テラーノベル
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リンの瞳が開いた瞬間——
黒い煙みたいだった“苦塊(くかい)”が、まるで怒ったみたいに荒れ狂った。
ドロドロと壁を溶かし、天井を黒く染め、塔ごと飲みこもうとしている。
「のあちゃん、下がって!!」
ミルが私を抱き寄せるようにして後ろへ押しやった。
その動きはいつものミルよりずっと速い。
まるで空気そのものがミルの味方をして流れているみたいだった。
「ミル、これ……苦塊って、こんなに大きいんだ……!」
「今までリンが眠ってたから、ずっと力が戻り続けてたんだよ。
……こんなに肥大してるなんて」
ミルの声は震えていた。
だけど、目だけは“戦う覚悟”に変わっていた。
「……ここ、どこ……?」
リンはまだぼんやりしていて、自分がどうして眠っていたのかもわかっていないみたいだった。
「リン! 起きてくれてありがとう! でも今はまず——」
「違うよ、ミル」
リンはかすれた声で言った。
「“あれ”を止めるのは……ぼくじゃない」
「え? どうして?」
「ぼくの中の苦さが形になったのが……あいつ。
だから……ぼくが力を使えば使うほど……もっと強くなっちゃうんだ……」
私は息を飲んだ。
(リンが力を使うほど、敵が強くなる……?
そんなの、どうやって戦うの!?)
リンは私をまっすぐ見つめた。
「……のあ。
ぼくの声が届いたのは、きみだけだった」
「えっ、私?」
「きみの心は……すごく混ざってる。
甘いことも、苦いことも、両方ある。
でもどっちも否定してなくて……ちゃんと“自分のもの”にしてる」
リンは苦しそうに胸を押さえた。
「だから……きみの言葉は、ぼくの“苦さ”にも届いたんだと思う」
“苦さにも届く声”。
そんなもの、自分で意識したことなんてなかった。
(私なんて、ただの……フツーの人なのに)
でも、その“フツー”の中に甘いことも苦いこともあるのなら——。
コメント
1件
今回も楽しいお話ありがとうございました!!この作品も最終ですかね?長かったような、早かったような気がします笑続き楽しみにしてます!