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「ラウ、本当に食わないと倒れるぞ」
「でも···食欲ない」
またラウールはうちに来て、ぼんやりとソファに座っている。
スープとかおにぎりとかだけでも、と作ったものを無理矢理渡す。
「形はさ、ほらちょーっとあれだけど味は美味しいから!」
「ほんとに···まん丸···しかもおっきい······ぅん、けど美味しい···」
そう言いながら一個食べてくれてまた俺の家に泊まって、ちょっと良かったなって思っていた次の日のことだった。
ラウールが倒れた。
やっぱり睡眠不足とか食事が取れてなかったこととかが原因だったみたいで、点滴と1日だけ入院になった、と皆集められてひかるから説明があった。
「と、いうわけだから···ちょっとラウールには無理せずしっかりお医者さんに見てもらって、休んでもらおうと思う」
「ラウール···もっと早く病院に連れてったったら良かった···」
康二が泣きそうな声で呟いた。
その落ち込んだ肩を蓮がポンポンとあやすように叩く。
「いや、連れていこうとしたけどラウールが大丈夫って断ってたところもあったから。今思えば無理矢理にでもって思うけど···誰のせいでもない。····だから、な、さくま」
ふっかは俺のところにラウールが来ていたのを知っていたんだろう。
声には出さなかったけどお前のせいじゃない、と言ったのが俺には聞こえた。
仕事を終えて家でシャチとツナにご飯を用意してあげてからぼーっとした頭で届いていた段ボールでも開けようとカッターを用意する。
ネットで美味しそうなラーメンとか温めるだけで食べられるものとか高級お取り寄せみたいなのとか買ったんだった···ラウールと食べようと思って···。
俺、ラウールの何を見ていたんだろう?
結局何にも力になれなくて。
何にも出来なくて。
「役立たず」
なんとなく、カッターの刃を自分の腕に当ててる。切れ味のいいそれは少し力を入れるだけで肌を切り、まっすぐに赤い線になった。
少しだけ痛みは感じたけど、ほんの一瞬。
気付けばその赤い線が増えて、流れるほどじゃないけど血が滲んでいた。
自分の腕なのに、なんだか他人事みたいだった。
その時、インターホンが鳴って、ようやくはっとして慌ててカッターを置いてモニターを覗くとそこにはあべちゃんが映っていて、袖を戻して慌ててドアを開ける。
「あべちゃん···」
「ごめん、急に。ご飯、一緒に食べないかなって」
「あー、えっと、ほんとだ、俺ご飯食べてなかった!ついアニメ見てたら忘れんの!ありがとね」
「···さくま」
「おっ、うまそー!こんなにいっぱい?食べきれるかなぁー、やばいね、俺が好きそうなのばっかり!」
久しぶりに2人きりで会うっていうのに、なんだかまともに目を合わせられなくていつものテンション高い俺でいなくっちゃと喋り続ける。
「さくま、ねぇって」
「んー?ほら座って!何飲む?何でもあるよージュースもこの前おいしいの貰ったから良かったら飲もうよ、あったいのが良かったらねぇ···」
「さくま!」
「······いっ···!なに、あべちゃん。びっくりしちゃったじゃん···」
「···ここどうしたの」
さっき切ったところをたまたま掴まれて思わず痛い、と言いかける。
なんとか誤魔化せたと思ったのに白いTシャツに血が滲んでいて、あべちゃんがそこを捲った。
「······別に、なんでもない」
「切ったの?自分で···?」
目線の先には開けられた段ボールとカッターがあって、俺の嘘なんて嘘ってわかったあべちゃんは小さく息を吐いた。
怒られる···そう思ったけど、思いもかけず俺はあべちゃんに抱きしめられていた。
「さくま···ごめんね、もっと早く来たら良かった···ラウールのことはさくまのせいじゃない。なんで自分ばっかり責めて···本当にお前は良くやってたよ、ラウールは感謝してたよ」
「···かんしゃ?」
「そう。少し前に言われたんだ。阿部ちゃんごめんね、佐久間くん借りちゃってって。けど佐久間くんの家ってなんか落ち着くしご飯も食べられるし眠れるんだって···たぶん、俺たちが付き合ってるの気づいてたんだろうな」
「ラウ···」
「だからさくまが自分を責めることなんかない。ふっかも言ってたでしょ?もう、大丈夫だよ···全部さくまが背負わなくていいから」
「···あべちゃん···っ」
目の前が滲んで、俺はあべちゃんに抱きしめてもらったまま泣いていた。