テラーノベル
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餅千 @ 別 后 。
会議はそのまま進んでいった。らんはソファーに座りながら、さっき決まったことをまだ完全に理解できていなかった。数分前までただのリスナーだったはずなのに、今はなぜかメンバーとして会議に参加している。頭の中が追いつかないまま、話だけがどんどん進んでいった。
「次の曲の仮タイトルなんだけど」
「スタッフの○○さんに連絡してさ」
「ダンスの構成もう少し変える?」
話の内容は、どんどん具体的になっていく。曲の話、振付の話、スタッフの名前、ライブ構成、配信スケジュール。聞けば聞くほど情報量が多くて、らんの頭はパンクしそうだった。
(……むり)
(覚えられない)
らんは無心でポケットからスマホを取り出す。メモ帳アプリを開いて、とにかく言われたことを片っ端から書き始めた。
曲
ダンス
スタッフの名前
筋トレ
ダイエット
配信時間
歌練習
次々とメモが増えていく。
「筋トレは週3でやってる」
「あと食事も結構気をつけてる」
「ライブ前は体重管理もする」
らんはその言葉を聞きながら、必死に打ち込んでいく。
(多すぎる…)
頭の中で軽く絶望していた。
その時、話題が変わった。
「あと新メンバーだし」
「一応メンバーの性格とかも説明しとく?」
その言葉に、らんの手が止まる。
いるまがちらっとらんを見る。
「いや」
「こいつ古参だろ」
すちも笑う。
「確かに」
「多分俺らより知ってる」
らんは少しだけ頷いた。
「……それは大丈夫です」
実際、そこだけは自信があった。らんはかなり前からずっと見てきたリスナーだった。配信も動画もライブも、ほとんど追ってきた。誰がどんな性格で、どんな時にどういう反応をするのか、だいたい理解している。
「ほらな」
「説明いらねぇ」
いるまが笑う。
そんな会話が進む中で、らんはふと違和感を感じていた。
横。
やけに近い。
こさめだった。
いつの間にか、らんの肩に顔を埋めていた。
「……こさめ」
らんが小さく呼ぶ。
こさめは顔を上げないまま答えた。
「なに?」
「近い」
こさめは少しだけ顔を動かして、らんを見上げた。
「だってらんくんいるし」
そしてまた肩に顔を埋める。
ぎゅっと腕も抱きつかれる。
完全に距離がゼロだった。
会議はまだ続いている。
「で、このスタッフさんが」
「衣装担当なんだけど」
メンバーたちは普通に話している。
その横で、こさめはずっとらんにくっついていた。
「……こさめ」
らんが小さく言う。
「んー?」
「会議中」
こさめは少しだけ顔を上げる。
「うん」
「……見られてる」
こさめは周りをちらっと見る。
確かに、メンバーの何人かがニヤニヤしながら見ていた。
それでもこさめは気にした様子もなく、またぎゅっと抱きつく。
「別にいいじゃん」
そして小さく笑った。
「らんくん、こさめの旦那さんだし」
その言葉に、らんの耳まで赤くなった。
会議はそのまま進んでいた。らんはスマホのメモ帳を開き、さっきから必死に話の内容を書き込んでいる。曲、ダンス、スタッフの名前、筋トレ、食事管理、配信時間。やることが多すぎて、聞いているだけで頭がパンクしそうだった。それでも新メンバーになった以上、覚えないといけないと思い、無心で指を動かしてメモを取り続けていた。
その横で、こさめは相変わらずらんにくっついていた。肩に顔を埋めたり、腕を抱きしめたり、とにかく距離が近い。会議中なのに、まるで二人だけの空間みたいだった。らんは時々周りの視線が気になって、少しだけ身を縮めてしまう。
「……こさめ」
「んー?」
「近い」
こさめは顔を少し上げて、らんを見上げた。
「だってらんくんいるし」
そしてまた肩に顔を埋める。
らんは少しだけ困ったように息を吐いた。
その様子を見ていたメンバーたちは、いつの間にか会議の話題よりそっちを見ていた。
「てかさ」
「旦那っていうか、なぁ?」
誰かがそんなことを言い出す。すると他のメンバーも頷きながら話し始めた。
「確かに」
「なんか違う気する」
らんは顔を上げる。
「……え?」
いるまが腕を組んで、二人を見ていた。
そして、あっさり言った。
「らんは嫁だろ。」
一瞬、空気が止まった。
次の瞬間、メンバーたちが一斉に笑い出す。
「確かに!!」
「それだわ!!」
らんは一気に顔が赤くなる。
「ちょ、待って…!」
こさめはきょとんとしたあと、すぐに嬉しそうに笑った。
「そっか」
そしてらんの顔を覗き込む。
「らんくん」
らんはまだ真っ赤な顔で視線を逸らした。
「……なに」
こさめはふっと優しく笑った。
「今日からお嫁さん、」
そう言って、らんの顔にそっと近づく。
ちゅ、
軽く口付けを落とした。
ほんの一瞬のキスだった。
メンバーたちは一斉に固まる。
「え」
「今普通にした?」
「会議中なんだけど!?」
部屋が一気にざわつく。
らんは完全に動けなくなっていた。
顔は真っ赤、耳まで赤くなっている。
こさめはそんならんをぎゅっと抱きしめながら、満足そうに笑っていた。
「こさめの嫁だからね」
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