テラーノベル
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数日後の土曜日。
玄関のチャイムが鳴って、咲が出るとそこに立っていたのは悠真だった。
「……悠真さん」
思わず声が弾む。
夏祭りの夜以来、しばらく顔を見ていなかった。そのせいか、ほんの数週間ぶりなのに随分長い時間が過ぎた気がした。
「よ。……妹ちゃん、元気そうだな」
いつも通りの笑顔なのに、胸がぎゅっとなる。
「お、お兄ちゃんなら部屋にいます。呼んできますね」
そう言って振り向こうとしたとき――
「妹ちゃん」
呼び止められて、心臓が跳ねる。
「……受験、大丈夫か? 無理してない?」
その一言がやけに優しくて、思わず胸の奥が熱くなる。
「……はい。大丈夫です」
答えながらも、目が合った瞬間、どうしてこんなに苦しいんだろうと感じた。
――“久しぶりに会えた”ただそれだけで、胸いっぱいになるなんて。
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