うい、我です。
11,戻らない意識はとーます視点のみです。
(以下略)
ーーとーます視点ーー
「大丈夫だってさ…。」
何度もその言葉をかえるくんに伝え続ける。
でも、本当はかえるくんに伝えるというより、自分に言い聞かせている言葉なのかもしれない。
病院に到着すると、ストレッチャーを慌ただしく救急車から運び出されて行く。
俺もその付き添いを促され、後を追っていった。
そのままかえるくんは、処置室へと入っていく。
俺は処置室前の待合スペースで、ただただ待っているしかなかった。
かえるくんと知り合ったのはいつだっただろう。
誰にでも優しいけど、実は隠れ狂人なかえるくん。
君に好意を寄せるようになったのはどのくらい前だったっけな…。
実は向こうからも好かれているのではないかと、そんな気もしていた。
けど、今の関係が崩れてしまったら…。
という恐怖があったから中々想いを伝える事ができていなかった。
けど、最近そんなかえるくんと恋人の関係になった。
「大丈夫だよね…。絶対…。」
今、こうしてかえるが目の前に居ない時間の中で、自分の不甲斐なさを改めて痛感している。
もっと早いうちに自分の想いを伝えられていたら、2人の時間も増えて、こんな出来事だって無かったのかもしれない。
どれだけ時間が経っただろう。
処置室の扉が開き、医師の方が出てきた。
【ご友人の方ですか?】
「そうです…!」
俺は立ち上がり、医師の言葉に耳を傾ける。
【頭部の打撲がひどいため、精密検査を行います。】
【しばらくは集中治療室で様子を見ることになります。】
その言葉に再び胸が締め付けられる。
「あの……彼の…意識は……」
【まだ、戻ってはいませんが、そのうち戻ることが予想できます。】
【脈は動いていますのでご安心ください。】
少しは安心できたとしても、俺の心から不安は消えない。
【かえる様のご家族の方に連絡は?】
俺はかえるくんのスマホを預かっている事を思い出しす。
が、パスワードが分からない…。
「ごめんなさい…。パスワードを知らなくて…。」
【分かりました。では、ご友人の連絡先だけでも教えていただけますか。】
【こちらからの連絡も試みますので。】
俺は自分のスマホを取り出し、かえるくんの共通の知人に連絡をした。
そして、その知人を通してかえるくんのご家族に連絡を取ってもらうようお願いしておいた。
そして俺は処置室前の椅子に戻り、再びかえるくんの事を待ち続けた。