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ここが慶年小であるならば、教室のある所をちょっと進んで、すぐ右側に階段がある。そしてそれを下りて直ぐが昇降口だ。
勢いよく右に曲がると、羽織りがバサッと言った。
階段も尚の事簡素になっており、まず、入って直ぐ目に入るはずの、床沿いの大きめな磨りガラス。それと格子も無くなっており、掲示板とかも消えている。手すりは同じ様に左右にだけあって、その掲示板があった所は途切れたままなのだが、少しだけ色が違って見える。
それを2段ずつ大股に駆け降りる。
フロアに足を着けてから直ぐ目に入ったのは、床と、見た目は無機質になってしまった、それらの有機質な懐かしい配置。
意識の半分を見た目が、もう半分を配置が。
俺に目新しさと懐かしさの両方をずつ感じさせた。
(ここは1階か。)
真っ白(明かりが無く真っ暗である為、一面灰色に見えるが)になってしまって居るにも関わらず、靴箱とか、傘立てとか、柱、硝子棚、それから扉とかの、大きさや位置関係に変化が全く無いので、懐かしさも感じたと言う訳だ。
(扉は…)
昇降口のドアはデカい。一面硝子張り、鉄枠、スライド式。それでだって、それら一つ一つの二つずつに鍵がある。
床の突起を、これまた羽織りをひらひらさして、ひょいひょいと跳ねて行きながら、扉に真っ直ぐ走る。
靴が軽快に、トンッ、トンッ、と鳴る。
そう言えば、鬼から存在を隠してくれる、と言うのが俺の仮説な訳ではあるが、音の方はどうなるのだろう。
走る勢いのまま、扉に右手を掛け、力で、右へ引っ張った。
ガゴンガゴン、と、大きな音が鳴る。
(開かないか…。)
となれば、一先ず、上に戻って___
___鬼が出ている様だ。
天井から鈍い振動が、階段から微かな悲鳴の残響が届く。授業中、上の階の教室が机を動かすと、その引き摺る振動が大きく響いて煩かったのを思い出す。
最早隠密の意味は無い。
俺は勢いよく階段に向かって走り出した。
明かりも無く、薄暗い、校舎の廊下に似た施設の一角に見える。
それは ┛字に曲がる。角が凹んで空間になり、┛の角の所に柱が一本立っている。そして、その凹んだ角の奥の壁の隣から、黄色い光が漏れている。
その凹み空間の隣は、壁がくり抜かれて階段になっており、上へと下へがある。
その下の方から、白い額が上がって来る。
しかし、それと同じ方向で、外側の廊下を青鬼が歩いていた。
階段を上り切った青年は、こちらまで走り来てから、壁を左へ曲がろうと、羽織りをひらりと靡かせたが、直ぐにその事に気が付いて、体幹を崩しながら、慌てて壁の裏に戻って背を当てた。
危ない!びっくりした…。
壁の後ろから、こっそり鬼の方を覗いてみる。
筋肉質な、背の高い大きな体躯。背中の皮膚には背筋の様な筋が、そこにくっきりとした影を刻んでいる。
足も短く、肩幅が大きい。全体的に、横に大きい、筋肉の姿である。だからと言って、縦が小さいかと言う訳でもないのだが。
一瞬、狐の面が壁に触れ、僅かにスコッ、と言った。
その姿が消えたのを認めてから、早足で教室に向かう。
一番手前の右の教室、俺が元居た部屋に入る。
そこには、机の下に身を潜める、かどくら先生と、見知らぬ何人かが居て、教室のドアーに立ちはだかる、俺の顔を見つめて居た。