春花と瑞の文通が続いている事は、絶対に周りには秘密だった。
転校してきて間もない瑞が、早速クラスの女子と手紙交換をしていると思われるとかなり面倒くさいからだ。
春花が教室に入る頃には、もう既に瑞が来ていた。春花は周りに瑞以外誰もいない事を確かめた後、鞄から封筒を出して瑞の所に持っていく。
「おはよ。これ、昨日の手紙の返事」
「ありがとう!また返事書いて渡すね」
こんな感じで、春花と瑞の手紙交換は何とか続いている。クラスの皆にばれないよう、こっそりと手紙を交換して読み合うのは至難の業だ。
瑞は自席で嬉しそうにニコニコしながら、春花からの手紙を読んでいる。そんな彼を見て、春花は段々と瑞に惹かれていくようになった。
時間が経ち、放課後。
春花が鞄を持って帰ろうとすると、瑞が駆け寄ってきた。
「何?」
「一緒に帰ろ?ほら、手紙も渡したいしさ」
「いいよ」
春花と瑞は並んで帰る。人気が減ってきた所で、瑞が鞄から封筒を出す。
「これ…今朝の返事」
「もう書いたの?ありがと」
春花は手紙を受け取ると、大切に鞄の中に入れて持ち帰った。
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