コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「よいしょっ…」
まだ何も家具の置かれていないだだっ広い空間に、重たい段ボールをおろす。
「これで最後!はあ〜〜疲れた…」
そのままヘナヘナと座り込む。
春。
出会いの季節。
新しいことが始まる季節。
私は引っ越しをした。
大学を卒業してすぐ、希望していた会社に勤めた。
大好きな彼もいて、幸せな毎日だった。
だけどある日、そんな大好きな彼に裏切られて幸せは崩れ去り、あんなにやりがいのあった仕事もできなくなった。
ぜんぶやり直したい。
一から新しい自分で。
そう考えられるようになるまで少し時間がかかったけど、時間が解決するとは本当にそうで、引っ越して来られるまで私の心は回復した。
「今日からここが…わたしの家」
直感で決めた。
思い切って家具も家電も買い替えたからお金はかかったけど…後悔はしていない。
問題はこの山積みの荷物の整理…
「先にお隣さんに挨拶行っちゃうか…」
今時挨拶しない人もいるみたいだけど。
一応、お世話になるかもしれないし。
そう思い用意したお茶菓子を手に持ちサンダルを履いて玄関を出る。
変な人じゃ無いといいな…
そんなふうに思いながらインターホンをおした。
ピーンポーン…
しばらくして中から人の気配がする
「…どちらさん?」
中から顔を覗かせたその人は、金髪で薄い眉毛の、関西弁のお兄さん。
ラフな格好だけど、どことなくおしゃれな感じ。
「あっ…今日から隣に引っ越してきたものです。これ、よかったらどうぞ…、荷物の整理するのでうるさかったしたらすみません」
「あ、わざわざ丁寧に。こっちもちょっとうるさいかもしれんけど、よろしくね。