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まる。
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『それでも、君は春に来なかった』
君がいなくなった日から、
私の時間は止まったままだ。
時計は動いてる。
カレンダーもめくられていく。
でも、私の中の季節だけが冬に置き去りなった。
最後に君を見たのは駅だった。
人が多くてうるさくて、なのに、
君の声だけがやけに静かに聞こえた。
「またね」
『うん』
たったそれだけ。
抱きしめもしなかった。
引き止めもしなかった。
“いつも通り“を信じすぎた。
次の日から君のいない世界が始まった。
スマホを開くたび、
通知が来ていないことに安堵して、
その直後、息ができなくなった。
来ないってわかってるのに待ってしまう自分が1番嫌いだった。
「〇〇ちゃん。いらっしゃい笑」
彼のお母さん。
今日は久しぶりに彼の部屋に来た。
何も変わってない。
君の部屋は、あの日のまま。
脱ぎっぱなしの上着。
途中まで飲んだペットボトル。
読みかけの本。
どれもが「すぐ戻る人」の痕跡で、
「もう戻らない人」の証拠だった。
私は片付けられなかった。
だって、
片付けたら本当に君が終わってしまう気がしたから。
周りは言う。
「時間が解決するよ」
「前を向かないと」
でもね、
前ってどこ?
君がいない未来を、
どうやって「前」って呼べばいいの?
駅に行く癖だけが残った。
理由はない。
ただそこに行けば
君が消えた瞬間の手前に戻れる気がしたから。
同じベンチ。
同じ景色。
同じ風。
違うのは、
隣に座るはずの君だけ。
冬が来た。
あの日と同じ雪。
白くて冷たくて、
全部を覆い隠す。
私はベンチで膝を抱えて、
初めて君の名前を声に出した。
『__、、』
誰もいないホームで。
呼んでも返事はなかった。
それでも、
喉が痛くなるまで呼んだ。
いなくなったって、返事がないって、
頭ではわかってるのに、
心だけがそれを拒否する。
それが、こんなに苦しいなんて知らなかった。
春が来た。
駅前の並木が、
何事もなかったみたいに花を咲かせた。
その瞬間、胸が壊れた。
君がいなくても世界は続く。
それが、どうしようもなく残酷だった。
君と見たはずの春。
君と来るはずだった未来。
全部、私だけに押し付けられた。
その日、私は気づいた。
私が待っているのは君じゃない。
“君がまだいる世界“だった。
もう君はいない。
わかってる。
わかってるのに。
それでも私は隣の席をあける。
誰かが座ろうとすると、
無意識に『そこ、空いてますよ』って言ってしまう。
君の席だから。
夜、1人で泣く。
誰にも見せない。
だって、泣き終わったあとも
この痛みが消えないことを知っているから。
それでも朝は来る。
春は来る。
私は生きている。
それが1番辛い。
君はもうどこにもいないのに。
私は今日も、
君を想いながら呼吸をしている。
会えなくても、
声が聞こえなくても、
君は私の中でずっと春を待っている。
そして私は、
君が来なかった春を何度でも生き直す。
BTS-SpringDay