テラーノベル
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🎧短編「それ、バレてる」
ライブハウスの楽屋。
いつもより、人が多い。
対バンのメンバーやスタッフで、少し騒がしい。
琉夏「……あっつ」
パーカーを脱ぎながら、適当に椅子に座る。
冬星「そりゃな」
近くでギターをいじりながら返す。
その、いつも通りの光景。
でも。
少し離れたところで。
「ねえ、あの二人さ」
「やっぱそうだよね?」
小声のやり取り。
琉夏「……?」
なんとなく視線を向ける。
でも、すぐに逸らされる。
(な
んだよ)
特に気にせず、ペットボトルを開ける。
そのとき。
冬星「それ」
ぽつりと言う。
琉夏「なに」
冬星「俺の」
手元を見る。
確かに、冬星の水。
琉夏「あ、まじか」
でも、そのまま飲む。
琉夏「いいだろ別に」
冬星「別にいいけど」
短いやり取り。
それを見ていた、対バンのメンバー。
「え、今の見た?」
「見た見た」
明らかに、ざわつく。
でも。
当の本人たちは、気づかない。
数分後。
琉夏「……なんか食いもんある?」
テーブルを漁る。
適当に置いてある差し入れ。
冬星「それ甘い」
琉夏「じゃあいいや」
手を引っ込める。
その様子に。
「え、好み把握してる感じ?」
「やばくない?」
またざわつく。
さらに。
冬星「ほら」
別のやつを軽く投げる。
琉夏「お」
キャッチする。
琉夏「サンキュ」
その流れが、あまりにも自然すぎる。
「距離近くない?」
「いやあれ絶対そうでしょ」
リハ終わり。
ステージ袖。
琉夏「さっきのとこ」
冬星「うん」
琉夏「ちょい外しただろ」
冬星「お前も」
短い指摘。
でも。
他のメンバーが聞いて、少し固まる。
「え、今ので分かるの?」
「やば……」
ライブ後。
外。
二人並んで、適当に話す。
その少し離れたところで。
対バンのボーカルが、ニヤニヤしながら近づいてくる。
「ねえ」
琉夏「ん?」
「二人ってさ」
一瞬の間。
「付き合ってんの?」
空気が止まる。
琉夏「は?」
冬星「は?」
見事にハモる。
琉夏「いや、違うけど」
即答。
冬星「違う」
こちらも即答。
「え、ほんとに?」
疑いの目。
琉夏「ほんとに」
少しだけムッとする。
冬星「違うって」
淡々と返す。
少しだけ沈黙。
それから。
「……じゃあなに?」
その一言。
二人とも、少しだけ止まる。
琉夏「……別に」
曖昧に返す。
冬星「そのまま」
さらに曖昧。
「いや絶対なんかあるでしょ」
食い下がられる。
琉夏「ねえよ」
少しだけ強めに言う。
でも。
その反応が、逆に怪しい。
「ふーん……」
ニヤニヤしながら離れていく。
沈黙。
少しだけ気まずい。
琉夏「……なんなんだよ」
冬星「さあ」
でも。
さっきの質問が、少しだけ残る。
琉夏「……付き合ってるように見えんのかね」
ぽつりと呟く。
冬星は、少しだけ考えてから。
冬星「見えるんじゃない」
軽い返事。
琉夏「は?」
思わず振り向く。
冬星「知らないけど」
それだけ付け足す。
少しだけ沈黙。
琉夏「……意味わかんね」
でも。
完全に否定もしきれない。
並んで歩く。
いつもと同じ距離。
なのに。
さっきより、少しだけ意識する。
(……付き合ってる、ね)
頭の中で、引っかかる。
でも。
言葉にするほどじゃない。
冬星「行くぞ」
前を向いたまま言う。
琉夏「……おう」
そのまま、ついていく。
名前はない。
でも。
他人から見れば、それっぽく見える。
それが、少しだけ可笑しくて。
少しだけ、引っかかる。
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