なんだ。大切にしないと、そう思わされる。
次の瞬間。
突然意識が揺らぎ身体の力が抜け始めた。 明らかにおかしい。こんなこと、今まで無かったのに、ゲームのし過ぎかな。
朦朧とする意識の中、私はゲームの次のイベントの事を考えていた。
帰らなきゃ、家に。ここで倒れたらアキに心配させちゃう。そう思い、アキの方を見るとアキは地面に倒れていた。
「アキ、、、どうし、、たの」
そこで私の意識は途切れた。その後どうなったか、私には知る由もない。
次に目が覚めると、私は真っ白な空間に立っていた。周りを見渡すと、同じ制服をきた学生や違う制服を来ている子もいる。
見たところ、私の知ってる有名校の学生が勢揃いだ。ジャンプして周りを見回してみると、かなりの数の人がいる。数えるのは無理そうだ。
「一体、どうなってるの、、、」
私がそう呟くと、後ろから
「シ、、、ズ?」
と聞こえた。
後ろを振り返ると、そこにはアキがいた。その様子からとても 怯えてるように見える。
無理もない、私も足の震えが止まらない。私達は学校が終わって、帰る途中だったはず、、、。
そして、しばらくすると、私達の頭上が光り出した。光が収まると、そこには一人の少女が居た。私は目を疑った。少女は宙に浮いているのだ。
少女は、話し始めた。
『ようこそいらっしゃいました、私達の世界へ』
(私達の世界?どういうこと、、、?)
『皆さんは戸惑っているでしょう。突然、このような場所に連れてこられて。でも、安心してください。帰ることはできます。ですが、帰るにはとあるゲームをクリアしてもらわなければなりません。そのゲームの名前はユートピア・ネクサス。皆さんは、一度は聞いた事のあるゲームのはずです』
ユートピア・ネクサス、、、。私がいつもやっている、今、世界で話題になっているオープンワールドRPGだ。何故、こんな事を。
少女は、すぐに続きを話し始めた。
『今、皆さんは、何故こんな事を?結局、お前は誰なんだと、、、そう思っていますね。お答えしましょう、私の名前はユピテル。この世界を創りそして治めている者です。この世界は、神々の娯楽として、鑑賞するためだけに作られました。帰る手段はただ一つ、私達神々の殲滅。それ以外ありません。』
(な、何だって、、、神々?殲滅?どういうこと?理解が追いつかない、、、)
『それから、かの世界では、特別な手段以外での蘇生は不可能です。精々、死なないように気をつけてくださいね。それでは、頑張って、、、私達を殺しに来てください、最後の地で我々はあなた達を待つことにします』
少女が話終わると、私達の服装が変わった。制服にちょっとした鎧が装着されたのだ。そして、腰には短剣。
しばらくすると、また意識が朦朧とし始め私はまた意識を失ってしまった。
再び、目を覚ますと、私は見知らぬ森のど真ん中で寝ていた。あれから、どれだけ時間が経っただろう。アキは、、、?
周りを見渡しても、アキの姿は見当たらない。私は立ち上がり、とにかく走った。何処に向かっているかも分からない。しかし、今はとにかく走って安全な場所を目指すしかない。アキを探すのはその後だ。
この世界がゲームの世界って事は、私の今までの知識が全部役に立つはずだ。
そう思い、私はいつもゲームで見ているメインメニューを出現させた。こういう要素も元のゲームのままなんだ。なら、きっとマップも同じはず。私は一番近い場所にある街、エレジオを目指した。
絶対に死んでやるもんか。生き残ってみせる、絶対に。そして、帰るんだ。
あの世界に。