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《us視点》
どう…しようか……
このまま醜く足掻いて散るよりも潔く綺麗な姿のまま消えてしまいたい。
そう思うのは俺のエゴだろうか?
部屋の一角に持ち込んだ本の山を読みながら思いに更ける。
俺は読みかけの本を顔に乗せた。
今の俺はどっちつかずの中途半端な人間だ。
想っているのに伝えられなくて、想いを断ち切ることもできない。
理性的にみえて唯怖がっている弱虫だ。
繰り返し思い悩む自分が嫌いで、苦しくなる心が痛くて現実から目を背けていたい自分に負けた敗北者。
嫌いだと思いながら俺は本へ逃げていたのに、俺は、本の内容にまで心を苦しめられていた。
この本に書かれた話を素直に受け止めきれなかったのだ。
きっと心が暗く染まってしまっているんだろう。
そう思うと心は更に深い黒を描いていった。
俺が読んでいた本は最近よく目にする主人公最強系のジャンプ作品。
バトルシーンで主人公が覚醒したり、相棒の男と怒涛の快進撃を見せたりする、とても感動する内容だった。
けれど、俺が受け止めきれない問題は敵側になったと描かれたある男のイラスト。
俺の想い人に似ているのだ。
この男が登場したシーンから俺の心は荒みを進行させていった。
元々持っててはいけないと隠すつもりで悩んでいたのに、その想いがはっきりと主張してきて、加速させてしまう。
内容の中でも特に問題だと言えるシーンは、主人公に制裁を与えるシーンだった。
その瞬間はあまりにも残酷で、冷徹で、人と呼んでいいのかも分からないほどに惨い光景だった。苦しみ、踠く主人公をこけにし、彼が我が道を往く、とても凄惨なシーンだ。
そう、それはあまりにも惨たらしく、酷いシーンなのだ。
けれど…俺は その姿ですら
“美しい”
そう感じてしまった。
彼になら愛されずとも俺を見て、殺して欲しい。彼の人生の足しとなるのならその要員に含めて欲しい。
彼のためになるならば…。
彼の記憶に残るのならば…。
そう、俺の心は荒み、黒く、ドロッとした深い感情がブクブクと底から沸き上がって覆い尽くしてしまった。
こんな感情はストーリーの彼だけでなく想う彼も同様。
友達に対して向けていい感情じゃない。
そう理性を持つ心の方は考えるが、彼を想う心がどんどん醜いものとして悪化して上書きされていた。
そもそも、これを恋と呼ぶのだろうか…
友達愛とは違うこの感情は 闇と化していく。
こんな感情を何処に捨ててしまえるのだろう。
また溢れる感情が苦しくて、俺は読みかけの本を積み上げた本の山に置いた。
また1つ大きなため息をつく。
気持ちも切り替えたくて、キッチンでコーヒーを作るが、最中も闇が考察を止めさせてくれない。
もし、歪んで、醜いこの感情が俺が彼を思う気持ちとしてあることが暴かれたら?
こんなこと、彼の前には晒せないし、気づかれたくもない。けれど、気づかれてしまったのならば?
そう、なってしまったなら…
それならば彼の声で気持ち悪いと言われて、彼の目でゴミを見るような視線を送られてしまうのだろう。
けれど、そんな目でもいいから彼の目に残りたい。彼の手で殺されたい。 彼の手で俺の人生を壊して欲しい。
そう…思ってしまう。
俺はどうやらもう既に一般的な恋という感情はないらしい。
どうしたらこの感情を捨てて普通の恋を想えるのだろうか。どうしたら友達の頃の気持ちへ戻れるのだろうか。
そう目の前のドバドバとコーヒーカップ溢れ出すコーヒーを見ながら思う。
us「わ、やっちゃた…」
溢れた部分を拭き取って、コーヒーを先程の本の山の部屋へ持っていく。
また本を開くと別の物語を読み進めた。
切り替えきれぬ気持ちのまま一つ一つ文字を読んでいく。
夜の6時半
気づけば外は暗くなっていて、本の隙間から見えた窓からの光が消えていた。
部屋の明かりが俺を照らす。
俺は夕飯の準備をしようと本を片付け始めた。
全ての本を片付け終えたころ、玄関からピ~ンポ~ンというチャイム音が鳴る。
身に覚えのないチャイム音に心が恐怖心を覚えた。
慎重にドアを開けに行く俺。
無言でドアを開いた先には…
「よ!来ちゃったw」
なんとkyがいた。
あまりの衝撃過ぎに言葉が出ない。
やっと絞り出せた言葉が「こわ…」だった。
彼は散歩ついでに遊びに来たらしい。
目をぱちくりさせながら立ち往生する。
「うっしー、家上げて~」
彼はこちらの都合などお構い無しに言ってきた。
その顔は楽しげで、笑顔を浮かべている。
俺がそれを断れるはずもなく、認容の意を伝えると
「サンキュー、お邪魔しま~す」
彼は中へ入っていった。
彼が俺の空間を空けてソファーに座る。
俺は飲み物を準備して彼の隣に座った。
彼の前ではいつも通りに、ノリの良い友達。ポジションで…
ぐるぐると頭を回転させ、平常心を保とうとする。
正直、飲み物を飲む手が止められない。
kyは相変わらず横顔も整っていて、チラッと見る度に心が跳ねる。
こういう思いを確認するとやはり俺はkyが恋愛的に好きなんだと自覚できた。
この感覚がいいのだと心に言い聞かせながら想う気持ちを塗り替えようと杯を進める。
暫く2人の間に弾む話もなく、沈黙に近い空間が広がった。
kyが息を深く吸った音が聞こえたと思えば 俺は音の方を確認する。
kyは喋りだそうとする口を携えて此方を真剣に見つめていた。
!?
