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―あの事件から数ヶ月後…
よく晴れた日の花鳥卿。
あともう少しで、ここで、多くの星の子が楽しみにしている花火大会が行われる 。
俺も待ち遠しくて仕方がない。
一年に一度の、花火大会。
ずっと前から幼馴染のレイと
一緒に見たかった、花火。
そこで俺は幼馴染に想いを伝える。
そう、決めていた。
俺はレイを誘おうと、彼の元に ワープした。
晴れた草原に 透き通った、少し高めの彼の声が 聞こえる。
どうやら、誰かと話している
様子だ。
「僕、花火一緒に見ようって約束した人 がいるんだ」
「せっかく誘ってくれたのに
ごめんね」
―「約束した人」
俺はその言葉を聞いた瞬間、その場に座り込んでしまった。
…俺は?
…俺じゃないのかよ?
必死で涙を堪えていると、俺の視線に気づいたのかレイが駆け寄ってくる。
「テルー! 」
眩しいくらいの笑顔で俺の名前を呼ぶ彼の姿は、
もう見られなくなるのだろうか。
誰かの物になってしまうのだろうか。
「…テル?」
頬が熱い。
呼吸が早くなる。
俺はいつの間にか泣いていた。
「テル?ねぇ泣かないで…」
レイは俺をそっと抱き締めた。
ー光が、温かい。
俺はレイを抱き返した。
頬に彼の柔らかい髪が触れる。
…離したくない。
俺だけの、一等星。
…絶対に離すものか。
少しの沈黙を挟んで、レイが口を開く。
ー「ねぇテル」
「覚えてる?雀の頃に約束した事」
「….約束?」
「また一緒に花火見ようって」
「…」
「僕ね、テルと花火見る為に、全部
お誘い断ったんだよ」
「じゃあ…約束した人って…」
「俺の事…?」
レイは穏やかな笑顔を浮かべ、
頷いた。
その瞬間、安心したからか、体中の力が一気に抜けた。
その拍子に俺とレイは地面に
勢い良く倒れ込んでしまった。
頭を地面に強く打ち、痛がる俺を
クスクスと苦笑いで笑う幼馴染の
笑顔が、今日は一段と愛らしかった。
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夜の花鳥卿の空に、色とりどりの花火が打ち上がる。
目をキラキラさせながらそれを眺める俺の幼馴染。
伝えるなら
今しかない。
「なぁ…レイ」
「?」
「俺と…幼馴染以上の関係になってくれませんか」
「…」
「お前の事、俺に護らせて欲しい」
「俺の隣にいて欲しい」
「だから…」
「俺の恋人に、
なってくれませんか。 」
レイが顔を上げる。
それまで黙って俯いていたレイの
金黄色の目には、涙が光っていた。
「……こんな僕で良ければ」
はにかんで笑う俺の恋人。
そんな恋人が、狂わしい程
愛おしくてたまらない。
―俺はレイを強く抱き寄せると、
淡い桃色の唇にそっとキスをした。
最初は唇を重ねるだけだったキスは、
いつの間にか、舌と舌を絡ませるようになっていった。
長い接吻が終わり、少し物惜しげな表情をしている恋人。
そんな恋人と、俺はたった一つの約束を交わすことにした。
― 「…レイ、また来年も花火、
見に行こうな」
「…うん!」
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「幼馴染は一等星」〜END〜