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山の只中に残されたコユキ、スプラタ・マンユの面々は善悪に向けてちょっとした愚痴をぶちまけていた。


「オウコクノツルギ! カタマッテルノ、ツカレタヨ! シャクメイ、ヲ、モトムッ!!」


「そうですわ! 急にあんな凡百(ぼんびゃく)なニンゲン風情を招き入れるとは…… 説明求む!」


「くぬうぅ、止まっていた時間経過も然(さ)ることながら、あの様な下賤(げせん)を我等より優先するとは、説明求む!」


「ほんとよ、善悪、アタシだってびくびくしちゃったわよ! もう、何なの! 説明求む、よっ!」


善悪は思った。


――――うるせぇなぁ!


と。


うるさかった善悪だったが、持ち前の我慢強さを発揮して、はいはいごめんごめんと棒読みで言って話を終わりにした。

赤と紫に続けて取り出したキノコは意外にもまともそうな黄色のキノコと、極々一般的なヒラタケっぽい茶色のキノコだった。


「んで、これがコガネタケとヒラタケでござる」


「ふぅ、漸く(ようやく)まともそうな色目のやつが出てきたわね、安心したわ」


コユキもホッとして、この黄色いキノコとヒラタケだけを食べようと心に決めるのであった。

一方、善悪はハッとした表情になり、自ら取り出した二種類のキノコを舐め回すようにじっくりと観察している。


そんな幼馴染の不可解な行動にコユキが首を傾げていると、手にしていたキノコを投げ捨てながら善悪が言った。


「危なかったでござる、コガネタケだと思って取ってきたらオオワライタケでござった、こっちもヒラタケじゃなくてツキヨタケだったでござる……」


コユキは戦慄した。


キノコに詳しそうにしていた善悪であったが、本人が言う通り、檀家さんから又聞きしただけの素人である事が判明したのだから無理もない。

ここまでの、大丈夫でござる! が一気に信憑性(しんぴょうせい)を失った瞬間であった。

中・毒 の二文字に心中で恐怖を感じながらも、コユキは思うのであった。


――――しまった、善悪とさっきの猟師に食べさせて様子を見るべきだったか…… 今となってはもう仕方がないわね


こと食べる事に関しては、軽く狂ってしまっているコユキは、先ほど食べようと心に決めた毒キノコ二種類の代わりに、あろう事か赤と紫の怪しすぎる二種を食べる事を決めたのである。

どういった神経か容易に推し量る事は出来ないが、たぶん『毒を喰らわば皿まで』を字面(じづら)のまんまで捉えているのではなかろうか?


最早、恐る恐るではなく、当たり前の様に口にしたコユキは意外な美味さに声をあげる。


「うわぁ、ガチで美味しいじゃん、これ! んん~、こっちの紫のもイケるわね~♪ 善悪、もっと頂戴!」


「はいはい、た~んと召し上がれ~」


そんな感じでパクパクガツガツと食べ続け、気が付くと楽しいフェスティボォーは終わりを迎えるのであった。

結構希少なキノコ達の殆ど(ほとんど)はコユキのお腹に納まったが善悪やスプラタ・マンユのチビッ子達も充分に堪能したのであった。


筋肉質の超人の仲間、アシュ○マンのソフビを依り代にしているシヴァは、色が同じだからという理由で『ムラサキアブラシメジモドキ』には、頑な(かたくな)に口を付けなかった。

|因み《ちなみ》に、アヴァドンが依り代に選んだフィギュアは、オーラと同じ色が気に入ったらしく、魔戒の騎士の黄金のやつを選んで、ガロ~ガロ~と吠えたりしていた。


でっぷりとした自分の腹をポンポンと叩き、小気味良い音を響かせていたコユキが言った。


「ふぃ~、満腹満腹、一休みしたら出発ね、オルクス君まだ遠いの?」


言われたオルクスは目を閉じ集中を高めているようだったが、数秒後に驚いたように口に出した。


「アレ? ココダ、ツイテタ、ヨ!」


「え、そうなの? 着いてたみたいよ、善悪!」


バーナーを置いていた周囲に、慎重に水を撒いていた善悪が周りを見回しながら答えた。


「んん? そうは言っても周りに何も見えないでござるよ? オルクス君、誤差どれ位でござるか?」


オルクスは少し悩んだ素振をしてから答えた。


「センセンチ」

堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

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