テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
これはオリカンヒュの小説です
いをり様の参加のやつのあまほしの設定です
自己満なので見なくても全然OKですからね!!
どうぞ!
「いいか、あまほし。魔法が使えないからって臆病になる必要はない。才能というのは、与えられたものをどう活かすか、だろ?」
広い庭園の真ん中で、父は俺の手にずっしりと重い金属の塊を乗せた。それが拳銃だと分かった時、俺は心臓が跳ねるのを感じた。
俺は名家、天宮家の跡取りだ。けれど、周りの同年代の子供たちのように、指先から火を出したり、氷を操ったりする魔法は一切使えなかった。どんなに練習しても、どんなに集中しても、俺は特別な能力は無かった。
どんな魔法もどんな魔術もどんな異能力もどんな加護も俺には無かった。
おまけに魔法、魔術、異能力、加護、全てに触れられない。
父も母も、俺を責めることはなかった。むしろ「気にするな」と優しい言葉をかけてくれた。でも、その優しさが俺には辛かった。
そんなある日、父が俺に銃の扱いを教え始めたのだ。
最初は正直嫌だった。こんなもの、人を傷つけるだけの道具だろ、って。それに、魔法という特別な力を持たない自分が、わざわざこんな危険なものを使わなきゃいけないなんて、惨めな気がした。
だが、父は俺が魔法を使えないことには一切触れなかった。ただ、銃の歴史を語り、その構造を丁寧に説明してくれた。
「これはな、人の知恵と技術の結晶だ。魔法と違って、誰にでも扱えるように作られている。お前は頭がいいから、仕組みを理解すればすぐにコツを掴めるはずだ」
父の言葉に、俺は少しずつ興味を持っていった。実際に銃を分解してみると、小さな部品が複雑に組み合わさっていて、その一つ一つに意味があることを知った。それはまるで、難解なパズルのようだった。
そして、初めて実弾を撃った日。耳をつんざくような轟音と、反動でずれる体。狙った的の真ん中を打ち抜いた時、俺の心に不思議な高揚感が生まれた。
「すごいだろ?お前の才能は、こういうところにあるんだ」
父は誇らしげな笑顔で俺の頭を撫でた。その時、俺の中で何かが変わった。魔法が使えないことを悲観するのではなく、自分が得意なことで、誰かの役に立ちたいと思うようになった。
「そうだ、この街に新しくできた噂のケーキ屋、知ってるか? 的を全部当てたら、連れて行ってやるるよ」
父はそう言って、新たな的を設置した。
俺は構える。狙いを定め、引き金を引く。一発、また一発。弾が的に吸い込まれるように命中していく。父が驚いた顔をしているのが見えた。
俺は知っている。父は、俺が勉強や銃の扱いに夢中になることで、魔法を使えないコンプレックスを忘れられるようにしてくれたんだ。そして俺も、その気持ちに応えたいと思った。
ケーキ屋さんの甘い匂いが俺の心を少しだけ満たしてくれる。魔法が使えないという現実は変わらない。けれど、この手で銃を握り、自分の力で何かを成し遂げる喜びを知った。
甘いものが好きなのは、この日から始まったのかもしれない。そして、この日から俺は、自分の才能を磨き、いつか誰かの盾になれるように強くなろうと誓ったのだ。