テラーノベル
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※jp→ttへ片想い中のお話し。
※jpさん一人暮らし、ttさんシェアハウス。
※2話完結ですが長いのでお暇なときどうぞ!
冴えない自分も、今日は街に溶け込んでいるはずだ。
美容室専売のヘアバームで髪をセットした。
朝ごはんにサラダなんか食べたし、トーストも焦がさなかった。
ブラックコーヒーだって飲んだんだ。
中に着込んだシャツのアイロンだけは上手くできなくて、少し気になるけど。
約束の場所へ向かう足取りは自然と早くなる。
今日は、ttとの待ち合わせ。
誕生日だからって珍しくttから誘われた。
いつもだったらシェアハウスに迎えに行くんだけど、待ち合わせしてみたい、って言ったらttは「なんで?」て顔してた。
人混みの中、俺を見つけて駆け寄ってくるttを見てみたかったんだ。
予定通り早めに着いた。
もう一度ショウウィンドウに映る自分を見る。
やっぱりなんか、浮いてる気がする。
イケてるかもなんて期待した自分はとてもダサいし、想定外でがっかりした。
そもそもイケてるって言葉自体がイケてないのかも。
小さくため息をついたのを誤魔化すように胸を張ったところで、人混みからこちらに手を振るttが見えた。
「すまん、遅なったな」
その瞬間というのは期待以上の喜びに溢れていた。
満たされている都会の人達の中、ぽつんと立っていた空っぽの自分に、誰よりも綺麗で大好きな人が駆け寄ってきてくれたのだから。
大きく目を開けたttは可愛らしい八重歯を見せて笑った。
先ほどまで悩んでいたしょうもない事が、どうでも良くなった。
「ううん、今来たとこだよ」
本当は30分前にはここに着いていたのだけど、ベタな返しがするりと喉から出てきた。
よし、イケてるぞ、俺。
「ほんま?ならさっそく行こか」
緩めの黒い帽子を頭に乗せたttは、今日も可愛い。
こんなこと言うと絶対怒るんだけど、可愛いんだから仕方ない。
初めて会った時は綺麗なひとだって思ったけど、綺麗さは相変わらずのまま、年上とは思えない可愛らしさが内面にも外見にも溢れていた。
「どこ行くの?」
「まずは映画!!観たいのあったやろ?ホットドッグ食お!」
…
「映画おもろかったなー!次はゲーセン!!」
…
「いっぱい獲れたなー!晩メシ食おうぜ!!」
…
「めっちゃうまかったなー!ほんじゃイルミでも見っか!」
…
いつもは俺が連れ回すから、ttに引っ張られてどこそこ行くのはすごく新鮮で、すごく嬉しかった。
映画もいい席で観れたし、ちょっと良さげなレストランなんかも予約してあって待ち時間なく座れた。
ゲーセンはまあ、ttが行きたかっただけかもだけど。
色々と練って準備してくれてたんだと思うと、イルミネーションをキラキラした目で見るttがたまらなく愛おしかった。
聖夜に酔いしれる人たちの中にいる自分は、朝よりも少しだけ街に溶け込んでいる気がする。
だってこんなにも綺麗な人と、最高のクリスマスと誕生日を過ごせたんだから。
…
シェアハウスの最寄駅に帰ってきた。
ここからがまた遠いのだけど、ttとまだ一緒にいたくて歩くことにした。
「ほんまは今日な、yaくんとかメンバーも誘ったんだよ。お前の誕生日やからって。そしたらみんながみーんな予定あるって」
「みんな?珍しいね」
「ぅん。あの引きこもりurもやで?みんな、邪魔できないよーとかゆうとったけど、なんやったんやろ。」
「…」
「でも楽しかったわ」
ttはクレーンゲームの景品がたくさん詰まった袋をぶら下げたまま、冬の夜空を見上げて白い息を吐いた。
「…うん、ほんと楽しかった。ありがとうtt」
「それに全部奢ってもらっちゃった」
「…正直な、プレゼントも結構悩んだんやけど、何買えばええかわからんくて。俺からのプレゼントは今日一日って事で許してや」
目を細めてはにかんだttの笑顔に、胸をときめかす。
