テラーノベル
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夜の研究室を出て、人気のなくなったキャンパスを歩く。
冷たい風にコートの襟を立てながら、悠真はため息をついた。
(最近……妹ちゃんに、会えてないな)
忙しさを言い訳にして、亮の家に顔を出すことも減っていた。
それでもふとした瞬間に思い出すのは、浴衣姿で恥ずかしそうに笑った咲の顔。
胸の奥が、不意に熱を帯びる。
「……俺にとっては、ただの“妹ちゃん”じゃなくなってきてる、のか」
その言葉を吐き出すように小さく呟いた。
認めてしまえば、もう後戻りできない気がして――けれど、否定もできなかった。
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