放課後の廊下で、詩音と黎が言い合いをしているのが聞こえてきた。珍しく、ふたりとも声を荒げている。俺は何事かと足を止め、近くからその様子を見守ることにした。
「お前、なんでもテキトーに済まそうとすんじゃねーよ!」詩音が苛立った声で黎に言い放つ。
「テキトー?は?俺が?」黎は冷めた表情で詩音を睨み返し、低い声で返した。「それはお前が決めることじゃねぇだろ?」
「そういう態度が気に食わねぇって言ってんだよ!少しは協力ってもんを覚えろよ、黒崎!」詩音が一歩踏み出し、黎の胸ぐらを掴む勢いで睨む。その目は怒りに満ちている。
「……で、お前は何様のつもりだ?」黎は顔色ひとつ変えずに言い返すが、その声には少しだけ苛立ちがにじんでいる。詩音の視線を正面から受け止めて、まったく引かない。
二人の間には、まるで今にも爆発しそうな緊張感が漂っていた。
俺は思わず「おーい、詩音、黎、そこまでにしとけよ!」と声をかけたけど、ふたりは全く聞く耳を持たないみたいだ。
「神風は引っ込んでろ!」詩音が俺を振り返って一喝。俺も「お、おう…」と一瞬たじろぐが、それでも二人の間に割って入る。
「なんだよ、ただの言い合いかと思ってたけど、ここまで真剣になるなよ?詩音、落ち着けって!」俺は詩音の肩に手を置き、少しなだめるように言う。
詩音は俺の手を振り払って、一瞬冷静さを取り戻したかのようにため息をつく。そして、黎に向き直り、低い声でこう言った。「……ま、今回はこれで勘弁してやるよ。でも、次はねぇと思え。」
黎もそれに冷静に応じた。「別に、最初からお前に頼る気なんかねぇけどな。」
その一言にまた空気がピリッと張り詰めたけど、詩音は何も言わずにその場を離れていった。
俺は内心ハラハラしながらも、二人の間に何か火花が散っているのを感じた。
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