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GW合宿 最終日 午後 帰りのバス蘭島の駐車場に、バスが到着した。
みんな少し日焼けして、でも満足げな顔で荷物を積み込んでいる。
翼はカゴを抱えたまま、バスの中で座席を物色していた。
(タク……疲れてるだろうし、勇人の横の方がいいかな……)
本当は、タクの隣がいい。
朝からずっと、そう思っていた。
でも——
朝の物干し場の記憶が、急にフラッシュバックした。
タクのユニフォームを、誰もいないのを確認して、ぎゅっと抱きしめたこと。
あの感触、あの匂い、あの罪悪感。
顔が一気に熱くなった。
耳まで真っ赤になるのが自分でもわかる。
(……なんであんなことしたんだろう……俺……)
直視できない。
絶対に無理。
翼はいそいそと、勇人の隣の席に滑り込んだ。
勇人が荷物を置く手を止めて、隣を見て目を丸くした。
「え? 翼?」
「……ここ、いい?」
翼は小さく頷いて、窓側に体を寄せた。
勇人は一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐに「まあいいけど」と笑って隣に座った。
後ろの席では、タクがすでに窓側に座っていた。
隣の席を空けて、翼が来るのを待っていた。
でも翼が勇人の横に座ったのを見て、わずかに眉を寄せた。
残念そうな、でもすぐに隠したような表情。
タクの隣には、当然のように井上がドカッと座り、
「タク〜! 俺と話そうぜ〜!」と大声で絡み始めた。
タクのこめかみが、ピクピクしているのが後ろからでもわかった。
バスが動き出す。
翼は窓に額をくっつけて、外の景色を眺めていた。
でも頭の中は朝の出来事でいっぱいだった。
(タクに……見られてたらどうしよう……
いや、見られてないよね……絶対……)
1時間ほど経った頃。
突然、胃がぐるぐると回り始めた。
バス酔いだ。
いつもより早い。
きっと朝の緊張と、席を間違えたせいだ。
「……うっ」
翼が小さくうめくと、勇人がすぐに気づいた。
「翼? 大丈夫か? 顔色悪いぞ。吐きそう?」
勇人が心配そうに翼の背中をさすってくれる。
翼は弱々しく頷いた。
「……座る席、間違えた……
1番前に乗るべきだった……」
勇人はチラチラと後ろの席を見た。
タクがこちらをじっと見ている。
勇人は小さく「ほら」と目で合図を送り、
「翼、前の席行こう。肩貸してやるから寝てろ」
翼は少し迷った。
「……でも」
「いいから」
勇人は半ば強引に翼の腕を引いて立ち上がらせた。
タクはすぐに立ち上がり、荷物を持って翼の腕を引っ張った
翼は顔を赤くしたまま、勇人に押されるようにしてタクと友に1番前の席へ
タクは静かに翼の肩を引き寄せ、
「俺に寄りかかれ」
低い、でも優しい声だった。
翼は抵抗できず、タクの肩に頭を預けた。
タクの体温が、すごく近くて、すごく安心する。
(……やっぱり、タクの隣がいい……)
バスが揺れるたびに、タクの大きな手が翼の背中をゆっくりさすってくれる。
翼は目を閉じて、朝の出来事を必死に頭から追い出そうとした。
でも、心臓はもう、朝よりずっと大きく鳴っていた。
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