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夜空に、一筋の光が閃いた。静寂の中で、風がわずかに揺れる。
遠い昔、この世界には二つの力が共存していた。
一つは、星々の力を用いた科学。高くそびえる塔や機械が動く都市は、星のエネルギーで成り立ち絶え間ない発展を続けていた。
もう一つは、大地と自然のエネルギーから生まれる魔法。精霊と魔術師たちが守護する深い森や山々には、自然の調和と共鳴する静かな力が流れていた。
二つの力は決して交わらない。科学の世界は機械と技術を信じ、魔法の世界は自然の秩序を守る。二つの力は、それぞれの領域で均衡を保っていた――長い間。
だが、その均衡はある日、微かに揺れ動いた。
夜空に不自然な裂け目が生まれ、星々が不気味に光を放つ。何かが蠢いている。二つの世界を隔てる見えない壁が、ゆっくりと崩れ始めたのだ。科学の力と魔法の力が、互いに干渉し合い、混ざり合おうとしている。その兆候に気づいた者は少なかった。
だが、一人だけ、その異変に呼応する者がいた。
「選ばれし者よ、目覚めよ…」
澄んだ夜空の下、静かな声が響き渡った。冷たくも力強いその声は、空を超え、時を越え、まだ何も知らぬ少年へと届いていた。
少年、エリオスは、村外れの丘で目を覚ました。だが、その夜、彼の運命が動き始めていたことに彼はまだ気づいていなかった。
エリオスは夢を見た。巨大な機械の塔が立ち並ぶ都市。どこまでも続く鋼鉄の道、そして機械兵が規則正しく巡回している。 「カシャ…カシャ…」とその足音だけが響く中、エリオスは途方に暮れていた。
「ここは…どこだ?」
異様な静けさと、冷たい金属の輝き。彼の心に染み入るような、奇妙な感覚があった。
突然、彼の背後から、誰かの声が響いた。
「お前は、境界を越える者だ…」
その声は静かだが、確かに彼の心に刻まれた。声の主は見えない。しかし、エリオスは無意識にその言葉の意味を考えていた。 次の瞬間、彼は浮遊感に包まれ、空高く引き上げられる。ふわりとした感覚が彼を包み込み、やがて星々の光の中に溶け込んでいく。
目を覚ましたとき、エリオスは激しく息を切らしていた。額に滲む汗を拭い、星空を見上げる。だが、その夢の感覚が未だに彼の体の中に残っていた。
「これは、ただの夢じゃない…」
彼の胸の鼓動が高まっていく。夢で見た都市と機械、そしてあの声。何かが近づいている。それが何かはまだわからない。しかし、その夜を境に、エリオスの運命は確実に変わり始めていた。
二つの世界の均衡が崩れつつある今、星と魔法の力は再び交わる。
その境界を越えられるのは、お前しかいない――エリオス。