翌日、学校に着くと、まだ詩音と黎の喧嘩のことが頭に残っていた。二人の様子はどうなってるのか心配で、思わず教室を覗いてみる。
詩音はいつも通り明るい顔をしていたが、少し元気がないように見える。黎はというと、相変わらずクールな態度で、無言で本を読んでいた。お互いに気まずそうで、まるで昨日のことがまだ尾を引いているようだ。
俺はこの状況をどうにかしないとと思い、詩音に声をかけることにした。「おい、詩音。昨日のこと、まだ気にしてるのか?」
詩音は俺を見て、少し驚いた表情を見せたが、すぐに肩をすくめて「大丈夫だよ。あいつとはいつものことだから」と言った。しかし、その言葉には微妙な不安が滲んでいる。
「それならいいけど……黎もなんか暗い感じだったぞ?」俺が指摘すると、詩音は「まぁ、あいつはいつもそんな感じだし」と無理に笑った。
その時、教室のドアが開き、愛梨が入ってきた。彼女は冷静な表情をしているが、俺が知る限り、喧嘩のことに気づいているはずだ。「何かあったの?」と問いかける。
詩音が一瞬驚いた顔をしたが、「別に何も。俺たち、いつも通りだから」と言い返す。愛梨はその様子を見て、やや不満そうに眉をひそめた。
「そんなに無理して笑わなくてもいいんじゃない?どうせ、何か隠してるんでしょ」と愛梨が冷たく言うと、詩音は「別に隠してるわけじゃねぇよ!」と反論。
そのやり取りを見て、愛梨はふっと笑った。「何だ、仲いいじゃない。喧嘩するほど、仲がいいって言うしね。そんなこともあるんじゃないの?」
その言葉を聞いた瞬間、詩音は黙り込んでしまった。俺は思わず笑ってしまった。愛梨の一言が、詩音に効いたようだ。
「まあ、俺たち、喧嘩したって結局は友達だからな」詩音は少し気まずそうに言った。
黎もその瞬間、こちらに目を向け、「どうでもいいけど、また同じことを繰り返すつもりはねぇ」と静かに返す。
その言葉に詩音はクスッと笑い、「そっか、じゃあこれからもよろしくな」と言った。すると、愛梨は目を細めて「まぁ、少しは楽しんでやればいいじゃん」と呟いた。
少しだけ和らいだ雰囲気の中、俺たちは再びいつもの日常に戻っていった。友情って、こういうやりとりの中にあるものなんだなと感じる瞬間だった。