テラーノベル
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ころさな
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二次審査が終わってから、一週間。
なつはスマートフォンを握りしめたまま、何度も画面を点けては消していた。
「まだかな……。」
落ち着かない。
学校の授業もほとんど頭に入らなかった。
放課後になり、自宅へ帰るとすぐにメールアプリを開く。
新着メール。
送り主は――SIXFONIA。
「……!」
震える手で開く。
『「PROJECT Re:Start」二次審査通過のお知らせ』
「……っ!」
思わず拳を握る。
「よし……!」
あと一つ。
あと一つ合格すれば、夢に手が届く。
◇◇◇
最終審査当日。
前回よりも人数は大きく減っていた。
二次審査を通過したのは、わずか二十人。
控室には、見覚えのある顔が並んでいる。
こさめ「やっほー!」
こさめが笑顔で手を振る。
こさめ「久しぶり!」
暇72「久しぶり。」
隣では、みことも優しく微笑んでいた。
みこと「お互い残れたね。」
暇72「うん。」
少しだけ安心する。
その時だった。
暇72「……。」
視線を感じる。
振り返ると、壁にもたれながら腕を組むいるまがいた。
一瞬だけ目が合う。
しかし、
いるま「ふん」
鼻で笑われ、すぐに逸らされる。
(……なんなんだよ。)
なつも負けじと目を逸らした。
「皆さん、お待たせしました」
スタッフが前へ出る。
「『PROJECT Re:Start』最終審査について説明します」
モニターに大きく文字が映し出される。
最終審査 ペアパフォーマンス
会場がざわついた。
「ペア……?」
「一人じゃないの?」
参加者たちが顔を見合わせる。
「こちらで指定したペアで、一曲披露していただきます」
その言葉に、嫌な予感がした。
「それでは、ペアを発表します」
一組ずつ名前が呼ばれていく。
「エントリーナンバー七番、雨乃こさめさん」
こさめ「はい!」
「エントリーナンバー十五番、みことさん」
みこと「よろしくね」
こさめ「よろしく!」
こさめとみことは笑顔で握手を交わした。
お似合いだ。
空気も柔らかい。
そう思った次の瞬間。
「エントリーナンバー二十八番、暇72さん」
暇72「はい。」
「エントリーナンバー二十九番、いるまさん」
「「……は?」」
二人の声が重なった。
「以上の二名でペアを組んでいただきます」
一瞬、会場が静まり返る。
暇72「ちょ、ちょっと待ってください!」
なつが思わず声を上げた。
暇72「なんでこいつとなんですか!?」
いるま「俺も聞きてぇよ」
いるまも眉をひそめる。
暇72「こんなの無理です」
いるま「俺も」
スタッフが困ったように笑う。
「審査の一環ですので…」
暇72「いや、でも……!」
「嫌なら辞退していただいても構いません」
その一言で、二人は黙った。
辞退。
つまり、ここで夢を諦めろということ。
「……」
なつは唇を噛む。
いるまも小さく舌打ちをした。
レッスンスタジオ。
課題曲の音源が流れる。
「まずは立ち位置を決めましょう」
ダンストレーナーが声を掛ける。
いるま「じゃあ俺センター」
いるまが当然のように言う。
暇72「は?」
なつの眉が吊り上がる。
暇72「なんで?」
いるま「ダンスは俺の方が上手い」
暇72「歌は俺の方が上手いけど?」
いるま「だから?」
暇72「センターは歌だろ」
いるま「いや、ダンスだ」
暇72「歌」
いるま「ダンス」
暇72「歌!」
いるま「ダンス!」
「はいストップ!!」
トレーナーが頭を抱えた。
「君たち、まだ十分しか経ってないよ…」
練習は散々だった。
いるま「動き遅い」
暇72「ラップ走りすぎ」
いるま「歌い方合わせろ」
暇72「そっちこそ」
言い合いばかり。
一度も目を合わせない。
何度やっても噛み合わない。
見かねたLANが二人の前へ立った。
LAN「二人とも」
暇72「はい」
いるま「……」
LAN「相手を倒そうとして歌ってない?」
二人は黙る。
LAN「アイドルは、一人じゃステージは作れない」
LANは静かに続ける。
LAN「大事なのは、自分が目立つことじゃない」
「二人で、一つのステージを作ること」
その言葉が胸に刺さる。
けれど。
「……」
納得は、できなかった。
◇◇◇
そして迎えた、本番当日。
番組のスタジオには、大勢の観客が入っている。
歓声。
拍手。
スポットライト。
「次のペアです!」
スタッフの声。
「エントリーナンバー28番、暇72。」
「エントリーナンバー29番、いるま。」
二人はステージ袖に並ぶ。
沈黙。
数秒後。
