──────ノイズ視点──────
能力《勇者》。人を愛すことが出来ない、愛せない俺を皮肉るような能力。お人好しな勇者という存在からかけ離れた俺が。何故か授かった能力。
人間も、人外も含めてもなお、それはトップクラスに強かった。──────『チート』。『規格外』。『化け物』。様々な呼び名があり、されど、それに向ける感情は統一されている。
『恐怖』。その能力を見たものは瞬時に恐怖のどん底へと墜ちてゆく。その恐怖を克服するには死を恐れることなかれ。
「能力を使うのは久しぶりだからなぁ…ま、そのうち慣れるか。」
瞬時に体に熱が戻る。耳が治り、傷も瞬時に塞がる。視力が向上し、剣が軽くなるのを感じる。目に、光が灯る。その時、茶子の焦った声がようやく聴こえるようになる。そちらを見遣れば既に体は気に呑まれており、顔と、手だけで必死さを表す。
「──────この木は菓子の精神の核だからッッ!!!壊さないで!!」
そんな声が俺の耳に届く。その言葉を聞いた瞬間、俺が口にしたのは
「嘘だろ…?」
という簡潔な一言だった。まさか、この能力をまだまだ使う羽目になるとは。
茶子が完全に木に呑まれるとその気は攻撃を再開する。恨み言を飛ばしてくるが、もはや、今の俺には無意味だった。
勇者というのは、なぜだか知らないが、窮地に追い込まれれば追い込まれるほど強い。そんなカウンターのような強さもある。人類の人々が人外に対抗する唯一の人材として、俺の事をこう呼ぶ。
──────【希望の光】
と。
実際、その通りだ。間違いではない。俺は神に愛されすぎている。その年の神の寵愛を独り占めしたのでは、と思うほど。
俺が地をければたちまち俺を攻撃しようと根を張る木は動きを止め、俺が歩けば自然と道をあけ、そして、俺が命令すれば
「茶子を返せ」
──────無機物すらも言うことを聞く。
木は急速に萎み始め、ポンッと茶子を木から話す。そして、木はしぼみ、やがて美しい花を咲かせる。見たこともない花だった。
「あ”〜疲れだぁ…」
そう言いながら能力を解除する。俺が使う分には平気なのだが、いえもんが耐えられると聞かれれば頷くことは出来ない。ただの人間が、乗り越えられる力量では無いのだ。
それに、この能力にはデメリットもある。まず、ダメージを負わなければ【希望の光】を使うことは出来ない。また、その力の強さはダメージ量に比例する。ギリギリまで貯めれば貯めるほど強いのだ。それに、もちろんただの人間が使えるわけがない。──────『代償』。能力に見合った代償を支払わなければならない。俺は神の寵愛を受けているので平気だが…これ以上の話はやめておく。まだ、本題が残っているのだから。
「それじゃあ、茶子さん。殺される準備は?」
俺が尋ねれば茶子さんは諦めきった笑顔で言う。
「大丈夫ですよ。菓子の足枷になるつもりは無いので。」
その言葉を確認して、俺は──────美しい花を燃やす。
「茶子さん、あなたが死ねなかったのは、菓子の精神体の中に本体があったからじゃない?」
そう言いながらその美しい花が燃えるのを見る。草むらはかれ始め、花はドス黒い色へと変貌する。──────茶子さんの精神をより濃く反映されていたことが伝わる。
「…よくわかりましたね。あなた、本当にいえもんさんなんですかねw?まあ、もう、貴方をどうこうすることもできませんけど。」
ゴウゴウと燃える火はそれを反映するかのように茶子の体が燃えていく。足が灰になり、服が灰になり、羽が灰になる。
そうして、彼女はこの世界に《代償》を支払う。自身に関する記憶の抹消を──────
茶子さんが燃え尽きたのを確認して、俺は八幡さんから渡された耳飾りを頼りにこの世界から立ち去る。そろそろ俺はいえもんと変わった方が、とは思ったが。いえもんの精神状態が良くないことを確認し、このまま俺が肉体の主導権を握ることとなった。
耳飾りに従った道を進んでいるといかにもワープできそうなゲートを見つける。そのままそこに入り、俺は菓子の精神世界から飛び出す。
一瞬強い白い光に包まれ目を瞑る。そして、次に目を開いた時にはそこは俺たちの城であった。
菓子さんは既に起きており、涼し気な顔を浮かべている。めめさんは微妙な顔をしているが、それ以外は俺が帰ってきたことに喜ばずに、それどころからなんで立っているのか、なんて疑問すら抱いているように見えた。
その姿が物語る。《茶子》という存在はこの物語から削除されてしまったのだと。しかし、死神──────つまり神であるめめさんは覚えている、そんなところだろうか。
哀れで、可哀想な妖精。全てに手を伸ばしたがために、全てを失った。最後には、誰からも忘れられてしまう。可哀想だ。本当に。長年生きた妖精の末路が、これなのか。可哀想。可哀想。で、あっているのだろうか。可哀想。どんな気持ちなのだろうか。分からなかった。俺の、脳内で放送が流れる。
『妖精の絶滅条件を満たしました。おめでとうございます』
ここで切ります!いや〜茶子さん!脱落です!生存ルートも一応用意しましたが、まあ、SANチェックミスってしまったので無理でしたね…。ちなみに、茶子さん生存ルートは『いえもんさんが茶子さんと会話する』というのが絶対条件でした。今回はトゥルーエンド。円満にこの世を去ることが出来、尚且つ花を燃やすことで達成できます。このルートを行くにはラテさんやノイズなど、茶子さんと和解出来るほどの仲を持ち、優しい炎を扱えるかどうかです。
一応バッドエンドもご紹介
いえもんさん以外であり、八幡さんの耳飾りを受け取らず、茶子さんの未練が分からず、木を切ってしまった場合。
この場合は菓子さん、茶子さん、そして精神の中に入った人が出られず、尚且つ代償を支払うことが出来ず神の怒りをかい、その3人死亡+死後との真正面からの衝突です。
明日から投稿しませんので!また来週に会いましょう!おつはる!
コメント
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しっかりBADENDや…