テラーノベル
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kr死ネタ。自殺描写あります。
kr下肢欠損
モブレ
pnkr
ただただ救われない暗くてつらい話です。
kr視点
バタン、と玄関の閉まる音で我にかえった。
シーツ、取り替えないと、あと、シャワーも浴びて、それから臭いも換気しないと。
痛む身体でなんとか身体を起こして、ああ、車椅子はリビングに置きっぱなしだと気がついた。男に襲われた時はリビングにいたから。そのまま胸ぐらを掴まれてベッドに転がされたから。
車椅子に辿り着かないことには何もできないから、仕方ないなと、ベッドから降り床を這っていって、なんとか車椅子に座った。這ってきた床を見返すと、身体を引きずったせいで白い汚れがべったりと付いてしまっていて、ああ、と絶望した。
ぺいんとが帰るまであと、だいたい2、3時間くらい。それまでに全部片付けるのは無理だ。隠せない。前は床だったから、片付けるのも一箇所で済んでなんとかなったのに。
じゃあ、どうしようかな。出来るところまでやって、苦し紛れの言い訳でもする?それともぺいんとに、知らない人がうちに入ってきて襲われましたって、言っちゃう?…無理。いくらなんでも無理だ。これ以上迷惑かけられない。俺のせいでぺいんとの時間も、お金も奪ってるのに。既にひどく迷惑をかけてるのに、これ以上なんて。まさか、身体すら汚しちゃいましたなんて、とても言えない。
どうしよう。ああ、そうだ家出とか、出来ればいいのに。ぺいんとが外に出てる間にこっそり出てって、連絡も取らないで、最初からいなかったみたいに、離れてあげられたらきっと、それが1番良いのに、出来ない。脚が無いせいだ。俺の不注意で脚を無くして、今までずっとぺいんとに甘えてきたせいだ。
できないことを考えてる時間はない。出来ることをしないと。出来ることってなんだって、それは、もう自殺で精一杯かも。死んで、せめてこれから先迷惑かけないで済むようにすることしか、ぺいんとの視界から外れるしか、方法が思いつかない。
車椅子を動かして、ぺいんとのデスクから紙とカッター、ボールペンを借りた。今から死ぬ以上、ぺいんとにはもう会えないし、もう謝れないから、どうしても謝りたい大事なことを紙に書いてリビングのテーブルに置いて、カッターを持って浴室に行こうとして、棚にずっと飾っていた写真立てが目に入った。
「あ…、」
そうだ、消しておかないと。ペン立てからマジックを取って、みんなで撮った昔の写真から俺を消した。隣にあった写真からもそうしようとしたけど、こっちは2人で撮った写真だから、消してもおかしな写真になっちゃうな、と思った。カメラ目線で笑ってるぺいんとは格好良くて、なんだか無性にぺいんとに会いたくなった。俺は、今、逃げようとしてる、楽になろうとしてる。ごめんね、ごめんなさい。あんなにぺいんと達のこと苦しめたのに、お返しもお詫びもできない。俺が身体を汚したって知ったぺいんとの怒る顔見たくないんだよ、泣くのも見たくない。もう苦しめたくない。ごめん、この写真は自分勝手だけど貰っていこう。この一枚だけだから。この思い出だけ。許して、ぺいんと。
改めて写真とカッターを持って浴室へ。脱衣所で車椅子から降りて、浴槽にシャワーヘッドを突っ込んでコックを捻り水を出してから、椅子を使いよじ登って浴槽に入った。カッターを手首に当てて、少し考える。リストカットって確か、あんまり上手く死ねないんだっけ?死ぬ気なら縦に切った方がいいって、聞いたことがあるような。分かんないな、ああでも首なら間違いないかな。
カッターを首筋に当てて、ぐっと手前に引く。めちゃくちゃ痛いけど上手く切れたかは分からない。次第に肩から胸のあたりが真っ赤に染みてきたから、多分、大丈夫、かな。シャワーヘッドを掴んで首元に当てたら赤くなった水が流れていって、急激に意識が遠のいた。
痛い、痛くて仕方ない。首を切ってるんだから当たり前なん、だけど。
持ち出してきた写真を眺めて、自殺するくせに思い出に浸ろうとしてるの、俺、馬鹿だな…と思った。でも、だってこの写真のぺいんと格好良いんだよ、この写真撮った日は2人とも丸一日携帯の電源切って、結婚式場を借りて、衣装も借りて着ようって、用意して、いろいろ撮って、その中の一枚。俺本当は途中で疲れちゃったんだけど、ぺいんとが楽しそうにするから最後まで楽しくて、よく覚えてる。まだ自分の両足で歩けた頃の写真。
「ぺいんと、」
口に出したら、涙が止まらなくなってきた。馬鹿だな、俺この後に及んで、ぺいんとはもしかしたら俺の死を悲しんでくれるかもって期待してる。そんなはず無いのに、こんなに迷惑かけて、ぺいんとの邪魔になって、ぺいんとの大事なものをいくつも壊したんだから。今からだって、汚したシーツの片付けも、床の掃除も、机のメモを捨てるのも、俺が死んだことを通報するのも、ぺいんとに任せっきりになっちゃう。ああ、今日の晩御飯も用意してない。ごめんね、忘れてた。逃げ出すのに夢中になっちゃってた…。昨日の残りがあるから、あっためて食べてくれると良いんだけど、…これも書いておけばよかったな。ごめんね。一回どころか二回も汚れて、ぺいんとにバレたらどうしようってそればっかり考えてたら怖くなって、ろくに抵抗も出来なかった。ごめんなさい。ぺいんとに愛されたこと、とても幸せだった。なのに、裏切ってごめん。足を無くしてからずっと、ずっと、言い出せなかった。ぺいんとが一緒に住もうって言った手前、俺を追い出せないって知ってたのに、もう捨てていいよって言えなかった。
でも、俺がちゃんと死ねたら保険も降りるし、少しはお返しの代わりになるかな。自殺じゃ降りないんだっけ?でも、でも無いより良いでしょ?あわよくば俺を襲った犯人も見つからなくて、撮られた動画もバレないといいな。それから、どうにかして、俺のことを何もかも全部忘れてほしい。
_あとはせめて、やっと俺から解放されたこと、喜んで、くれたら。…笑ってくれたら。嬉しいな。
「…あいたい、なぁ」
コメント
5件
こんなに描写がわかりやすく書けるの凄すぎます。 天才ですね!!!!!!!
うわ……読み終わってしばらく言葉が出ませんでした。第2話、もうこの濃度で来るんだ、って感じです。 「写真から自分を消す」場面が特に胸に刺さりました。存在を消すつもりで写っている自分を消す、その冷静な手順のひとつひとつが、どれだけ長い間「お荷物」だと自分を思い込ませてきたかを物語っていて、読んでいて苦しかったです。それでも一枚だけ持っていく写真への執着が、本当は生きたかった証なんじゃないかと思えてなりません。 描写が克明だからこそ、最後の「あいたい、なぁ」が重くて。ちゃんと伝わっています、この言葉の届け先に。