いるま「……足引っ張んなよ」
いるまがぼそっと言う。
暇72「それはこっちのセリフ」
なつも言い返す。
暇72「でも、」
なつは前を向いたまま、小さく息を吐く。
暇72「ここだけは」
いるま「ああ。」
いるまも短く返す。
いるま「受かるために」
二人は同時にステージへ飛び出した。
最悪の相性。
最悪の第一印象。
それでも今だけは。
同じ夢を追うライバルとして――。
音楽が鳴り響いた。
眩しいスポットライトが二人を照らす。
客席から拍手が起こる。
二人はステージ中央へ歩み出た。
しかし、その表情は対照的だった。
なつは静かに深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。
いるまは片手でマイクを回しながら、堂々と前を見据えていた。
イントロが流れ始める。
ダンスパート。
最初の立ち位置から二人は同時に動き出した。
(……やっぱりうまい)
なつは横目でいるまを見る。
身体のキレが違う。
一歩一歩の重心移動。
ターンの美しさ。
どれを取っても、自分より上だった。
(負けられない)
歌で取り返す。
そう決めていた。
◇◇◇
一方でいるまも思っていた。
(ダンスは俺が引っ張る)
(歌は……)
隣から聞こえる息遣い。
なつの歌声は、リハーサルの時よりも何倍も伸びやかだった。
サビに入る。
なつが真っ直ぐ前を向いて歌い始める。
その瞬間だった。
客席の空気が変わる。
感情が、そのまま歌声になって届いてくる。
切ない歌詞。
優しいメロディー。
その全てを、自分のものにして歌っていた。
審査員席のLANも、思わず目を細める。
(この子の歌は……)
(人の心を動かす)
そして間髪入れず、いるまのラップパート。
「――♪」
低く響く声。
鋭いリズム。
空気を切り裂くようなフロウ。
会場が一気に熱を帯びる。
(すごい……)
こさめが思わず呟く。
こさめ「鳥肌立った…」
みことも小さく笑う。
二人の歌い方は正反対だった。
なつは感情で魅せる。
いるまは勢いで魅せる。
普通ならぶつかるはずなのに、不思議と曲の中では噛み合っていた。
二人が背中合わせになる。
目は合わせない。
それでも、タイミングはぴったりだった。
曲が終わる。
数秒間の静寂。
そして――
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!」
スタジオ中が拍手に包まれた。
観客が立ち上がる。
審査員席からも自然と拍手が起こる。
LANは笑みを浮かべながらマイクを手に取った。
LAN「ありがとうございました。」
二人は頭を下げる。
LAN「正直、練習を見た時はどうなることかと思ったけど…」
客席から笑いが起こる。
なつといるまは苦笑いを浮かべた。
LAN「でも、ステージに立った瞬間、お互いの良さをちゃんと引き出せていました」
LAN「暇72くん。」
暇72「はい」
LAN「君の歌には、人を惹きつける力があります。感情を乗せるのが本当に上手でした」
暇72「ありがとうございます!」
LAN「そして、いるまくん。」
いるま「はい」
LAN「ラップもダンスも圧倒的でした。ステージを支配する力があります」
いるまは照れくさそうに小さく頭を下げた。
LAN「ただ……。」
LANは二人を見つめる。
LAN「まだお互いを信用してないね」
その一言に、二人の肩がぴくりと動く。
LAN「今はライバルでいい」
「でも、もし同じグループになったら」
少し笑って続けた。
LAN「最高の相棒になれる可能性を感じたよ」
二人は顔を見合わせる。
「……」
「……」
数秒後。
いるま「いや、それはない」
暇72「絶対ない」
また声が重なった。
スタジオに笑いが広がる。
その様子を見ながらLANは、小さく笑った。
(この二人なら――)
(きっと、面白いグループになる。)
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コメント
5件
見るの遅れてごめんねぇ( >ㅿ人) こさみこは相性いいやろなw チア組の不仲結構好きかも やっぱめー神だよね? めっちゃおもろい(≧∇≦) 続き楽しみ! ♡500にしといたよー!
更新ありがとうっっ! 2人ともやっぱすごすぎる…っ!!
いやー、最高だったわ!まさか最悪のペアであれだけのステージができるとは思わなかった。なつの感情の乗った歌といるまの圧倒的なラップ&ダンス、正反対なのにステージ上で噛み合う瞬間がアツすぎた🔥 背中合わせで目は合わせないのにタイミングがピッタリのあの描写、めっちゃ好き。LANの「最高の相棒になれる可能性」って言葉、完全に次が気になる展開じゃん!次話も楽しみにしてる!!