「…十分だよ」
…本当に。
「あ、飲み物買おうぜ。このお菓子つまみに俺の部屋で二次会しよ」
「ぇ!いいの!?」
ドンッ
「、、、っとすんません」
コンビニから出てきた二人組のひとりが、ttにぶつかった。
ニヤニヤとタバコと酒の匂いを吐き出しながら、俺たちの前に立つ。
「痛いな〜気をつけてよね〜」
「ぇ、きみかっけーのつけてんね、目ェ怪我してんの?」
「いやいやいや!いかにも厨二っしょ〜!」
下品な笑い声を出す男達に、ttは小さなため息をつくと頭を下げた。
「本当すみませんでした。気をつけます」
「ん〜いいよ、笑かしてくれたから許す」
男がttの頭に汚い手を乗せようとしたのを見て、俺は反射的にその手を払っていた。
「は?」
「…ttに触るな」
「何お前、うざ」
「触るなって言ってんだよ、お前がぶつかってきたんだろ」
「jぁp、」
「…声震えてんぞ、無理すんな」
トポポ……
男は持っていた缶を傾け、俺の頭に酒を被せた。
「あ〜、だる。行くぞ」
男達は去って行ったのに、手脚の震えが止まらなかった。
ひどい匂いのする液体をポタポタと落とす俺を、ttは気づかわしげな顔で見ていた。
…ほんと、俺ってイケてない。
…
それから俺とttは黙ったまま歩き、シェアハウスに帰り着いた。
シンとした家はみんな寝てるのか誰も出てこなくて、この姿を見られなくて済んだことにほっとした。
脱衣所に入るとttはふわふわのタオルで頭を拭きながら、俺を見上げてきた。
「…ごめんなjp」
「髪、いい匂いだったのに」
「、、気づいてた?」
「ぅん、バーム変えたん?ほら、上着も脱いで」
「…シャツもキレイにアイロンかけとるやん」
「…」
「ほんまごめんな、せっかくの誕生日なのにな」
「大丈夫、ttのせいじゃないよ」
「でも俺まじかっこわるかったよね笑」
ttは俺のシャツの胸あたりに手を当てると、少し吊り気味の大きな目をまっすぐこちらに向けた。
「いや、朝からずっとかっこよかったよ」
「今もかっけえよ、俺を守ってくれたんやから」
「ありがとな、jp」
洗面台の鏡を見る。
やっぱり俺は冴えなくてイケてない。
街に馴染む人たちはみんな、おしゃれでカッコよくて、そして自信たっぷりに見えた。
それでも、鏡に映る俺の隣には可愛い帽子を乗せたttがいて、しかも「かっこいい」なんて言ってくれた。
…しょうもない想定外もあったけど、最後に最高のプレゼントをもらった気がする。
「…ありがとうtt」
「ttがくれたプレゼント、大事にするね」
「…?なんもあげてへんけど」
「あ!景品な!あれは全部お前のもんや!」
「笑。ありがと」
…
シャワーを浴びてttの部屋のドアを開けると、いきなり破裂音がしてクラッカーを浴びせられた。
つむった目を恐る恐る開ければ、満面の笑顔でこちらを見るttとメンバー達がいた。
「「「「「誕生日おめでとー!!!」」」」」
「えー!みんな起きてたの!?」
話を聞けば、俺たちが帰ってきたのに気づいたみんなは声を潜めて寝たふりをしていたみたいだ。
手作りのケーキやおつまみ、お酒が並ぶ、メンバーでぎゅうぎゅうの狭い部屋。
とても座りきれず立ち食いしていたら、yaくんとurが肩を組みながらニヤニヤと近寄ってきた。
「なぁjpさん、デート楽しかった?」
「おいお前まさか告ったのかよ?」
「うん、めっちゃラブラブしてきたよ!っておい!!怒」
「ギャハハハ‼︎‼︎」
「「「なになに?なんの話〜?」」」ワイワイ
〜♪
「あ、no兄からだ!」
「もしもーし!あ、ありがとー!!」
「あ!おいお前、それ俺からjぁpへのプレゼントなんやから!だめやって返せ!は?しゃーないやろ!」ギャアギャア
メンバー達の笑顔と、ttの存在。
これがあれば、空っぽだった俺も満たされる。
本当に、最高のクリスマスと誕生日。
end.
コメント
1件
かっこいいよーー!jpさん!!ttさんもかっこいい🫠🫠お似合いなのにね 煽りuryaのノリもとても好きです🤍