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山の外れにある、崩れかけたホテル。
ガラスは割れ、雨風で錆びついた看板が、かすかに揺れていた。
いるまとらんは息を切らせながら、その建物の中へと身を潜めた。
🎼📢「……ここなら、しばらくは見つかんねぇ」
🎼🌸「……怖い場所なのに、なんか落ち着くね」
🎼📢「皮肉だな。
誰も寄りつかねぇ場所のほうが、安全ってわけか」
いるまは懐中電灯をつけ、埃まみれの廊下を照らす。
その光の中、らんの手が自然と伸びて、彼の袖をつまんだ。
🎼📢「……手、離すなよ」
🎼🌸「離さない。もう絶対に」
二人は二階の一室に入る。
薄いカーテンの隙間から月明かりが差し込み、
古びたベッドと割れた鏡だけが残っていた。
いるまは荷物を置き、傷のある肩を押さえながらため息をついた。
🎼🌸「……傷、まだ痛むでしょ」
🎼📢「平気だ。慣れてる」
🎼🌸「そうやって、すぐ平気って言う」
らんはカバンから包帯を取り出し、いるまのジャケットを脱がせた。
銃弾の傷跡がまだ生々しく、肌に走る古い痕も痛々しい。
🎼🌸「……ずっと、こんな風に傷ついてきたの?」
🎼📢「……まぁな。仕事だから」
🎼🌸「そんなの、仕事じゃないよ」
らんの手が震える。
それでも丁寧に包帯を巻きながら、小さく呟いた。
🎼🌸「……俺、あんたの傷、全部消してやりたい」
その声は、雨音よりも優しく響いた。
いるまは少しだけ目を伏せて、らんの髪に指を伸ばす。
🎼📢「……お前がそんな顔するなよ。
俺は、お前に泣いてほしくねぇ」
🎼🌸「泣いてない」
🎼📢「嘘つけ。……目、赤ぇぞ」
そう言って、いるまは軽くらんの頬を指でなぞった。
触れた瞬間、らんの身体がびくりと震える。
🎼🌸「……いるま」
🎼📢「……なんだよ」
🎼🌸「俺……あんたが怖かったのに、
今は……触れられると安心するんだ」
その言葉に、いるまの動きが止まる。
静かな間が流れ、彼はゆっくりと息を吐いた。
🎼📢「……そんな風に言われたの、初めてだ」
らんはそのまま、そっといるまの肩にもたれた。
鼓動の音が、静かな部屋に響く。
🎼🌸「……もう逃げるの、やめよう」
🎼📢「……どういう意味だ」
🎼🌸「逃げるっていうより……生きるために進もう。
怖い世界でも、あんたとなら大丈夫だから」
いるまは少し笑って、彼の頭を軽く撫でた。
🎼📢「……お前、ほんとに変わったな」
🎼🌸「あんたのせいだよ」
二人はベッドの端に腰を下ろし、
窓の外に見える街灯の明かりを見つめた。
沈黙の中で、いるまがぽつりと呟く。
🎼📢「……なぁ、らん。
もし俺がいなくなったら、どうする?」
🎼🌸「そんなこと言わないで」
🎼📢「仮の話だ」
🎼🌸「それでも嫌だ。
俺、いるまがいない世界で息するの、もう無理」
その言葉に、いるまはゆっくり目を閉じた。
少しの間、静かに息を整えてから――
🎼📢「……ありがとな」
短い言葉が、夜の空気に溶けていく。
そして、らんの肩を引き寄せた。
🎼📢「もう少しだけ、このままでいさせろ」
🎼🌸「……うん」
互いの体温を確かめ合いながら、
世界のすべてが消えていくような静けさの中――
二人はようやく、心の距離をゼロにした。
月明かりが割れた窓から差し込み、
いるまの腕の中で眠るらんの顔を、そっと照らした。
🎼📢「……もう誰にも、触らせねぇ」
その誓いは、誰にも聞こえない夜に消えていった。