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Irregular Casino

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Irregular Casino

6 - 第6話

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38

2025年05月27日

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ある日、《Irregular Casino》のホール。

いつものように初兎はバニー衣装で客と会話していた。


「いやぁ、今日の君は特に可愛いねぇ。耳、ちょっと触っていい?」


「えっ、だ、ダメですってば。僕、仕事中なんで……あはは、ほんとにダメ!」


控えめに笑いながらかわす初兎――しかしその姿を、少し離れたバーカウンターでIfはずっと見ていた。


グラスを拭く手が止まり、視線は鋭くなる。


(何あの男……初兎に気安く……笑って……触れようとして……)


次の瞬間、Ifは静かに立ち上がり、ゆっくりと初兎の元へ歩いていった。


「……初兎、ちょっと来い。今すぐ」


「えっ、まろちゃん?」


客の前だろうが構わない。

Ifは初兎の手首を取って、強引に裏手の通路へ引きずり込む。


「まろちゃん、なに、どうしたの? お客さんまだ――」


「……他の男に笑いかけるな」


その一言に、初兎は目を瞬かせた。


「えっ?」


「笑うなって言ってんだ。他の男に、軽く触られて、それで“あはは”なんて、ふざけんなよ」


「……まろちゃん、嫉妬……してるの?」


「してるよ。誰にだってしてる。お前は俺のだろ? なんで他の奴に、気を許してんだよ」


言い終わったIfは息を荒くし、初兎から目を逸らす。

まるで自分の感情に自分で驚いているように。


初兎は小さくため息をついて、そっとIfの胸元に顔をうずめた。


「……怒ってくれて、ちょっと嬉しい」


「は?」


「だって……僕のこと、本気で好きじゃなきゃ、そんなふうに言わないでしょ?」


「……バカ。そういうとこもムカつくくらい好きなんだよ」


「うん、僕も好き。……でも、あんまり独占されすぎると、他のスタッフに冷やかされちゃうよ?」


「いい。お前が“俺のもの”だって、全員に見せつけたいくらいだから」


初兎はくすっと笑って、Ifの胸に手を当てる。


「じゃあ今夜、僕の首元に“まろちゃん専用”って書いてよ」


「……マジで書くぞ?」


「いいよ。僕もそう思ってるから」


廊下にふたりの影が寄り添い、もう誰にも割り込めないことを静かに証明していた。




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