その視線に吃驚する。
何?俺、何かやらかしちゃったっけ?
見てたのバレた??
頭の中であれかこれかと騒ぐ声を出していると
kyは俺の肩を掴んで話し始めた。
ky『ねぇうっしー、俺のこと好きでしょ?』
us「え?いや…なんで…なんでそんなこと…」
確信を持つような声に狼狽える。
『じゃあ嫌い?』
「いや、嫌いではねぇけど…」
ズルい聞き方だと思いながら言葉を返す。
『じゃあ好き?』
「……まぁ…好き//」
『ねぇうっしー…』
「何…ッ!?」
不意にキスをされた。
突然のことで頭がパニックになる。
『ッうっしー…俺もうっしーのこと好きだよ』
「!?…んハッ…んぅッ//…うっそ……//」
衝撃の言葉に心臓がバクバクと鳴る。
彼が口を離して、口に広がる彼の温もりが口外へ逃げていった。
『ねぇうっしー…本気で俺、うっしーのことが好き!!』『俺と付き合ってほしい』
真剣な眼差しで話してくれる彼に涙が溢れそうだ。
俺は必死に止めようとただ無言になった。
沈黙をつくってしまう。
kyは心配そうに顔を窺ってくる。
嬉しい…//
覚悟を決めて彼の顔へと頭を上げる。
kyは心配そうな顔で不器用に、にこりと笑った。
彼の顔を掴み、おでこにキスをする。
不意を取られた彼は目を大きく見開き、おでこに手をおいて固まった。
「嬉しい。俺もキヨが好きだよ//… 」
「だから………」
「俺を殺して?」
そう紡いだ俺の言葉に彼は言葉を飲む。
俺自身も驚く言葉だ。けれど俺の想いの本質はやはりこの醜い感情なのだと享受する。
彼は苦い感情を喰らっているのか眉間にシワを寄せ、口をギュッと閉じて憐れむ視線を向けてきた。
『また、間に合わなかった…』
そう言った彼はキッチンへ向かい、包丁を持ってきた。
あれ?俺、包丁の場所教えたことあったっけ?
それから語らない彼は涙を溜めた。
『……っ…じゃあ、またな』
包丁を力一杯握るky
「うん、大好きだよky♡ありがとう」
よくある漫画のグサッと表現されることが起こる。
内臓を切り、奥へと刺さっていく。
酷い痛みが体内を体外を覆い尽くす。けれど心は 幸福だと感じ、満たされた気がした。
これが俺の最期。
『ごめんな…また、○っちゃった』
赤くなった包丁を握り、泣き崩れるky。
『今度こそ、ちゃんと相思相愛で歪む前に俺の気持ち伝えるから…!』
そう最後に残すと、彼は光に包まれて何処かへ消えていった。
「今日は新作の本が買えたし、読めないままの本まだあったよな」
そう言いながら本の山をつくる牛沢。
ピ~ンポ~ン
彼は身に覚えのないチャイムに無言でドアを開けた。
正直、今から本を読むところだったので煩わしい。そう思いながら彼は訪問者に目を向ける。
『よ!来ちゃったw』
「こわ…」
そう一言を残して、胸を高鳴らせる彼。
訪問者は図々しく上がりたいと言うので容認の意を伝えると、彼は飲み物を作って訪問者の元へと運んだ。
訪問者は彼が座るやいなや真剣な眼差しを彼へ向ける。
ゴクリと息を飲む彼に口を開く訪問者。
『us、俺、usのことが好き』
『俺と付き合って!』
「喜んで!嬉しい//俺、、kyのこと好き… だから……」
「宜しくお願いします//」
『あぁ…やっと……』
恋の成熟を迎えた彼らは愛し合い、やっと共に生きる未来を手に入れることができた。