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しめさば
#主人公最強
森の中に静寂が戻った。地面には、真っ二つになったゴブリンの死体。
「……」
天城ユウキは、しばらくその場から動けなかった。
「……俺が倒したの?」
さっきまで普通の高校生だった。
喧嘩すらしたことがない。
そんな自分が、今――
モンスターを一撃で倒した。
「いやいやいや……」
ユウキは手に持っている剣を見つめた。
黒い刀身。
赤い紋様。
まるで生きているように、かすかに脈打っている。
その時だった。
『……主よ』
「うわぁ!?」
突然、声が頭の中に響いた。
ユウキは慌てて周りを見回す。
「だ、誰!?」
『慌てるな』
『我だ』
「え?」
ユウキはゆっくりと剣を見る。
「……まさか」
『その通り』
『我は魔剣』
ユウキは思わず叫んだ。
「剣がしゃべったぁ!?」
『少し静かにしろ』
『魔物が寄ってくる』
「え、マジ?」
ユウキは慌てて口を押さえた。
『まったく……落ち着きのない主だ』
「いや普通驚くでしょ!」
ユウキはツッコミを入れる。
「剣がしゃべるとか初めてなんだけど!」
『当然だ』
『魔剣は普通の人間には扱えない』
「そうなの?」
『うむ』
剣は少し誇らしげに言った。
『魔剣とは意思を持つ武器』
『選ばれし者しか手にできない』
「へぇ……」
ユウキは改めて剣を見る。
「じゃあ俺、選ばれたってこと?」
『その通りだ』
『主には魔剣適性がある』
『しかも――∞(無限)だ』
「∞ってやっぱヤバいやつ?」
『非常にヤバい』
即答だった。
「え」
『普通の人間は魔剣を一本扱えるだけでも奇跡』
『だが主は違う』
『すべての魔剣を扱える』
ユウキは固まった。
「全部?」
『そうだ』
『世界には多くの魔剣が存在する』
『炎の魔剣』
『雷の魔剣』
『闇の魔剣』
『神殺しの魔剣』
「最後怖い!」
ユウキは思わず叫んだ。
『それらすべてを扱えるのが主だ』
「いやいやいや」
ユウキは頭を抱えた。
「俺、さっきまで落ちこぼれ高校生なんだけど?」
テスト最下位。
運動苦手。
友達少ない。
そんな自分が――
世界最強の力?
『だからこそだ』
剣は静かに言った。
『主はまだ何も知らない』
『だからこそ選ばれた』
「……?」
『力に溺れない者』
『それが主だ』
ユウキは少し黙った。
そんな立派な人間じゃない。
でも。
「……でもさ」
ユウキは小さく笑った。
「落ちこぼれの人生よりは、面白そうだ」
剣が少し沈黙する。
『……変わった主だ』
「そう?」
『普通の人間は恐れる』
『だが主は楽しんでいる』
ユウキは肩をすくめた。
「だってもう死んだし」
「どうせなら楽しむよ」
すると剣は言った。
『主よ』
「ん?」
『名を聞こう』
「名?」
『我の主の名だ』
「あ、そうか」
ユウキは言った。
「俺は天城ユウキ」
「高校生……だった」
『ユウキか』
剣は少し考えたように言う。
『良い名だ』
「そっちは?」
『我の名か』
剣の声が少し低くなる。
『我は魔剣――』
『グラム』
「グラム?」
『古き魔剣の名だ』
ユウキは少しワクワクしてきた。
「なんか強そう」
『実際に強い』
その時だった。
ガサガサガサ!!
森の奥から音がする。
「!?」
ユウキは身構えた。
木の影から現れたのは――
ゴブリン。
一体ではない。
二体。
三体。
四体。
「増えてる!!」
『言っただろう』
『騒ぐから寄ってきた』
「今それ言う!?」
ゴブリンたちは棍棒を振り上げる。
「ゴブァ!!」
「ゴブゴブ!!」
完全に囲まれた。
ユウキは剣を握る。
「グラム!」
『うむ』
「どうすればいい!?」
『簡単だ』
剣が言う。
『振れ』
「え」
『主はすでに魔剣と契約している』
『力は流れている』
『あとは――』
『斬るだけだ』
ゴブリンが襲いかかる。
「ゴブァァ!!」
ユウキは叫んだ。
「うおおおお!!」
剣を振る。
黒い光が走る。
ズバッ!!
ズバッ!!
ズバァァッ!!
一瞬だった。
四体のゴブリンが同時に倒れた。
森が静かになる。
「……」
ユウキは呆然と立っていた。
「俺……強くない?」
『強い』
グラムは即答した。
『主はすでに普通の人間を超えている』
ユウキの心臓が高鳴る。
落ちこぼれだった自分。
何もできなかった人生。
でも今は違う。
「……なんか」
ユウキは空を見上げた。
青い空。
広い世界。
「めちゃくちゃワクワクしてきた」
グラムが言った。
『ならば進め』
「え?」
『この森を抜ければ街がある』
「街!?」
『そこで主の物語は本格的に始まる』
ユウキはニヤッと笑った。
「よし」
剣を肩に担ぐ。
「行こうぜ、グラム」
『うむ』
こうして――
落ちこぼれ高校生だった少年は、
魔剣を手に、
異世界の冒険へと歩き出した。
だが彼はまだ知らない。
この先の街で、
運命を変える出会いが待っていることを――。