テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
森の中に静寂が戻った。地面には、真っ二つになったゴブリンの死体。
「……」
天城ユウキは、しばらくその場から動けなかった。
「……俺が倒したの?」
さっきまで普通の高校生だった。
喧嘩すらしたことがない。
そんな自分が、今――
モンスターを一撃で倒した。
「いやいやいや……」
ユウキは手に持っている剣を見つめた。
黒い刀身。
赤い紋様。
まるで生きているように、かすかに脈打っている。
その時だった。
『……主よ』
「うわぁ!?」
突然、声が頭の中に響いた。
ユウキは慌てて周りを見回す。
「だ、誰!?」
『慌てるな』
『我だ』
「え?」
ユウキはゆっくりと剣を見る。
「……まさか」
『その通り』
『我は魔剣』
ユウキは思わず叫んだ。
「剣がしゃべったぁ!?」
『少し静かにしろ』
『魔物が寄ってくる』
「え、マジ?」
ユウキは慌てて口を押さえた。
『まったく……落ち着きのない主だ』
「いや普通驚くでしょ!」
ユウキはツッコミを入れる。
「剣がしゃべるとか初めてなんだけど!」
『当然だ』
『魔剣は普通の人間には扱えない』
「そうなの?」
『うむ』
剣は少し誇らしげに言った。
『魔剣とは意思を持つ武器』
『選ばれし者しか手にできない』
「へぇ……」
ユウキは改めて剣を見る。
「じゃあ俺、選ばれたってこと?」
『その通りだ』
『主には魔剣適性がある』
『しかも――∞(無限)だ』
「∞ってやっぱヤバいやつ?」
『非常にヤバい』
即答だった。
「え」
『普通の人間は魔剣を一本扱えるだけでも奇跡』
『だが主は違う』
『すべての魔剣を扱える』
ユウキは固まった。
「全部?」
『そうだ』
『世界には多くの魔剣が存在する』
『炎の魔剣』
『雷の魔剣』
『闇の魔剣』
『神殺しの魔剣』
「最後怖い!」
ユウキは思わず叫んだ。
『それらすべてを扱えるのが主だ』
「いやいやいや」
ユウキは頭を抱えた。
「俺、さっきまで落ちこぼれ高校生なんだけど?」
テスト最下位。
運動苦手。
友達少ない。
そんな自分が――
世界最強の力?
『だからこそだ』
剣は静かに言った。
『主はまだ何も知らない』
『だからこそ選ばれた』
「……?」
『力に溺れない者』
『それが主だ』
ユウキは少し黙った。
そんな立派な人間じゃない。
でも。
「……でもさ」
ユウキは小さく笑った。
「落ちこぼれの人生よりは、面白そうだ」
剣が少し沈黙する。
『……変わった主だ』
「そう?」
『普通の人間は恐れる』
『だが主は楽しんでいる』
ユウキは肩をすくめた。
「だってもう死んだし」
「どうせなら楽しむよ」
すると剣は言った。
『主よ』
「ん?」
『名を聞こう』
「名?」
『我の主の名だ』
「あ、そうか」
ユウキは言った。
「俺は天城ユウキ」
「高校生……だった」
『ユウキか』
剣は少し考えたように言う。
『良い名だ』
「そっちは?」
『我の名か』
剣の声が少し低くなる。
『我は魔剣――』
『グラム』
「グラム?」
『古き魔剣の名だ』
ユウキは少しワクワクしてきた。
「なんか強そう」
『実際に強い』
その時だった。
ガサガサガサ!!
森の奥から音がする。
「!?」
ユウキは身構えた。
木の影から現れたのは――
ゴブリン。
一体ではない。
二体。
三体。
四体。
「増えてる!!」
『言っただろう』
『騒ぐから寄ってきた』
「今それ言う!?」
ゴブリンたちは棍棒を振り上げる。
「ゴブァ!!」
「ゴブゴブ!!」
完全に囲まれた。
ユウキは剣を握る。
「グラム!」
『うむ』
「どうすればいい!?」
『簡単だ』
剣が言う。
『振れ』
「え」
『主はすでに魔剣と契約している』
『力は流れている』
『あとは――』
『斬るだけだ』
ゴブリンが襲いかかる。
「ゴブァァ!!」
ユウキは叫んだ。
「うおおおお!!」
剣を振る。
黒い光が走る。
ズバッ!!
ズバッ!!
ズバァァッ!!
一瞬だった。
四体のゴブリンが同時に倒れた。
森が静かになる。
「……」
ユウキは呆然と立っていた。
「俺……強くない?」
『強い』
グラムは即答した。
『主はすでに普通の人間を超えている』
ユウキの心臓が高鳴る。
落ちこぼれだった自分。
何もできなかった人生。
でも今は違う。
「……なんか」
ユウキは空を見上げた。
青い空。
広い世界。
「めちゃくちゃワクワクしてきた」
グラムが言った。
『ならば進め』
「え?」
『この森を抜ければ街がある』
「街!?」
『そこで主の物語は本格的に始まる』
ユウキはニヤッと笑った。
「よし」
剣を肩に担ぐ。
「行こうぜ、グラム」
『うむ』
こうして――
落ちこぼれ高校生だった少年は、
魔剣を手に、
異世界の冒険へと歩き出した。
だが彼はまだ知らない。
この先の街で、
運命を変える出会いが待っていることを――。